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焦点:中国で「暴力辞さぬ」地上げ横行、地方債務の重圧で

[無錫(中国) 3日 ロイター] - 中国・江蘇省の無錫市に住むXu Haifengさんは3年前に自宅から立ち退かされた時、北京に出向いて家の取り壊しを命じた地方政府への不満を訴えた。それ以降、家族は少なくとも18回誘拐され、不法拘置所の窓なしの狭い部屋に何週間も拘束されたという。

9月3日、多額の負債を抱える中国の地方政府は、脅しや暴力などに訴えて強引に土地収用を行っている。写真は3年前に立ち退きにあったXu Haifengさん。江蘇省無錫市で8月撮影(2013年 ロイター/Carlos Barria)

Xuさんの話は、時に暴力に訴える強引な土地収用が珍しくない中国でも衝撃的であり、多額の負債を抱える中国の地方政府があらゆる手段を使って資金集めに奔走し、市民生活にまで踏み込んでいる姿を浮き彫りにする。

「無錫市は借金まみれだ。市は住民の財産を奪い、土地を盗むことを生き残りの策としている」。こう憤るXuさんには74歳になる母親がいるが、その母親は10回以上も誘拐され、1年近くも不法に拘束されていたという。その背後には、適正な補償を求める家族の声を黙らせようとする圧力が見え隠れする。

世界第2位の経済大国となった中国では、土地収用は社会不安の最大要因の1つとなっており、急速な都市化の負の側面をあぶり出している。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは昨年、中国の経済成長が鈍化し、地方政府が債務返済資金に苦労するに伴い、土地の強制接収が増えているとの報告書を発表した。ただ同報告書の内容には異議を唱える専門家もおり、土地接収に関する公式な統計も存在しない。

<借金で火の車>

無錫市は、地方政府の中で最も多額の債務を抱える江蘇省の南部に位置する。公式統計によると、江蘇省の省政府や市政府は、大型建設プロジェクトや投資のために銀行などからの借り入れを膨らませている。

政府系シンクタンクの中国社会科学院・農村発展研究所の副所長を務める李国祥氏は、土地収用の背景には財政の圧迫があると指摘。「ロジックは単純だ。財政の健全さがない場合、地方政府はどうやって公正な補償を払えるだろうか」と述べた。

Xuさん一家が不動産を所有していた無錫市の浜湖区では、当局が脅しや暴力を使って住民の土地を安く接収し、立ち退きに従わなければ不法監禁されることもあるという。

当局の行為で死に至ったケースも報告されているが、こうした内容の正否の確認は取れておらず、浜湖区政府や無錫市政府への取材申し込みに対する回答も現時点では得られていない。

浜湖区での住民談は極端なケースなのかもしれないが、土地の強制収用自体は珍しいことではない。中国社会科学院の李氏によれば、中国の地方政府は、収入の20─90%を収用した土地の売却から得ている。

土地問題は、中国で毎年数多く起きているデモの主因の1つに数えられる。そうしたデモの多くは報じられないまま終わるが、2011年に広東省烏坎村で起きた農業用地強制収用をめぐる激しい抗議活動など、一部は国内外の幅広い注目を集め、中央政府に何らかの行動を促す場合もある。

現地メディアの報道によると、8月29日には、福建省で土地を強制収用された家の4歳女児が、取り壊しを行っていたブルドーザーにひかれて死亡するという痛ましい事件も起きている。

<莫大な投資>

過去約30年にわたる年率2ケタの成長を経て、中国経済は成熟段階に移りつつある。

ただ、地方政府の銀行借入残高が約9兆7000億元に達し、同債務の返済には力強い経済成長が不可欠となる一方、政府は投資主導から内需主導への転換に苦労している。

2008━09年の金融危機後に中国政府が打ち出した大型景気刺激策の多くは、銀行からの融資を資金源としている。そうした融資の多くは下水設備など採算の厳しい公共事業に投じられており、投資家は大量の不良債権が残る可能性を懸念している。

上海から電車で30分の距離にある江蘇省は、中国で最も豊かな省であり、旧来の輸出主導型成長モデルの見本のような存在でもある。2012年の同省経済の投資依存度は59%に上った。

地方当局は、無錫市を中国版シリコンバレーとして情報テクノロジー(IT)産業の集積地に生まれ変わらせようという構想を描く。ただ、フットボール競技場3500個分に相当する広大なビジネスパークで新たな経済モデルを生み出すという夢は、依然として国による大規模な投資に命運を左右される。

当局はコストを明らかにしていないが、無錫市政府が管轄する同ビジネスパークの開発主体企業である無錫太湖国際テクノロジーパーク投資開発は、財務面で厳しい状況に置かれている。

公式統計によれば、同社の営業キャッシュフローは過去4年連続でマイナスとなっている。また、中国の格付け機関大手、中誠信国際信用評級(CCXI)のアナリストによると、同社の負債総額は59億元に達しており、手元資金不足にも陥っているという。

無錫市と江蘇省による投資は、以前にも失敗に終わった例がある。両地方政府は過去10年間、省内の造船業と太陽電池パネル産業を世界最大規模に育てようと拡大を急いだが、行き過ぎた投資は設備過剰を生み出し、両セクターともに現在は巨額の損失を抱えている。

<暴力と脅し>

大規模ビジネスパークの建設を進めるため、浜湖区政府は農地を整理し、住民には新たな家を与えて引越しをさせた。また住居移転費用を捻出するため、昨年には無錫太湖国際を通じて10億元規模の起債を行った。

しかし、大掛かりな住居移転は、政府の税収が減るなど痛みを伴うものとなった。現地住民によれば、浜湖区当局は昨年に一部公務員の給与削減を計画したが、すぐに撤回したという。

給与削減計画を発表する通達のオンラインコピーには、政府は「困難かつ厳しい」住居移転業務に直面しており、「大きな財政圧力」にさらされていると書かれていた。

3年前に家を壊されたXuさんに対し、政府は家と土地を240万元(1平米当たり約4140元)での買い取りを申し出たという。インターネットで検索すると、Xuさんが持っていた家の周辺では現在、新築物件は1平米当たり1万0100─1万7840元で売られている。

Xuさんは、政府の申し出を拒否してから雲行きが怪しくなったと振り返り、水道や電気が止められ、夫とともに当局者から脅しを受けたり、暴力をふるわれたりするようになったと明かした。

家族に嫌がらせをしていた人物の1人は、電話口で「私は胡錦濤国家主席(当時)だ」と名乗り、「われわれが家を壊したってお前たちには何もできないだろう」と脅してきたという。

脅しに耐えかねた夫は最終的には契約にサインしたが、政府からは結局100万元しか支払われず、家は政府が雇った作業員たちによって取り壊された。

浜湖区では、同様の訴えが至る所で聞かれる。近隣の村では、当局が1979年以前の不動産譲渡証書を認めず、補償金の支払いなしで家が取り壊れたとの報告も複数ある。

アムネスティの昨年の報告書によると、2009年以降、中国では少なくとも41人が土地の強制収用に抗議して焼身自殺を図った。

人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(香港)のシニアリサーチャー、ニコラス・ベケリン氏は「地方政府当局者は成長を生み出さなくてはならない。一番手っ取り早い方法が地上げだ」と語った。

(原文執筆:Koh Gui Qin記者、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)

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