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焦点:債務処理にあえぐユーロ圏、90年代の日本と酷似

[ロンドン 11日 ロイター] - 金融危機が残した債務の処理に依然あえいでいるユーロ圏は、資産バブルの崩壊後、銀行のバランスシートに直結した景気後退に苦しんだ1990年代の日本と日増しに似てきている。

7月11日、金融危機が残した債務の処理に依然あえいでいるユーロ圏は、資産バブルの崩壊後、銀行のバランスシートに直結した景気後退に苦しんだ1990年代の日本と日増しに似てきている。写真は2010年9月、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

類似点はいくつもある。なかなか効果の出ない金融政策、貸し出しをしない、あるいはできない弱い銀行、低成長から抜け出せない景気、それを襲うデフレの恐怖など、馴染みがあることばかりだ。

日本は長い間低迷から脱出できずにいたため、他国からは哀れみの目で見られていた。日銀は政策に大胆さを欠くと批判されていた。

しかしその局面は、日銀の黒田東彦総裁が打ち出した異次元緩和で一変した。その一方で欧州中央銀行(ECB)はバランスシートを縮小し、「フォワード・ガイダンス」で金利を抑えつけることに満足している。

ユーロ圏の過去最高水準にある失業率に反映されている大きなGDP(国内総生産)ギャップや、政府・民間ともに返済を迫られている巨額の債務を考慮すると、インフレ率がECBの目標とする「2%を若干下回る水準」を許容できない程に下回る可能性があると指摘するエコノミストもいる。

JPモルガンは最新のリポートで、税金を除くコアインフレ率が5月の前年比1.1%から1%未満に低下し、少なくとも2015年末までその水準にとどまると予想している。

ユーロ圏周辺国では物価への下方圧力がとりわけ強くなっている。競争力を再び強化するために、通貨安を誘導するという選択肢は既にないため、賃金や他のコストを抑制するしかない。ギリシャはすでに過去45年間で初めてデフレに見舞われ、これが債務返済という重しをさらに厳しいものにしている。JPモルガンによれば、他の国も同じ道のりをたどることになるかもしれない。

ECB当局者は物価安定への脅威は下方にあると認めており、必要ならば政策を緩和する用意があると述べている。エコノミストの一部は、追加緩和はあるかどうかが問題ではなく、いつ実行されるかが重要だと指摘する。

モルガン・スタンレー(ロンドン)のヨアヒム・ フェルズ氏は「1990年代の日本からの教訓は、欧州が銀行のバランスシートから負債を一掃するのに時間がかかればかかるほど、それだけデフレが迫ってくるということだ」と述べた。

<銀行の処理>

欧州の銀行はECBによる低金利政策を欧州南部の企業や家計に浸透させていない。これがユーロ圏の分裂につながっている。

国際通貨基金(IMF)は、事態が好転するには銀行の損失を正しく把握し、存続可能だが弱い銀行は資本を強化し、存続可能でない銀行は再編か閉鎖する必要があると述べている。

日本は10年近くかけて不動産価格の崩壊により実質的に破たんしている「ゾンビ」銀行の処理を行った。ユーロ圏では、銀行が破綻した場合の損失負担を投資家や債権者に求める「ベイルイン」の実施は、2019年まで待たなくてはいけないかもしれない。アスムセンECB専務理事はこれでは遅過ぎると述べている。

さらには、「欧州銀行同盟」の第2の柱となる単一の銀行破たん処理機関は当初、破たん処理に使う資金が用意されていない状態で始動することになっている。

人口問題においても欧州は日本と似てきている。日本の労働力人口は全人口に対する割合において1990年にピークを迎え、現在は国連の統計によると、人口の32%が60歳以上と、どの国よりも高い比率となっている。

欧州連合(EU)に加盟する国の多くも、ポルトガル、アイルランド、ラトビアなどが急速な高齢化への対応を迫られている。

スタンダード・ライフ(英国エディンバラ)のエコノミスト、アンドリュー・ミリガン氏は、「西欧諸国は日本が味わってきたような厳しさには直面していないものの、イタリアのような国は他の国よりも日本と同じ道をたどる可能性が高い」と述べた。

<アメとムチ>

ECBは、総需要に対して十分な金融支援を与えつつも、政府に改革を促すような状態に債券市場を保つという巧みな政策運営を迫られている。それ故、ドラギECB総裁は金利を長期間にわたり現行水準もしくはそれを下回る水準に維持すると述べている。

ミリガン氏は「ECBがフォワード・ガイダンスを導入したことには有意義な部分もある。米国の政策に世界の全てが追随するという見方を打ち消し、ユーロの若干の下落に結び付いたからだ。しかしECBが困難に陥った個別の国を支えられるのかということについては疑問が残る」と語った。

無論、ECBだけでなく、どの中銀にもできることに限界はある。緩和的な政策は時間の経過とともに名目GDPを押し上げ、債務利払いの負担を軽くできる。ただ、中銀は人々の寿命を延ばしたり、生産性を上げることはできない。

人口が減少する中、さらなる成長と生産性を絞り出す役目は、中銀だけでなく政府にも課されている。

日本の安倍晋三首相も今月の参議院選挙終了後は、約束通り構造改革という3本目の矢を放たなくてはならない。

ブリューゲル研究所(ブリュッセル)のアンドレ・サピール氏は「アベノミクスが成功した場合、それが欧州にとって意味することは、経済を再活性化するにはマクロ経済上でも構造上でも大胆な政策が必要で、その2つの優先順位を正しく判断する必要があるということだ」と述べた。

(Alan Wheatley記者,Global Economics Correspondent;翻訳 石黒里絵)

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