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焦点:日銀内で2%達成困難の見方増える、注目される今後の情報発信

[東京 26日 ロイター] -2015年度に2%の物価上昇率を目指す日銀の政策委員会内で、見解の相違が次第に明確になっている。26日公表の議事要旨や最近の発言などによると、9人の政策委員のうち4人が15年度の2%達成は難しいとの見解に傾いているとみられる。

11月26日、2015年度に2%の物価上昇率を目指す日銀の政策委員会内で、見解の相違が次第に明確になっている。写真は黒田総裁。21日撮影(2013年 ロイター/Issei Kato)

黒田東彦総裁は目標達成に自信を示しつつ「2%目標は野心的」と発言し、市場の注目を集めた。足元の金融・資本市場では、海外勢からの追加緩和期待が急速に高まり、円安/株高が進んでいる。日銀の政策判断が変わるのかどうか、日銀からの情報発信の中身に一段と注目が集まりそうだ。

<4人が多数意見と違う見解>

日銀が26日に公表した10月31日会合の議事要旨によると、半年ごとにまとめている「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の議論で、複数の委員が物価見通しに下振れリスクが存在していると主張した。

白井さゆり審議委員は、経済見通しを含めたリスク要因に「下振れリスクを意識する必要がある」と記述するよう提案。佐藤健裕委員も物価のリスクバランスの表現を「下方にやや厚い」と修正するよう提案した。木内登英委員は15年度にかけて2%目標の達成が可能とした記述を削除する趣旨提案した。

いずれの提案も反対多数で否決されたが、会合で具体的な提案をしなかった宮尾龍蔵審議委員も13日の講演と記者会見で、経済・物価の先行きリスクについて「やや下振れを意識している」と述べている。正副総裁3人を含む日銀の9人の政策委員のうち、4人が2年程度での物価2%目標の実現には、不確実性が大きくなっているとの見解を示していたと見ることができる。

<黒田総裁、2%は「野心的」と発言>

一方、黒田総裁は25日に都内で開かれた「パリ・ユーロプラス」会合での講演で、「2014年度終わりから15年度初めには2%の目標を達成する」と表明しつつ、2%目標は「過去15年間デフレが続いた日本では、確かに野心的」と発言した。総裁は22日の衆院財務金融委員会でも、みんなの党の小池政就委員への答弁で、2%の物価目標達成について「まだ道は遠い」と語った。

黒田総裁は今年4月、異次元緩和を打ち出した際に「戦力の逐次投入はしない」と言い切り、空前絶後の国債購入計画が目標達成に必要かつ十分な金融緩和との見解を示した。

実際、円安効果を背景に消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は6月にプラス転換した後、0%台後半で推移しており、物価は着実に上昇してきている。

ただ、1%は達成可能でも2%は難しいとの見方も、徐々に市場関係者の間で広がりつつある。来春は消費増税による消費の下押しがあるほか、昨年の衆院解散以降、続いた円安による物価上昇の影響も弱まるなど、物価押し上げ要因が一巡し、下押しするる要因が目立ってきそうだ。

中国経済の減速などによる国際商品市況の下落、米欧のディスインフレ傾向なども日本国内の物価を押し下げる方向に働く可能性がある。

<注目される賃金>

ここで焦点となるのが、賃金動向だ。政労使の協議で大企業製造業を中心に来春のベースアップに前向きな企業も散見され始めたが、消費税3%引き上げを相殺するほどの賃上げは難しそうだ。

基本給など所定内給与の前年割れが続いているのも、ネガティブ要因だ。10月31日の会合でも目標達成には「賃金、特に恒常的な所定内給与が上昇することが、非常に重要」との指摘が会合で出た。

日銀ではこれまで毎月公表している「金融経済月報」で「所定内給与の前年比はパート比率のすう勢的な上昇が押し下げ要因として働いている」と指摘してきた。

11月月報からは、これら賃金の動きを分かりやすく要素別に図示したグラフを掲載したページを新たに掲載した。日銀が賃金動向に詳細な注意をはらっている証拠とみられる。

<総裁発言から風向きを測る市場>

金融政策をめぐる黒田総裁の発言を受けて、「風向き」の変化を感じ取っている市場参加者もいる。

一部の参加者が変化の前兆を感じたのは8月末だ。来春の消費増税実施をめぐる有識者ヒヤリングで、黒田総裁が増税延期による長期金利急騰は対処が難しいが、増税による景気下振れは金融緩和などで対応が可能と発言した。この発言を受け、黒田総裁が追加緩和を検討する余地があると受け止めた参加者が、少数ながら出てきた。

10月末の会合以降、外為市場では海外投資家を中心に追加緩和期待が膨らみつつある。海外勢の中には日銀の追加緩和を米連邦準備理事会(FRB)が実施した量的緩和第2弾(QE2)になぞらえ、日銀版量的緩和第2弾(JQE2)と呼び始め、積極的に円売り/日本株買いを展開する動きも出てきた。

今後の賃金・物価情勢とともに、日銀の政策判断やQE2決断時の選択肢をめぐり、黒田総裁やその他の政策委員による発言に鋭く反応する市場地合いが予想される。

伊藤純夫、竹本能文 編集:田巻一彦

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