for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:携帯事業手放すノキア、一時代の終わり告げる

[ヘルシンキ/シアトル 3日 ロイター] - 米マイクロソフトMSFT.Oが3日発表したノキアNOK1V.HEの携帯電話事業買収は、54億4000万ドルという金額に限れば、新興ハイテク企業に数百億ドルの価値がつく今の時世では大した話とはいえない。

9月3日、米マイクロソフトが発表したノキアの携帯電話事業買収は、54億4000万ドルという金額に限れば、新興ハイテク企業に数百億ドルの価値がつく今の時世では大した話とはいえない。8月撮影(2013年 ロイター/Dado Ruvic)

しかしこの買収は、いつまでも続きそうにはなかったノキアの世界最先端のハイテクの偶像としての疾走に、ついに終止符が打たれたという意味では、現代ハイテク業界における大きな転換点として人々に認識されるだろう。

フィンランドでは、政治家や企業関係者がノキアの凋落について悲嘆にくれ、年金受給者は彼らにとってどんな意味を持つのか不安を抱いている。

ノキアが携帯電話事業の売却に合意したことで、かつて北欧企業の設計能力やデザイン性の高さの誇るべき象徴であり、フィンランド人のDNAとほとんど一体化した同社は事業解体という事態を迎える。

一時は世界の携帯電話の40%、フィンランドの輸出の5分の1と国内総生産(GDP)の4%を占め、時価総額が3000億ドル近くに達していた同社がだ。

ほんの10年足らず前には、消費者はノキアについて今日のアップルAAPL.Oのような企業として話題にし、洗練されていながら実用的なデザインに驚嘆していたものだった。それからの急速な退潮ぶりは、機敏なライバルが業界リーダーをあっという間に王座から引きずり降ろすような、消費家電業界の猛スピードかつ容赦のない激しい競争を物語っている。

ノキアの携帯電話事業を1990年代に立ち上げて、世界最大規模にまで育て上げのはヨルマ・オリラ氏だったが、同氏はアップルの「iPhone(アイフォーン)」や、スマートフォン(多機能携帯電話)革命の脅威を認知するのが遅れた点を批判されている。研究機関のリポートによると、ノキアはアイフォーン発売の3年前にはタッチスクリーン式の携帯電話を、2005年にはタブレット端末をそれぞれ開発していたのに、結局市場に投入できなかったという。

その後2010年にマイクロソフトからノキアに最高経営責任者(CEO)として乗り込んだスティーブン・エロップ氏は、それまでの同社の携帯電話向け基本ソフト(OS)「シンビアン」を捨ててマイクロソフトの「ウィンドウズフォン」に転換する方針を決めた。これは同社の立て直しに必要な大胆な決断だったとの見方が大勢だが、従業員の3分の1が削減され、当時同社に在籍していたある関係筋からは、ウィンドウズフォンの準備が整う前にシンビアンの売り上げが失われたので、誤った判断だったとの声も出ている。

ただ、ノキアは消えてしまうわけでなく、今後はネットワーク機器、ナビゲーション事業、ハイテク関連特許の部門に集中して取り組むことになる。

楽観派は、ノキアが大きな賭けに出るのはこれが初めてではないと主張。1990年代初めには、通信事業に専念するために全売上高の70%相当の事業を売却した歴史もある。

一方、フィンランド経済はといえば、ユーロ圏で数少ないトリプルA格付けの地位は維持し、最高水準の教育と福祉サービスを備えた平等社会という評価があるが同時に、輸出製造業が往年の力を失い、高齢化が急速に進んでいることへの懸念も存在する。

こうした中でノキアの携帯電話事業売却について、アレクストラのアナリスト、Tero Kuittinen氏は「フィンランドにとって大きな困難をもたらす。マイクロソフトはフィンランドでは、意味のある規模で携帯電話の研究開発ないし生産を維持しそうにない。07年にはフィンランドが世界のスマートフォン市場の60%を握っていたが、今後はそれがゼロになる。携帯電話技術に大いに賭けている国にとっては大打撃だろう」としている。

以前にノキアで働いていた多くの人々はその後フィンランドの情報技術(IT)業界の育成に一役買っており、代表例としてはコンピューターゲーム開発・エンターテインメント企業ロビオ・エンターテインメントの急成長が挙げられる。

もっともKuittinen氏によると、ロビオが制作したゲーム「アングリーバード」のダウンロード回数は20億回近くに達し、もう1つのゲーム企業スーパーセルは月間売上高が1億ドルに迫る状況になっているが「問題はこれら2社の合計でも雇用者数は700人程度にとどまる点にある」という。

マイクロソフト側からみると、今回の動きに関する話題の中心は、10日前に1年以内に退任すると表明したバルマーCEOの後継者レースに及ぼす影響となっている。

事情に詳しい人々は、ノキアのエロップCEOがマイクロソフトのデバイス・サービス部門トップとして出戻ることで自動的にバルマー氏の後を継ぐのだという見方を否定した。しかしアナリストは、今回のノキアとの合意によって、マイクロソフトの築き上げてきた戦略を全面的に見直したがる可能性のある外部の人物をCEOに起用するのは一段と難しくなるかもしれないと話している。

(Ritsuko Ando、Bill Rigby記者)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up