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アングル:中国都市部に「闇診療所」、戸籍制度が生む格差の連鎖

[北京 27日 ロイター] 北京の裏道にたたずむ小さな建物。裸電球が1つあるだけの粗末な小屋だが、出稼ぎ労働者のZhang Xuefangさん(29)にとっては大切な「病院」だ。

3月26日、中国の新指導部は出稼ぎ労働者が平等に医療を受けられるようにするとしているが、そこには中国独特の戸籍(戸口)制度が立ちはだかっている。写真は北京市内の地下鉄構内を歩く出稼ぎ労働者。2月撮影(2013年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

Zhangさんは北京市民として認められていないため、市内にある政府運営の病院で治療を受けることはできない。また地元と北京は遠く離れており、地元の医療補助金を受け取ることもできない。

このためZhangさんのような数百万人の出稼ぎ労働者は病気になれば、冒頭のような「闇の診療所」に頼らざるを得ないのだ。

この問題の背景には中国独特の戸籍(戸口)制度がある。1958年に制定されたこの制度では、都市部と農村部で戸籍の種類が異なるほか、農村から都市への戸籍の移転が困難となっている。また、都市戸籍を持たない人が都市に移住した場合、基本的な住民サービスが受けられないなどの弊害がある。

中国の新指導部は、都市化や消費主導型の経済成長に向けて戸口制度を改革すると明言。李克強首相も今月、出稼ぎ労働者が平等に医療を受けられるようにする措置を含め、都市部と農村部の格差を是正するための改革を進めると表明している。

ただ、改革についての詳細は明らかになっておらず、出稼ぎ労働者にとって「闇診療所」は今後も頼みの綱であり続けるだろう。

<医療制度の暗部>

「『闇診療所』は中国の医療制度の暗部だ」。北京の首都経済貿易大学のJiao Zhiyong教授はこう指摘する。「出稼ぎ労働者が『闇の診療所』の常連になっているのは、医療制度に欠陥があるからだと言える」。

北京市政府のデータによれば、同政府は2010年以降、毎年約1000カ所もの「闇診療所」を閉鎖してきた。しかしその多くは、閉鎖数日後に元の場所か少し離れたところで営業を再開している。

こうした診療所は無認可で営業を行っており、国内に何カ所あるのか詳しい数字は明らかになっていない。

また、治療を受けた患者が死亡したとの報道もある。1月に複数の新聞が報じたところによれば、福建省からの出稼ぎ労働者が風邪のため北京の診療所で点滴を受けたところ、その数時間後に心停止で死亡したという。

「こんな診療所には行きたくないけれど、大きな病院にはお金がかかる」。冒頭のZhangさんは、政府が運営する北京の病院で普通の風邪で診察を受けたことがあるが、費用は月収の4分の1に当たる800元(約1万2000円)だった。

中国は医療制度改革関連の支出を増やしており、昨年は前年比12%増となる7199億元だった。それでも、人事社会保障省の昨年の統計によれば、出稼ぎ労働者のうち健康保険に加入していたのはわずか2割にとどまっている。

また保険による払い戻しは、一旦支払いを済ませた後になされる上、手続きが複雑化しているため、保険に加入していても大きな病気にかかれば破産の危機に陥るというケースもあるという。

(原文執筆:Hui Li、Ben Blanchard、翻訳:梅川崇、編集:宮井伸明)

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