[東京 3日 ロイター] - 東京電力9501.Tの汚染水対策で政府が3日に国費投入を決め、東電の経営にのし掛かる重圧を緩和させる効果を与えそうだ。70を超える東電の取引金融機関の中には、次の借り換えのタイミングで手を引く姿勢をみせていた先もあるが、「国の支援が出てきたことは望ましい」(取引金融機関幹部)と評価する声も出る。
ただ、国費の投入額が歯止めなく膨張するようなら、東電を主体とした現在の枠組みが、このまま機能し続けるかどうか懸念する声もあり、先行きには不透明感が漂っている。
<東電融資の金融機関に広がった動揺>
猛暑が続いた8月、東電の融資金融機関の間に、動揺がさざ波のように広がった。北関東のある地域金融機関が、次の借り換えには応じられないとの方針を見せたからだという。巨額の賠償や廃炉のコスト、除染問題。それに加えて、収束の道筋が見えない汚染水問題が加わり、不安感を膨らませたという。
東電の金融機関からの借入金総額は約3兆円超。大半は、三井住友銀行8316.Tなど大手銀行や、日本政策投資銀行などが担うが、地域金融機関などの70行も融資を継続している。
次の借り換えのタイミングで、金額が大きいのは10月に期限が来る約800億円。地域金融機関30行以上が融資継続を決める見通しだ。「こぼれ落ちるところはほとんどないし、仮にあったとしても金額も大したことない」と取引銀行の幹部は言う。
しかし、「クシの歯が抜けるように、1つ落ち、2つ落ちし、その動きが雪崩を打つのがこわい」と打ち明けた。
<東電の経営計画に影を差す柏崎刈羽原発の再稼働問題>
次の借り換えのタイミングは12月。三井住友や大手生保などが2000億円の融資を継続し、加えて社債償還分の3000億円の新規融資を実行する予定だ。
借り換えや融資の実行を判断する材料は、本来なら東電が国の支援を受ける際に策定した総合特別事業計画だ。
しかし、計画には収益改善効果がある柏崎刈羽原子力発電所の2013年上期の再稼働が盛り込まれているものの、そのメドは立っておらず、「すでに絵に描いた餅」(大手銀行幹部)。
融資実行の障壁として横たわるが、東電は「合理化効果により、2014年3月期は経常黒字転換」と取引銀行に説明し、融資の継続を訴えている。
これに対して「電力の安定供給を考えれば、融資を引き上げる(返済を求める)選択肢は取りえない。経常黒字の見通しが立てば融資は可能」(大手行幹部)との意見が強い。
実際、東電は現時点で手元現預金も豊富で、融資が一時的にストップしてもすぐに資金難に陥ることはない。
<汚染水対策で経産省から批判も、読めない国費投入の波紋>
ただ、来期以降も修繕費の先送りなどによる合理化が続けられるとは誰も考えていない。原発の再稼働の見通しが立たなければ、電気料金の再値上げとなる。
収支の改善とは別に、汚染水対策でも後手を取り続ける東電には、監督官庁の経済産業省からの批判もくすぶる。
ある大手銀行幹部は「東電が対応できない問題に国費投入するとすれば、逆に東電を存続させる意味もなくなるのではないか」との懸念を示す。
東電支援のもととなった原発賠償支援法案は、来年見直し時期が迫る。将来的に、東電が現在のままで存続するかどうかは不透明だ。
(布施 太郎 取材協力;浦中 大我 編集;田巻 一彦)
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