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焦点:川内原発の再稼働待つ地元住民、暮らし再建へ不安と共存

[薩摩川内市 15日 ロイター] -再稼働の筆頭候補にあがる、鹿児島県の九州電力9508.T川内原子力発電所。約3年前の稼働停止で打撃を受けた地元経済にとって、再稼働の実現は「明日の暮らし」を取り戻す保証ともなる。

4月15日、再稼働の筆頭候補にあがる九州電力の川内原子力発電所。約3年前の稼働停止で打撃を受けた地元経済にとって、再稼働の実現は「明日の暮らし」を取り戻す保証ともなる。写真は原発から5キロ圏内に住む男性(2014年 ロイター/Mari Saito)

しかし、原発稼働による「将来の不安」を地元住民が払しょくしたとは言い難い。「放射能があっても、絶対にここを離れたくない」──再稼働を待つ人々からは、原発とともに生きようという複雑な胸中も伝わってくる。

<「ポスト福島」のモデルケースに>

薩摩川内市のJR川内駅から車でおよそ30分、川内原発に通じる幹線道路では、建設作業員がアスファルトを敷き、非常用の緊急避難路の拡張工事を進めている。多くの住民にとっては、原発再稼働の日が近づいていることを実感できる光景だ。30年近くにわたって地元経済を支えてきた原発の再稼働が、刻一刻と近づいている。

福島第1原発事故に伴う安全審査が強化されるなか、川内原発では1号機・2号機の稼働は停止したままだ。原発関連の失業が話題になることも増え、町にはどこか沈滞した雰囲気が漂う。

地元の小山裕弥さん(28)は「自分としては経済、仕事の方が今は心配。福島の事故は本当にひどかった。テレビで見ていても日本じゃないようだった。どこかほかの国で起きたような映像だった」と語る。

小山さんだけではない。地元で支持を集めるのは原発推進派の岩切秀雄市長だ。岩切氏は、川内原発の早期再開を訴えて2012年に再選。凍結中の3号機増設計画も「白紙」とは認識していないという。

川内原発の1号機・2号機は原子力規制委員会の「優先審査」の対象に選ばれ、早ければ8月にも再稼働第1号となる可能性がある。推進派の間では、薩摩川内が福島後の原発再稼働のモデルケースになるとの期待が広がる。

政府は先週閣議決定したエネルギー基本計画で、原子力を「重要なベースロード電源」と位置づけた。震災前、発電量の約3割を担っていた原発は、現在、国内48基すべてが停止しているが、専門家は、規制委に安全審査を申請している原発のうち、少なくとも14基の再稼働が認められる可能性が高いとみている。

早期の稼働再開は、日本政策投資銀行に1000億円の出資を要請している九州電力にとって朗報だ。稼働停止の負担は重く、九州電力など、原発を持つ電力会社が火力発電用の代替燃料費に投じた費用は総額8兆7000億円に達する。昨年度の赤字総額は5兆円に迫り、株式時価総額6兆円が吹き飛んだ。

<稼働停止、地元経済に深い痛手>

一方の薩摩川内は、原発の受け入れに伴い、1974年以降、国から250億円以上の交付金を受領。交付金や原発絡みの税収は、地域の交流センターや公園の建設、道路の修復などに充てられ、雇用創出にもつながってきた。岩切市長は川内原発について、「世界最高水準の規制基準」と言われる日本で「少なくとも一番しっかりした発電所だ」と訴える。

薩摩川内市の人口は約10万人。バブル崩壊前からシャッター街が増え、原発作業員で賑わっていた旅館や民宿も、今は閑古鳥が鳴く。同市ホテル旅館組合の福山大作組合長(ホテルオートリ代表取締役)によると、原発の定期点検の際は「ホテル、民宿ほとんど満室の状態が続いていた」が、2011年以降、数軒の旅館・民宿が廃業に追い込まれた。

商工会議所の試算によると、川内原発の経済効果は年間最大25億円前後。特に年2回の点検は影響が大きく、点検時には約3000人が最大4カ月間市内に滞在していたという。

薩摩川内市には約4000人を雇用する京セラ6971.Tの工場や、数百人が働く製紙工場があるが、建設・宿泊・飲食などのサービス業は、原発の稼働停止で大きな打撃を受けている。

<触れられない話題>

川内原発に向けてなだらかな丘陵地帯を走ると、原発の数キロ手前に「原発反対」という看板が現れる。さらに進むと、今度は「原発のあるまちづくり推進」という看板が目に入った。

再稼働推進派は、原発に反対しているのは外から来た市民グループだと主張。一方の反原発派は、地元経済が原発に依存しているため、住民が本音を口にできないと訴える。

佐賀県の玄海原発の再稼働をめぐり国が2011年に開いた説明会では、九州電力の社員が一般市民を装って再稼働を支持する「やらせメール」を送った問題が国内メディアを騒がせた。

市議会議員の井上勝博氏(日本共産党)は、議会でわずか2人という反原発派の1人だ。再稼働に反対する井上氏は、毎週金曜日、地元の市民グループとともに九州電力の営業所前でプラカードを掲げて抗議活動を行っている。

「避難計画についてもみんな心配なんですよ。福島の現実をみんな見ているわけですから、ああなったらはもうおしまいだねという感じはありますよね」。

原発反対の主張が、家族や友人との関係に溝を作ることもある。「商売とか家族とか関連していると、大きく反対できないという人が多い」と井上氏は話す。

安倍首相は、川内原発の再稼動について「地元の理解が重要」との姿勢を表明。政府も首相が政治判断で再稼働を決めることはないと否定している。

先週は、川内原発近くの海岸に市民グループ約100人が集まり、反対活動への支援を呼びかける紙風船500個を飛ばした。原発で事故が起きた場合、放射性物質がどう拡散するかを調べるためだ。

原発から5キロ圏内に住む中野行男さん(55)は再稼働に抵抗を感じつつも、避けることはできない、と語る。

「親戚や近所の人も(原発で)働いてましたよ。親戚やら、同級生もね、建設やら、警備とかね。だいたいみんな九電関係の(下請けの)仕事している」。「反対はせんけどね、彼らの仕事だから。仕事は今は無いからね」。

原発近くの海岸を歩き、ゴミ拾いやウミガメの保護活動をすることが中野さんの日課だ。「原発が止まってから海はおだやかじゃ。静かだしね。波が違うね、やっぱり。しーんとしてるな」。

中野さんは語り続けた。「(福島を見て)もう帰られんというのはもう考えきれんな。もう、ここを離れたくない。もう、絶対放射能があっても、戻りたい。ここでもう死ぬ。もうみんなここで70年も80年も生きているわけだけな」。

斎藤真理 編集:深滝一哉、北松克朗

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