[東京 5日 ロイター] 黒田日銀は、今回の「異次元緩和」で国庫短期証券については買い取り目標を設定せず、金融政策から外した。より長めの金利へ働きかける狙いからだ。
その裏で短期市場では戸惑いの声もくすぶる。公開市場操作(オペ)としての短国買い取りそのものは残るが、実際にいくら買い取られるのかはっきりしない居どころの悪さに、しばらく参加者の目線は定まりそうにない。
「日銀の買い取りが減るのでは」──黒田日銀による緩和強化を好感する為替相場や株、債券市場の反応とは裏腹に短期市場では、こんな懸念が急浮上した。実際、流通市場で国庫短期証券に売りが出て、一時0.040%を割り込んで推移していた2カ月物利回りは0.090%に跳ね上がったという。
黒田日銀の緩和強化を好感する声は多い。月額ベースで発行の7割を占める買い取りに乗り出したことには、むしろ驚きの声も広がった。しかし、同時により長い金利への働きかけるのに国庫短期証券がその対象から外されたことは、参加者にとっては今後の「道標」を失うことを意味する。
インターバンクのある関係者は「短国は、これまでの月額6兆円の買い取りが増えることはあっても減ることは想定されていなかった。『前倒しで月額10兆円買うのでは』と前のめり気味な見方もあっただけに、今回から政策そのものから外れ、今後、どの程度買い取られるかは不透明になった」と話す。
日銀による短国の買い入れ額が減少するかどうかは、なおはっきりしない。日銀は、今回の金融緩和で銀行券と当座預金からなるマネタリーベースについて、2014年末に270兆円にする目標を打ち出した。これを達成するため長期国債の残高は同年末に190兆円にすると定めた。
日銀のバランスシートで生じるマネタリーベースと長期国債の差額については、主に短国と共通担保オペのいずれかで穴埋めすることになるが、減少するとの予想とは反対に「マネタリーベースが増えれば共通担保オペが入れづらくなり、かえって短国オペの量そのものは今よりやや増えるのではないか」(短資会社)との見方もある。
(ロイターニュース 山口貴也 編集:伊賀大記)
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