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オイルマネー収縮の懸念、シリア攻撃を警戒しリスクオフ加速

[東京 28日 ロイター] - 西側諸国がシリアへの軍事行動に踏み切る可能性が高まり、円高・株安・債券高が加速している。世界経済のファンダメンタルズ自体は堅調であることから、軍事攻撃が小規模かつ短期間で終了すれば、相場反転の期待もある。

8月28日、西側諸国がシリアへの軍事行動に踏み切る可能性が高まり、円高・株安・債券高が加速している。写真は都内の外為トレーダー。2008年10月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

ただ、オイルマネーの収縮懸念で新興国からの資金流出は止まらず、警戒感は依然強い。米国の量的緩和縮小など不透明要因の多さも投資家を手控えさせている背景だ。

<1度きりの攻撃なら懸念後退か>

現在のシリアをめぐる情勢と異なる点は多いが、金融マーケットにおける中東の地政学的リスクという点では1990─91年の湾岸戦争時の動きが参考になる。

イラクがクエートに侵攻した90年8月2日、投資家の不安心理を映すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー(VIX)指数.VIXは20.43だったが、8月6日に35.91まで上昇。しかしながら、91年1月17日に多国籍軍がイラクへの空爆を開始すると、1月14日には36.20だった指数は3月14日には14.94まで低下した。

90年8月2日に2864ドルだった米ダウ.DJIは、地政学的リスクの高まりで10月11日には2365ドルまで下落した。だが、攻撃が始まった91年1月17日の2623ドルから、3月6日には2973ドルまで上昇。株価の上昇基調は前年の10月から始まっていたが、実際の攻撃開始からさらに上値を伸ばした。

対象となるケースが少ないうえ、それぞれの事情も異なり、さらに実際の軍事行動が混乱を拡大させる可能性もある。その意味で今後の展開に安易な予測は禁物だが、こうした経験則が「マーケットの懸念は実際の攻撃が始まれば低下する」(国内銀行ストラテジスト)との期待につながっている。

28日午前の東京市場では、シリア情勢の緊迫化によるリスク回避の動きが広がり、円高・株安・債券高が加速。一時、ドル/円は97円を割り込み、日経平均は前日比300円を超える全面安となった。一方、「安全資産」への逃避から円債先物9月限は一時144円32銭と、中心限月ベースで約3カ月半ぶりの高値を付けた。ただ、売買一巡後は、様子見ムードも広がっている。

野村証券・投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジストの村山誠氏は「警告的な1回だけの軍事攻撃であれば、戦闘地域の拡大や長期化といった懸念にはつながらないだろう。米国も深入りはしたくないのではないか。今後の情勢次第だが、実際の攻撃が終われば市場心理もいったん落ち着く可能性がある」との見方を示す。

<新興国市場からの資金流出続く>

市場が懸念するのは、中東情勢の展開自体よりも、それらが要因となって新興国からの資金流出が止まらないことだ。27日の東京市場でも、午前はリスクオフの動きが一巡したが、アジア市場が開き、現地で株安と通貨安が加速すると、日本株も下落幅を拡大させる場面があった。

新興国市場では、米国の量的緩和第3弾(QE3)縮小懸念による資金流出が進んでいたところに、中東の地政学的リスクが加わり、株安・通貨安に拍車をかけている。「湾岸諸国の株価が急落しており、オイルマネーの収縮が懸念されている」(三菱UFJ信託銀行・資金為替部グループマネージャーの塚田常雅氏)という。

オイルマネーの実態を把握するのは難しいが、規模を知る上では、経常黒字が手がかりになる。国際通貨基金(IMF)の推計によると、サウジなど湾岸協力会議(GCC)6カ国の経常黒字は昨年、計3500億ドル(約34兆円)と過去最高を記録した。国営石油会社が稼いだオイルマネーは、各国中銀が米国債など安全な海外資産で運用するのが中心だが、一部は政府系ファンドを通じ海外で積極運用されているとみられている。

原油高が進めば、湾岸諸国は潤い、オイルマネーは増加する。地政学的リスクの高まりがどのような影響をもたらすかは不明で、現時点では、思惑が先行している段階にすぎない可能性もある。ただ、ラマダン(断食月)の終了で高まっていた投資再開期待に水を差したのは確かだ。

<多面的な材料、不透明要素も多く>

原油価格の上昇が続けば、エネルギー問題を抱える日本にとっては貿易赤字拡大、経常黒字縮小を通じて、円安要因にもなりうる。ただ、原油価格上昇は中東リスクの長期化を意味し、リスクオフの円買い要因にもなるため、実際の値動きがどうなるかは不明だ。

また円安が進んだとしても輸入コストがさらに上昇することになるため、日本株が素直に円安を好感するかはわからない。これまでの「アベノミクス相場」では円安は株高要因だったが、日本企業側からは際限のない一本調子の円安を望む声は少ない。

「質への逃避」で金利が世界的に低下していることが救いだが、世界情勢の不安定化が要因とあっては歓迎はしにくい。

ドイツの8月IFO業況指数や米国の8月コンファレンス・ボード(CB)消費者信頼感指数など経済指標は比較的強いが、「日本の消費増税、米国の量的緩和縮小など経済面で不透明要素が多く、投資家に買い戻しをためらわせている」(岡三証券・投資戦略部シニアストラテジストの大場敬史氏)という。

(伊賀 大記 編集:北松 克朗)

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