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ドル急落し一時88円台、経済再生相の発言が調整売りを誘発

[東京 15日 ロイター] 正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べてドル安の89円前半。昼近くに、過度な円安は国民生活にマイナスの影響もある、との甘利経済再生相の発言が伝わったことをきっかけに急落。正午過ぎには高値から1円以上下落し一時88.62円をつけた。

1月15日、正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点に比べてドル安の89円前半。9日撮影(2013年 ロイター/Lee Jae Won)

甘利明経済再生担当相は15日、過度な円安は輸入物価にはねかえり、国民生活にマイナスの影響もあると述べた。また、同相は為替水準は輸出と国民生活への悪影響を最小にする最大公約数に収まることを期待するとした。

市場で同相の発言は、投機筋にとってドルの利食い売りの「グッド・エクスキューズ」(外銀)になったとされる一方、同発言はクロス円の急落も招いたことから、証拠金取引などで「ケガをした人もいるもよう」(同)だという。

ユーロは高値119.98円から一気に118.58円まで約1.5円急落した。

ただ、ドル/円、クロス円とも下値ではバーゲンハンティング的な買いが出ているもよう。

<アベノミクス>

東京市場が休場だった前日の外為市場で、ドルは一時89.67円まで上昇し2010年6月以来の高値をつけた。短期筋を中心とする「アベノミクス」に対する根強い期待が背景。円は対ユーロでも下落し、ユーロ/円は前日120.13円と2011年5月以来の高値を付けた。

円売りのきっかけの一つは13日の安倍晋三首相の発言。首相は、政府と日銀の政策連携について、文書自体をどう呼ぶかはいろんな議論があるが、大切なのは2%の物価目標をしっかりと書くことだと語った。さらに目標達成の時期について「長期では長い。中期で考えていかないと」と述べ、中期的に達成していく必要があるとの考えを示した。

投機筋の間では、2%のインフレは量的緩和など既存の措置の延長では達成できず、ドラスティックな措置が必要との見方が広がっている。そこで、「為替を(円安方向に)操作すれば、輸入物価が上昇して、手っ取り早く目標が達成できるとの考えがファンド勢の間で広がっている」とニューヨーク在勤のバークレイズ・キャピタル為替ストラテジストの逆井雄紀氏は言う。しかし、現実には「日本の場合、為替相場の国内物価へのパス・スルー効果はそう高くない」と同氏は指摘する。

いずれにせよ、投機筋の関心は次期日銀総裁が誰になり、その人物がどのような手法で物価目標を達成するのか、という点に集中しているという。

日経新聞によると、11日の景気討論会で次期日銀総裁の候補者に入っているとされる顔ぶれから、ドル/円水準への言及があった。日本経済研究センター理事長の岩田一政氏は、ファンダメンタルズからみて「円はまだ15%程度高い」とし、アジア開発銀行総裁の黒田東彦氏は「円はまだ過大評価されている。円安になって当然だ」と述べた。

ユーロは1.33ドル後半で底堅い。欧州中央銀行のドラギECB総裁が10日に、ユーロ圏経済の先行きに関してより楽観的な見方を示したことが、引き続きユーロの支援材料となっている。 ドラギ総裁は前月、利下げについて「幅広い議論」があったとしていたが、10日には一転して主要政策金利であるリファイナンス金利の据え置き決定が全会一致だったことを明らかにした。またユーロ圏にはすでに一部で安定化の兆しが出ているとし、年内に経済が回復するとの見方を示した。ただ、経済見通しに対するリスクは依然下向きとも述べた。

(ロイターニュース 森佳子)

*内容を追加します。

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