for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

ビッグデータ応用の新物価指数が本格稼働、1カ月前のCPI予測可能に

[東京 28日 ロイター] -販売時点情報管理(POS)データを利用し、日々の物価動向を把握できる画期的なシステムが今年5月から稼働している。

「東大日次物価指数」と名付けられたこの新指数は、ビッグデータをマクロ経済政策に応用しようという日本で初の試みだ。ここで収集されたデータを活用すれば、総務省の消費者物価指数(CPI)をほぼ1カ月前に予測することも可能で、今後の研究成果を政府や日銀が本格的に採用すれば、マクロデータが短時間で把握できるようになるのも、夢ではなくなる日が到来する。

この新指数は、全国300店舗のスーパーから食料品・雑貨の価格を集計して毎日、算出し、その結果はインターネット上で公開されている。

データは、日本経済新聞社グループ企業の協力で1店舗あたり15万─20万点と多数の食料品・雑貨の価格と販売数量を収集。これまでの調査では、把握が難しかった販売量を正確に認識し、売れ筋を外すことなく、販売量の多い商品の価格が大きく反映される形で指数を作成している。

調査対象は食料品と雑貨に限られ、諸外国のCPI統計では「グロッサリー」に分類されている分野で、CPIに占める割合は約20%。総務省のCPIが、品目ごとに特定メーカーの商品のみを指数に反映しているのに対して、同指数ではバーコードの種類ごとに一つの品目でも各種メーカーのさまざまな商品の価格を全て反映している。例えばバターひとつでもバーコードで管理されている約300商品の動向を把握できる。

1988年以降の東大日次物価指数とCPIの食料品・雑貨価格の動向を比較すると、バブル崩壊直後の1993─95年を除き、ほぼ平行して動いている。

ただ、CPIよりも東大指数のほうが水準は低め。同指数を開発した東京大学大学院経済研究科の渡辺努教授は、「価格が低いためよく売れる、いわゆる売れ筋商品の比重を高めに反映しているため」と説明する。

また、総務省のCPIは全国に調査員を派遣して価格を調べるため、集計に1カ月程度要する。一方、東大指数では1日ごとにデータ収集し、直ちに指数が算出できるため、ほぼタイムラグなく物価水準を把握できるという特徴がある。

こうしたシステム上の特徴を利用すれば、これまでは不可能だったことも可能になる。東大指数から、総務省のCPIにおける食料品・雑貨価格の動向が相当程度予測でき、これをもとにCPIそのものも推計することができる。渡辺教授は「ヘッジファンドなど金融関係者からの問い合わせが増えている」と述べる。

今後の課題は指数に取り入れる品目の拡大。リクルートの不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」や、飲食店検索サイト「食べログ」などを活用し、不動産や飲食など個人向けサービス価格を取り入れて、調査対象を拡大していく方針という。

また、不動産情報をリアルタイムで把握することで、「バブルの発生をみつけることができる」という新しい分析ツールも開発中だ。

通常ならば同一の価格圏であるはずのエリア内に突出して価格の高い物件が散発的に現れるのがバブルの特徴だと渡辺教授は指摘する。その現象の大小で、バブル発生の前兆かどうか判断できると指摘。「東京圏では2012年後半から荒川区や江東区で兆候が現れている」という。

渡辺教授は日銀出身。1990年代のバブル崩壊期に日銀の金融緩和が出遅れたひとつの要因が、物価動向を正確に把握できなかったことにあると指摘する。今後、東大指数がさらに強化され、その先にマクロデータの瞬時的な把握が可能になれば、「認知ラグ」を解消して、政策決定の際の制約を大幅に低下させることができるとみている。

他方、短期的には膨大なデータを活用し、値上げのメカニズムに迫ることも可能だと話す。例えば、スーパーの値上げが1)特売の減少なのか、2)レギュラー価格の引き上げなのかも判断可能という。実際、足元での価格上昇は、90%がレギュラー価格の引き上げによると試算。日銀の異次元緩和を受け、価格転嫁の動きが静かに広がっている可能性があるとみる。

また、来年4月の消費増税後の価格転嫁の動きなどもリアルタイムで分析できるという。

竹本能文 編集:田巻一彦

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up