[東京 21日 ロイター] 正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点からほぼ変わらずの96円付近。国内投資家の円転玉(ドル売り/円買いフロー)はみられたものの、リスクオンの流れに加え、黒田東彦日銀総裁への期待感が円売りをサポートした。
<総裁就任会見に警戒感も>
正午までのドル/円は95.84─96.11円のレンジで取引された。利益確定売りや国内投資家の円転玉が相場を圧迫する場面があったものの、日経平均株価が堅調に推移するなど、投資家のリスク選好が回復する中で、円を買い戻す動きは限られた。黒田日銀総裁に対する期待感も相場をサポートした。
財務省が発表した2月貿易収支の赤字額が予想を下回ったが、相場の反応は薄かった。
2月貿易収支(原数値)は7775億円の赤字と、8カ月連続の赤字となった。輸出が中国の春節休暇の影響で2カ月ぶりに減少に転じたことに加え、円安による燃料価格の高止まりで輸入の高水準が響いた。ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値は8358億円程度の赤字だった。
日銀は午後6時から、黒田東彦総裁と岩田規久男・中曽宏両副総裁の就任会見を開催する。海外勢を中心に日銀新体制への期待が高まっているが、市場では「とりあえずは円売りで反応するのだろうが、(ドル/円の)セル・ザ・ファクトの可能性にも注意が必要」(大手邦銀)と警戒する声も出ていた。
「すでに次の一手は報道し尽くされており、何が出てもサプライズにはならない。残されたカードは少なく、期待先行で前のめりになっている海外勢の落胆を誘う可能性も否定できない」(同)という。
黒田総裁が市場で予想されている政策のどれか1つでも慎重な姿勢をみせれば、円が買い戻される可能性もある。
(ロイターニュース 志田義寧)
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