[キエフ 25日 ロイター] -ヤヌコビッチ政権が崩壊したウクライナの政変。大統領に逃亡の決断を下させた人物として歴史に刻まれるのは、26歳の元陸軍士官学校生かもしれない。
通行人がこぞって握手を求めるのは、西部リビウ出身のVolodymyr Parasiuk氏。政変のきっかけをつくっても本人は「英雄」と呼ばれることをはばかり、英雄の称号は警察との衝突で死亡した仲間たちにささげたいと話す。
ヤヌコビッチ大統領と野党指導者は21日、事態収拾に向け、欧州連合(EU)が仲介した合意文書に署名。これを受け、マイクを握り、群衆に合意への反発を呼びかけたのがParasiuk氏だった。
野党指導者で元ボクシング世界王者のビタリ・クリチコ氏らが見守る中、Parasiuk氏は衝撃的な演説を披露。その中で「殺し屋と握手を交わした」として、野党を痛烈に批判した。
また同氏は今年の大統領選まで待つ人は誰もいないと強調。ヤヌコビッチ大統領が翌日までに町から出なければ、報いを受けることになると訴えた。同氏の訴えは、野党指導者らに失望を抱いていた数千人の群衆の心に響いた。
その夜、ヤヌコビッチ大統領は首都キエフをヘリコプターで離れ、現在も逃亡中だ。同大統領には「大量虐殺」の容疑で逮捕状が出されている。
ロイターのインタビューに応じたParasiuk氏は、「多数の仲間を失い、感情が高ぶっていた」とコメント。その状況の中、大統領選の前倒しなどの合意が行われたことを聞いたというParasiuk氏は、「私は立場を明確にしている。ヤヌコビッチはテロリストだ」と語った。
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