June 26, 2018 / 5:45 AM / 5 months ago

焦点:トヨタ、手探りの配車サービス投資 ソフトバンクが「陰の主役」か

[東京 26日 ロイター] - トヨタ自動車(7203.T)が東南アジアの配車サービス最大手グラブに出資するなど配車サービスの有力企業との連携を強めている。急成長する同市場での主導権確保が狙いだが、トヨタ社内には「収益がいつ、どの程度出るかは見えてない」(同社幹部)という手探り感も漂う。一方、トヨタが接近する配車サービス各社はソフトバンクグループ(9984.T)が筆頭株主だ。新たなビジネスモデルを模索するトヨタの葛藤がソフトバンクを潤すという皮肉な構図も透けて見える。

 トヨタ自動車が東南アジアの配車サービス最大手グラブに出資するなど配車サービスの有力企業との連携を強めている。写真はトヨタ自動車のロゴ。昨年10月にロサンゼルスのモーターショーで撮影(2017年 ロイター/Mike Blake)

<「投資効果分からず」>  

トヨタによるグラブへの出資額は10億ドル(約1100億円)。年間2兆円台の利益を稼ぐトヨタには「たいした額ではない」(同幹部)が、マツダ(7261.T)など中堅自動車メーカーの1年間の研究開発費に匹敵する規模だ。トヨタは取締役と執行役員も1人ずつ送り込む。

「今ベストと思う会社と組み、やれることをやる。競合に奪われる前に先手を打ち、種をまく」と同幹部は投資の狙いを説明するトヨタ自動車(7203.T)が東南アジアの配車サービス最大手グラブに出資するなど配車サービスの有力企業との連携を強めている。。ただ、「何年後にどの程度の収益が出るかなんて正直分からない。どんな花が咲くか誰も分かっていない」と成果については慎重だ。

トヨタは昨年8月にグラブとの協業を発表。グラブは運転手向けリース車100台にトヨタが開発した通信端末を搭載して走行データを集め、安全運転なら保険料が安くなるなどのサービス開発につなげてきた。

グラブは東南アジア地域8カ国217都市で事業を展開。今年3月には競合の米ウーバー・テクノロジーズ[UBER.UL]から同地域の事業を取得した。トヨタは出資後、データをさらに蓄積し、運転手向け金融・保守管理サービスを全域に広げ、将来の移動サービスや専用車両の開発でも連携。宅配などの用途を見込む自動運転機能を搭載した商用電気自動車「イーパレット」の同地域での展開も検討する。

グラブやウーバー、中国の滴滴出行などが手がける配車サービス事業は「ライドシェア」とも呼ばれ、個人が自家用車やリース車をタクシー車両として使ってタクシー運転手として稼ぐ。出資額は非公表だが、トヨタは16年にウーバーにも出資。今年1月にはイーパレットでウーバー、滴滴出行などとも提携した。

東南アジア各国での新車販売シェアが高いトヨタと配車サービスで同地域最大のシェアを持つグラブという強者同士の連携強化に、株式市場はおおむね好意的だ。トヨタはグラブとの協業で得られるデータとそれを活用したサービスをウーバーや滴滴出行などにも展開できると期待する声もある。

先進国に比べて道路が未整備の新興国で配車サービスが普及すれば、自家用車、リース車でも従来とは異なる品質が求められる。PwCあらた有限責任監査法人の藤村俊夫・自動車セクター顧問は「車両、走行距離ともにタクシーとしても対応できる車が必要になる」といい、今回の連携強化は次世代の車づくりにも生かせるとみている。

しかし、ある株式市場関係者は、昨今のトヨタの動きをみると「新しいビジネスモデルをどう作ればいいのか暗中模索なのだろう」と先行きを案じる。グラブとの連携強化は評価しつつも、「現場に1円単位の原価低減を命じている中で、効果が見えない投資をしても大丈夫なのか」と懸念を隠さない。

<ソフトバンクは競合か>  

「ウーバー、滴滴出行、グラブ、オラ(インド)、これらは世界のトップのライドシェア会社で、全部われわれソフトバンクが筆頭株主となった」──。ソフトバンクの孫正義会長兼社長は20日の株主総会で、4社を配した世界地図を株主に披露し、誇らしげにアピールした。

また孫氏は、乗車賃による年間取扱金額は7兆円を超え、「倍々ゲームで伸びている。もうじき米アマゾン(AMZN.O)と同じ規模になる」と指摘、「自家用車を持つよりもライドシェアを使うほうが安い」と強調した。今年5月末に米ゼネラル・モーターズ(GM.N)の自動運転子会社クルーズへ出資(22.5億ドル、約2450億円)したことも報告。ライドシェア企業は自動運転の世界とともに進化していく、と語った。

グラブとその運転手はトヨタの技術力の恩恵を受けられる。グラブの事業価値が向上すれば、ソフトバンクにとっても当然プラスだ。トヨタはグラブの全リース車両に自社の通信端末を搭載しようとしており、他社メーカーのグラブ車にも搭載でき、メーカーをまたいでデータを集められる可能性がある。グラブとより緊密になれば、法人向け車両販売の拡大も見込める。だが、一般的に法人向け車両は個人向けに比べ、利益率が低い。

孫氏は今年2月、配車サービスに投資する意義について「自動車自体はもはやひとつの部品に過ぎない。むしろ(配車サービスという)プラットフォームのほうがより大きな価値を持つ」と語った。トヨタの白柳正義専務役員は5月、相次ぎ出資するソフトバンクが「同様のサービスを考えているという意味なら、やはり競合になるし、ひょっとしたら一緒に、ということもある。いろんな意味でオープン。どういったことが起こるかは想定できない」と述べた。

「車をつくる会社」から移動に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティ・カンパニー」への転換という大命題を掲げるトヨタにとって、配車サービス戦略の成否は重い意味を持つ。豊田章男社長が言う「生きるか死ぬかの戦い」が新たな展開を見せている。

*本文の一部が正しく表示されなかったため、再送しました。

白木真紀

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