[北京/上海 16日 ロイター] -実態が見えにくいことから懸念される中国の金融取引「影の銀行(シャドーバンキング)」問題で、中国工商銀行(ICBC)1398.HK601398.SSが携わり、償還が危ぶまれる高利回り投資商品をめぐり、中国当局がデフォルト(債務不履行)を認めるかどうかに注目が集まっている。
この投資商品は中誠信託が募集した信託商品。集めた資金30億元(4億9600万ドル)は非上場の石炭会社「山西振富能源集団」向けの融資に充てられたが、その後にこの会社が負債まみれだったことが判明した。
ICBCは同商品の代理販売などを手掛けたが、16日になって償還の責任は負わないと言明。期日の1月31日に償還できなければ、リスクの高い投資商品ですら政府や国有銀行による暗黙の保証があるとする多くの投資家の考えはもろくも崩れる。中国における資本の流れも影響を受けそうだ。
償還方法については明らかになっていないが、業界関係者らは、ICBCが解決策を模索しているのではないかと指摘する。
あるベテランの銀行筋は「中誠信託、地方政府、ICBCが現在、チェスの対戦のような厳しいやり取りの最中にあることは間違いない」と指摘。「しかし、こうした状況の中では物事が落ち着くのを待ち、それから対処しなくてはならない。なぜなら、償還できてもできなくても、問題はあるからだ」と述べた。
その他の市場ウォッチャーは、信託商品といったオフバランス投資商品をめぐる思い込みをなくすためにデフォルトを望んでいる。
国泰君安証券(上海)の銀行担当アナリスト、邱冠華氏は16日、顧客向け電話会見で、「金利自由化の背景は、金融機関でさえ破綻することがあり得るということだ。それなのに、どのように非政府系の信託商品を救済するというのか、救済はしないだろう」と述べた。
<暗黙の保証>
信託融資といったオフバランスの信用はここ数年、中国企業や地方政府の債務で存在感を高めている。アナリストもまた、中国の銀行の簿外リスクに懸念を強めている。
信託商品を含めた「理財商品」と呼ばれる金融商品は通常、組成や販売に携わった銀行の保証は付かないが、多くの投資家は国有銀行が暗黙のうちに保証していると考えている。そのため、銀行は投資家の損失を補てんすべきとの圧力を受けやすくなっている。
ここ数年でデフォルト直前に追い込まれた事例がそうした圧力の大きさを示している。
中信信託(CITICトラスト)は昨年、湖北省の鉄鋼会社向け融資を裏付けとした投資商品をめぐり、元利払いの遅れに追い込まれたが、最終的には地方政府が救済に乗り出したとみられている。
また、華夏銀行600015.SSを通じて販売された理財商品については、河南省の質屋やアウディ販売代理店向けの融資自体はデフォルトしたものの、第三者の保証が融資に付いていたおかげで理財商品に投資した人々の利益は守られた。
(Heng Xie and Gabriel Wildau 翻訳:川上健一 編集:宮崎大)
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