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FRB議長と市場の危険な駆け引き、勝つのはどちらか

[ワシントン 20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が打ち出した大規模な量的緩和策の縮小計画は世界の金融市場を驚かせ、大規模な資金の巻き戻しを引き起こした。それは同時に、議長と国際金融市場との危険な駆け引きの始まりともなった。

6月20日、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が打ち出した大規模な量的緩和策の縮小計画は世界の金融市場を驚かせ、大規模な資金の巻き戻しを引き起こした。写真はニューヨーク証券取引所で今月19日撮影(2013年 ロイター/Brendan McDermid)

議長は19日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、月額850億ドルの資産買い入れの縮小を年内に開始する計画を詳細に示した。同時に議長は、FRBは景気支援策を即座に終了する動きは想定しておらず、利上げ開始が近いという意味ではないと強調した。

ただ、世界の金融市場では、米国の金利は今後おそらく低下せず、上昇するのみとの見方に絞られた。市場の反応は明確で、特に株式や社債などリスク証券を中心に、世界であらゆる資産が大量に売られた。なかでも新興国市場への打撃は顕著だった。

FRBは、3兆4000億ドルに膨らんだ自らのバランスシートを維持するだけで米経済に刺激をもたらすと考えている。ただ、市場参加者の目には、米国債の唯一で最大の買い手であるFRB資金の縮小は、市場に出回るマネーの減少を意味すると映る。

BNPパリバのチーフ北米エコノミストで元FRBスタッフのジュリア・コロナド氏は「FRBは、緩和縮小が引き締めではないという単純化されたモデルに従って考えたいのだろうが、もちろんそれは引き締めである」と指摘。「FRBが伝えようとしているのは、低金利を背景とする量的緩和の調整シグナルを減らす方向に傾いているという点。投資家はFRBに先んじて動き、押し目買いではなく戻り売りで利益を確定している」と述べ、「パラダイムシフトが起きている」と指摘した。

では、市場がどこまで下落すれば、FRBに方針見直しを迫れるほどの悪影響を米国の景気回復に与えるのだろうか。バーナンキ議長は詳細計画を示した際、今回の方針見直しには高いハードルを設定したといえる。

今回の世界的な売り局面では、安全逃避先とされる国債も対象外ではなかった。米指標10年債の利回りは2.47%に上昇(価格は下落)し、2011年8月以来の高水準をつけ、5月初めの水準から0.75%以上上昇した。

住宅ローン金利の指標となる利回りの急上昇を受け、エコノミストからはこのところの米住宅市場の改善が中断する可能性を懸念する声も聞かれる。30年物住宅ローン金利が4.2%に近づくなか、住宅ローン申請指数はすでに低下。20日の株式市場では、住宅関連株が売り込まれた。FRBのメッセージが持つ問題の1つは、より大胆な金融政策ツールを抜本的に採用できるという政策当局者の自信過剰に関する点かもしれない。

FRBは、借り入れコストを低く抑えるため、少なくとも、現在7.6%の失業率が6.5%に低下するまで、インフレが引き続き抑制されている限り、フェデラルファンド(FF)金利をゼロ付近で据え置くと約束している。

エコノミストは、このようなガイダンスは、長期金利が短期金利の動きへの期待を具体化する場合に中銀が採用できる最も強力なツールの1つと考える。ただ、そのメッセージは浸透しているようには見えない。

<成長のシグナルはまちまち>

20日発表の5月の中古住宅販売データが示すように、今のところ、住宅市場の回復傾向に変わりはない。全米リアルター協会(NAR)が20日発表した5月の中古住宅販売戸数(季節調整済み)は前月比4.2%増の年率518万戸となり、住宅購入者向け優遇税制措置の失効時期に当たる2009年11月以来およそ3年半ぶりの高水準となった。価格中央値は前年比15.4%上昇した。

住宅市場の改善は消費者信頼感の改善を後押しし、消費を下支えしているが、アナリストは、にわかに活況となった市場に怯えて買い手が逃げる可能性を指摘する。

さらに、製造業は綻びの兆しを見せており、政府支出の見通しは依然厳しく、景気の先行きはいまだ多くの雲に覆われている。

海外のリスクも無視できない。HSBCが20日発表した6月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI、季節調整済み)速報値は9カ月ぶり低水準となり、第2・四半期に経済成長が減速する兆しが鮮明になった。同日発表された欧州の統計ではユーロ圏のリセッション(景気後退)が続いていることが示された。スペインとフランスの国債入札では落札利回りが急上昇。バーナンキ議長によるFRBの緩和縮小計画の表明が要因だった。

FRBは、米経済に関する自らの予測が実現する場合にのみ計画を実行すると述べた。ただ、これは成功のためのハードルを下げているように見える。

FRB独自の予測では、当面は失業率は高すぎる水準にとどまり、インフレ率は低すぎる水準にとどまる見通しだが、ならばなぜ、当局者は市場の足をすくうことに熱心なのだろうか。ロバート・W・ベアードのチーフ投資ストラテジスト、ブルース・ビットルス氏は「市場で見逃されているのは、経済が今年下半期に緩和策に前向きに反応するという、まず考えられない想定だ。私はそれに大きな関心を持っている」と述べた。

18─19日のFOMCが始まる前、アナリストはバーナンキ議長が5月下旬に出した曖昧なシグナルによって市場のボラティリティが高まったと不満を漏らしていた。しかし、6月19日に議長が緩和縮小計画を明確にしたことで大量売りに拍車が掛かり、真の恐怖は経済の準備が整う前に緩和策が打ち切られることにあることが示された。

議長は、来年初めの任期切れをもって退任する可能性がある。議長としての仕事を締めくくり、後任に円滑に引き継ぐため、前もって資産買い入れの出口計画を示したかったのかもしれない。

<今はタカ派的部分を前面に>

バーナンキ議長が明らかなタカ派ということではない。結局のところ、議長は緩和縮小のスケジュールを具体的に示しながらも、FRBの異例の景気刺激策からの出口戦略における重要なシフトを表明した。それは市場の懸念の緩和につながるものだった。

議長は19日の会見で「かなりの多数が金融政策の正常化過程で住宅ローン担保証券(MBS)を売却しないと現在は想定している」と発言。また、「政策金利の引き上げに先立つ経済条件は基準であって、引き上げの引き金ではない」として、失業率が6.5%に低下した場合でも、政策金利が自動的に引き上げられるわけではなく、また基準が引き下げられる可能性もあると言明。FRBが政策金利引き上げの判断に時間をかける姿勢を強調した。

ただ、このような見通しは短期的視点の市場にとっては将来に深入りしすぎた内容であるようだ。

バンク・オブ・ウエストのチーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「市場は確かに、金利がおそらく上昇に向かうと考えている」と指摘。「FRBは緩和縮小について、金融引き締めというよりも、アクセルの減速と捉えている。多くの投資家は先手を打つことを望んでいる」と述べた。

(Pedro Nicolaci da Costa記者;翻訳 高橋恵梨子;編集 宮崎亜巳)

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