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焦点:米国債の相場急落、有力ファンドマネジャーは予感も損失回避失敗

[16日 ロイター] - 米国債市場で起きたこの数カ月の相場急落は、予めわかっていたという点では金融市場の歴史上でも屈指の事例だ。

7月16日、米国債市場で起きたこの数カ月の相場急落は、予めわかっていたという点では金融市場の歴史上でも屈指の事例だ。2011年9月撮影(2013年 ロイター/Lee Jae-Won)

何人ものファンドマネジャーや投資ストラテジストが、米連邦準備理事会(FRB)は米経済指標が堅調なままなら、早期に資産買い入れ(量的緩和)を縮小しそうだ警告を発していた。パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の共同最高投資責任者(CIO)で、「債券の王様」として知られるビル・グロース氏は5月10日に、「30年に及ぶ恒常的な債券の強気相場」が4月末に終幕を迎えた可能性が大きいと表明。複数の有力市場関係者はニューヨーク連銀に対して、債券が急落した場合に個人投資家が受ける打撃に対する懸念を伝えた。

それでもなお、現実に10年間で最も急速な利回り上昇(相場下落)が起きた際には、これらのマネジャーの多くが不意を突かれ、大幅な損失を被るはめになった。同時に債券市場からの着実なリターンを頼りにしていたくさんの機関投資家や個人投資家も痛手を受けた。

ロイターが大手債券ファンドマネージャーの一部に取材したところでは、FRBの姿勢を読み誤ったことや、想定外だった債券売りのスピード、またあるケースでは何年も相場上昇が続いて自信過剰に陥っていたことが、すさまじいしっぺ返しをもたらし、米10年国債利回りは5月初めの1.63%から7月8日には2.75%まで跳ね上がった。

マネジャーの中には、長らく続いてきた相場上昇の最終局面までリターンを搾り取ろうとして同じ投資を引っ張りすぎた向きがあった。一方で値下がりに備えてヘッジを組んだものの、下げ幅が尋常でなかったためにヘッジが機能しなかったとの声も聞かれた。

債券投資会社ルーミス・セイレスの副会長で、「債券のウォーレン・バフェット」と呼ばれることもあるダン・フュス氏は、事前に難局が訪れると警報を出していたが、そうであるのになお5月初めに水準が「割安」だとして債券に買いを入れた。

フュス氏が買ったタイミングはこれ以上ないほど最悪で、すぐ後の5月22日にバーナンキFRB議長が資産買い入れ縮小に言及して、債券市場の崩壊が始まった。

同氏はこの点について「長期国債を買ったのは戦術的な行動だった。まったく良い考えではなかったと判明している。今にして思えば、次の売り局面まで待つべきだったが、それほど大きな障害物がやってくるとはわからなかった」と述べて、バーナンキ議長の発言に意表を突かれたと説明している。

もっとも同氏のルーミス・セイレス・ボンド・ファンドLSBDX.O(230億ドル)は年初来のリターンが依然としてプラス1.73%で、破滅的な事態というには程遠い。対照的にバークレイズUSガバメント/クレジット・ボンド・インデックスはマイナス2.55%、米投資適格債のベンチマークであるバークレイズUSアグリゲート・ボンド・インデックスはマイナス2.45%だ。

<過小評価>

他のファンドはもっと成績が悪い。トリムタブス・インベストメント・リサーチによると、6月の債券ファンドの平均リターンはマイナス3.3%。5月に始まった事態の悪化は、バーナンキ議長が6月19日に量的緩和縮小についてよりはっきりと道筋を示したことで一段とひどくなった。

ブラジルのBTGパクチュアルが運営する48億ドルのファンドは、昨年は最高のパフォーマンスを残したヘッジファンドの1つだったが、今年6月のリターンはマイナス2.18%と1年余りぶりに月間でマイナスとなった。同ファンドは5月半ばに債券エクスポージャーを縮小したのだが、「それでも相場下落のスピードと規模を過小評価していた」とロイターが入手した投資家向けのノートに記されていた。

6月に損失を出したヘッジファンドの運用担当者は、値下がりの急速さが想定外だったことを原因に挙げている。相場が下がる前のクレジット市場ではボラティリティが落ち着いていて、そのために一部の担当者は自信を持ち過ぎてレバレッジを引き上げた。

ダブルライン・トータル・リターン・ボンド・ファンド(390億ドル)DBLTX.Oを運用するジェフリー・ガンドラック氏は6月初め、米10年国債利回りは2.35%がピークで、年末には1.7%に収まると予想していた。

ただ、同氏は、これまでの相場下落で利回りが目標を大きく上振れてしまったものの、今の利回り上昇は一時的で顧客はまったくパニックには陥っていないと主張。ロイターに対して、最近のインターネットにおける会合に先立って、電話で問い合わせてきた顧客は1人だけで、この顧客は「臆病者だ」と言い放った。

<大手ファンドも相場下落に脆弱>

ヘッジファンドのアパルーサ・マネジメントを運用するデービッド・テッパー氏やブラックロックBLK.Nのリック・リーダー氏ら資金運用担当者の一団は、今年4月にニューヨーク連銀のダドリー総裁との非公式な討論会の場で過去数年間で債券ファンドに個人投資家から大量の資金が流入している点に触れて、利回りが高騰した場合の個人投資家の対応に絡んでさまざまなリスクがあるとの見方を示していたことが判明している。

しかしそうしたリスクにさらされる度合いは、大手の資金運用担当者も変わらなかった。ブラックロックは6月、傘下の米国債ファンドのリターンがマイナス1.7%となった。また社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)の債券ファンドもその巨大さゆえに機動的なポジション変更が難しく、相場下落に対して脆弱さを持っている。

<ブレーキパッドの効用>

ただし、だれもが敗者というわけではない。ブリンカー・キャピタルなど、過去数週間を大きな痛みを伴わず乗り切ったファンドもあった。これには自動車のブレーキパッドに関する情報が役立った面があった。

同社はある自動車部品メーカー経営者から、米国の自動車のブレーキパッドの使用年数が過去最長だと聞かされ、米国の消費者心理が底を打ったと判断。シニア投資マネジャーのスチュアート・クイント氏は「摩耗したブレーキパッドの自動車を人々が運転しているという構図とその他のデータからは、米経済が回復方向へと向かわざるを得ない状況が見えてきた」と語った。

そうであれば金利は上がるしかなく、同社のチームは金利上昇を想定して相場が崩れる数週間前に、上場投資信託(ETF)のプロシェアズ・ショート20+イヤー・トレジャリーTBT.Pに絡む取引を行った。このETFはレバレッジを用いて米国債の値下がりに賭けていて、短期勝負の投資家に人気がある。

こうした賭けは報われ、同ETFの過去3カ月間のリターンはプラス12%となり、ブリンカー・キャピタルが今年前半に総資産を12%増やしたことに貢献した。

(Jennifer Ablan、Katya Wachtel、Tim McLaughlin記者)

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