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焦点:物言う株主に苛立つ米社債投資家、利益還元で信用力低下も

[ニューヨーク 19日 ロイター] -企業に利益還元を迫る物言う株主の活動が活発化しており、社債投資家は自らの利益が損なわれかねないと警戒を強めている。借金で買収資金を賄うレバレッジド・バイアウト(LBO)ブームの再来を恐れる声もある。

12月19日、企業に利益還元を迫る物言う株主の活動が活発化しており、社債投資家は自らの利益が損なわれかねないと警戒を強めている。写真はPIMCOのビル・グロス共同最高投資責任者。昨年2月撮影(2013年 ロイター/Robert Galbraith)

物言う株主として著名なカール・アイカーン氏が10月、アップルAAPL.Oに1500億ドルの自社株買いを迫った時、米債券運用会社パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO)のビル・グロス共同最高投資責任者は苛立った。今では慈善活動で知られるマイクロソフトのビル・ゲーツ会長を引き合いに「アイカーン氏はアップルにちょっかいを出さず、ビル・ゲーツ氏のような時間の過ごし方を増やすべきだ」とツイッターでつぶやいた。

ことし物言う株主の標的になった企業の株価は、こぞって上昇している。

しかし社債投資家は、企業が株主還元のために債務を増やし、信用力が落ちて社債保有者に損失を負わせる可能性を恐れている。

ダブルライン・キャピタルのグローバル先進国クレジットグループ統括、ボニー・ベーハ氏は「物言う株主の存在は、債券保有者にとって朗報とは程遠い。彼らが提唱するプログラムの種類は通常、企業の全般的な信用の質を犠牲にして株主リターンを増やす内容を含んでいる」と説明する。

金利が極めて低いため、企業が借り入れによる資金調達で自社株買いや配当を実施することは容易になっている。ドイツ銀行によると、ことし初めから9月までに発行された社債の21%は「資金使途」の欄に「株式買い戻し」と記載されており、その割合は昨年1年間の2倍以上に拡大した。

トムソン・ロイターのデータによると、S&P500社による自社株買いの承認額は12月17日までに4750億ドルに達し、2007年以降で最大となった。

一部には、企業の借り入れコストが配当利回りを下回るケースもある。低金利のおかげで、借り入れ資金を元手としたデルやハインツの買収は容易になり、利回りに飢えた債券投資家は喜んで買収資金を提供した。両社の社債格付けはともにジャンク級に引き下げられた。

ベライゾン・コミュニケーションズVZ.Nが買収資金を調達するため9月に発行した490億ドルという過去最大規模の社債は、難なく消化された。

アイカーン氏が「アクティビスト(物言う株主)投資にとって現在は最良の時機だ」と豪語したのも無理はない。

英アクティビスト・インサイトによると、1─10月に物言う株主の標的になった企業は世界で138社に上り、年末までには昨年の通年実績である145社を抜きそうだ。

<デジャブ>

社債投資家の側から見ると、景色は一変する。

ヘッジファンド運営会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントを率いる著名な物言う株主、ビル・アックマン氏がフェデックスFDX.Nに大規模出資するとのうわさが7月に広がると、同社株は4%以上上昇。しかし社債利回りは約20ベーシスポイント(bp)上昇して社債投資家をおびえさせた。

社債投資家が最も恐れるのは、金利が低かった2000年代半ばに始まったようなLBOブームの再来だ。当時のクリアー・チャネル・コミュニケーションズやクライスラーといった案件はどれも問題を抱え、ディストレスト債権(破綻企業の債権)取引所行きになるなどした。

現在はまだ、当時ほどの過熱感は見られない。しかし懸念が高まっている兆しはある。投資適格級の社債指数は利回りが米国債を1%強上回る水準にとどまっているが、通信やメディアといった一部セクターではスプレッドが拡大している。

USトラストのアナリストチームは顧客向けノートで、今回は米経済の不確実な見通しがLBOにブレーキを掛ける可能性がある、との見方を示した。

それでも社債投資家は、身の安全を守るためには投資の前に企業をより深く分析する必要が出てきたと言う。成長速度が遅かったり株価が低迷している企業は来年、物言う株主の標的になる可能性がある。

もっとも、注意を要するのは出遅れている企業だけではない。アイカーン氏が10月に標的としたのは、ほかでもないアップルだ。

ブラックロックの米州フィクストインカム共同ヘッド、リック・リーダー氏は、一部の企業にとってはレバレッジを増やすことに妥当性があると指摘。「レバレッジ水準が低く、自力でファイナンスが続けられる状態で、キャッシュフローが堅固なら、レバレッジを徐々に増やすことが可能だ。社債保有者の観点から見て、私はそうしたケースなら問題がないと思う」と話した。

(Steven C. Johnson and Jennifer Ablan記者)

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