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FOMC後に不透明感後退、懸念は新興国からの資金流出

[東京 20日 ロイター] - 今年最大級の注目を集めた米連邦公開市場委員会(FOMC)の終了直後にしては、マーケットは静かだ。

6月20日、今年最大級の注目を集めた米連邦公開市場委員会(FOMC)の終了直後にしては、マーケットは静かだ。都内で5月撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が量的緩和第三弾(QE3)の年内縮小に言及したのは、米経済への自信が背景であり、縮小時期を示したことで不透明感もある程度払しょくされたとのポジティブな受け止めが多い。ただ、「金融相場」の終えんを見据え、新興国からの資金流出が加速し、リスクオフが進むおそれもある。金利上昇局面に一歩近づいたことになるため、日本の財政再建に向けた「猶予期間」が乏しくなってきたことにも警戒が必要だ。

<米国は心配なし>

FOMCの声明文は、米経済改善への自信がうかがえる内容だった。「経済と労働市場の見通しに対する下方リスクは秋以降、後退したと考える。インフレは中期的にFOMCの目標である2%かそれを下回る水準で推移する公算が大きい」と指摘。バーナンキ議長は会見で「今後発表される経済指標がこの見通しとおおむね一致すれば、毎月の資産買い入れ規模を年内に縮小させることが適切である」とQE3縮小に関する言及だけでなく、具体的な時期も明示した。

流動性縮小は警戒されるものの、当局が米経済への自信を深めていることで、日米の市場で悲観論はそれほど広がっていない。米債市場はさすがに敏感に反応し、10年米国債利回りは2.3%台まで上昇したが、米ダウ.DJIは206ドル安にとどまり、1万5100ドル台を維持。

東京市場に入っても前場の日経平均.N225は1万3000円台をキープしている。円債市場でも10年最長期国債利回りは一時、前日比変わらずの水準に戻す局面もあった。「米株が意外に下げなかったことで、リスクオフが進まなかった」(大手証券の株式トレーダー)という。

市場では、不透明感の後退を好感する声もある。米経済が回復する以上、QE3の縮小は避けられないため、具体的な時期などを明示してくれた方が、市場にとってはポジティブだという。米株が下がらずリスクオフが進まなければ、米金利上昇によるドル高・円安は日本株のプラス要因となる。「年内の縮小は概ね市場コンセンサス通りであり、縮小時期が明確化されたことで、不透明感が払しょくされるのではないか。膨らんだ緩和マネーの巻き返しは警戒されるが、マーケットにはある程度織り込み済みの感もあり、今後は米経済指標をしっかりと分析していく段階に入る」と立花証券・顧問の平野憲一氏は話す。

<懸念は新興国>

懸念は新興国からの資金流出加速だ。米国の超金融緩和を背景に高い利回りを求め、新興国の株式や通貨に流入していた資金は、5月22日にバーナンキ議長が議会証言でQE3縮小の可能性に言及したことで、巻き戻されたが、今回、QE3縮小が明確に打ち出され、グローバル投資家の資金回収が加速するのではないかとの懸念が強まっている。

新興国の経済状況は中国の景気減速もあって芳しくない。国際通貨基金(IMF)は4月、アジア新興国の2013年成長率予想を0.2%ポイント引き下げプラス5.3%とした。1997─98年当時と異なり、多くの新興国が十分な外貨準備を保有し、対外不均衡の状況も改善されているほか、通貨スワップなどの安全網も整備されているため、通貨危機に陥るおそれは小さくなっているが、急激な株安・通貨安が新興国の経済に大きなダメージを与えるおそれもある。

FOMCを受けた新興国の通貨市場では、インドルピーが過去最安値を付けたほか、ブラジルレアルが2%近く下落し、約4年ぶりの安値で引けた。株式市場でも、ボベスパ指数.BVSPや上海総合指数.SSECや香港ハンセン指数.HSIなどは日米株を上回る下落率となっている。

シティグループ証券チーフエコノミスト、村嶋帰一氏は「米景気の下振れリスクは後退しており、米株市場はしばらくすれば落ち着くだろう。米金利が上昇すればドル高・円安にもなりやすく日本株にもプラスだ。ただ、投資家が流動性相場の終えんと受け止め、新興国からの資金巻き戻しが加速すれば、リスクオフムードが強まる、そうなれば一本調子の円安は難しく、日本株の上値も押さえる」との見方を示している。

<短くなった日本の「猶予期間」>

金利上昇にも一段の警戒が必要だ。FRBが超低金利政策を継続するめどとしている失業率6.5%以下を達成する時期は、今回の見通しでは、必ずしも2015年に入ってからではなく、14年にも達成される可能性があることが示された。米国が超金融緩和政策の「出口」を視野に入れたことで、米長期金利は上昇トレンドに入る可能性が強まった。米長期金利の上昇は、間接的に日本の国債利回りを押し上げる要因となる。

米国と同様、日本の景気も緩やかながら回復してきているが、そのペースはかなり緩慢だ。米国要因で長期金利が急上昇すれば、受け止めるだけの体力は乏しい。日本は巨額の国債を抱えており、景気回復のペースを上回る金利上昇は国、地方、民間ともに大きな悪影響をもたらす。

日本の国債利払い費は、ここ数年の金利低下にもかかわらず増加してきている。国債発行残高の増加ペースが、金利低下効果よりも上回っているためだ。「米国の利上げ時期まで1年以上あると思っていた猶予期間が、今回のFOMCで短くなったことがわかった。世界的に金利が上昇局面に入れば、日本の財政再建はさらに難しくなる。参院選を控え、議論が止まってしまっているが、相当スピードを上げる必要がある」とニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏は警告している。

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