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アングル:オペ期間延長見送り、異次元緩和のなし崩し的修正を警戒か

6月11日、日銀が金融政策決定会合で、期待が高まっていた資金供給オペレーションの期間延長を見送った背景には異次元緩和のなし崩し的な修正につながりかねないとの警戒もあったとみられる。写真は昨年11月、都内で撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 11日 ロイター] - 日銀が11日の金融政策決定会合で、期待が高まっていた資金供給オペレーションの期間延長を見送った背景には異次元緩和のなし崩し的な修正につながりかねないとの警戒もあったとみられる。

今後、株式市場や米金利の動向などによっては、債券市場が再び不安定化する可能性は否定できない。温存されたオペ延長というカードをめぐる日銀と市場の綱引きが続きそうだ。

現行1年以内となっている固定金利(0.1%)方式の資金供給オペは、4月4日の「量的・質的金融緩和」の導入以来、不安定化している債券市場の安定に一定の効果を発揮してきた。日銀では、この間、市場参加者との意見交換会などを通じ、国債買い入れの頻度や期間別の配分額見直しを行うなど債券市場の安定に努めてきたが、固定金利オペの期間延長は、金利形成の起点となる中短期ゾーンのボラティリティ(変動率)を抑制し、長期金利の上昇回避に効果的として、一部から要望が出るなど期待が高まっていた。

5月下旬以降の株価急落の一因に長期金利上昇があるとの指摘も出る中、市場関係者の意見を踏まえ、日銀も固定金利オペの期間延長の是非を検討した。黒田東彦総裁は会見で、今会合において導入のメリットとデメリットを議論したことを明らかにした上で、「現時点では必要ないとの結論に達した」と説明。当面は国債買い入れの弾力的な運用で対応していく考えを表明した。

総裁は固定金利オペの延長を見送った具体的な理由を語らなかったが、金融機関に債券購入を促すことが他資産への運用シフトも狙いとする異次元緩和の政策意図に反することや、需要が一部の金融機関に限られていることなどが障害になった可能性がある。市場で発行される国債の7割程度を吸い上げる「量的・質的金融緩和」に対する債券市場の意見や要望は多様だ。オペ延長は追加金融緩和ではなく、債券市場を安定化させる措置との位置づけだが、すべての要請を受け入れていては異次元緩和の狙いがあいまいになり、なし崩し的な修正や総裁が就任来否定してきた「戦力の逐次投入」につながりかねないとの警戒もあったとみられる。

一方、「日銀に残された弾は多くない」(政府筋)ともいえ、オペ延長の見送りは市場安定化に貴重なカードを温存する格好にもなった。総裁もオペ延長について「将来、必要になれば検討する」と含みを残している。

消費者物価指数(CPI)上昇率のプラス圏浮上が視野に入る中、今後の株式市場や、米連邦準備理事会(FRB)の出口議論に伴う米金利の動向など、債券市場の先行き波乱要因は多い。市場では「国債買い入れのさらなる弾力化にも限界がある」(国内金融機関)との指摘も多く聞かれる。金融緩和効果を減殺しかねない過度な長期金利上昇の抑制に向け、「逐次投入」を否定する黒田日銀の市場との対話力が問われる展開が続く。

伊藤純夫; 編集 石田仁志

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