February 1, 2019 / 1:53 AM / 3 months ago

アングル:米貿易摩擦「次の矛先」は欧州か、投資家が懸念

[ロンドン 30日 ロイター] - 世界の金融市場は米中貿易協議が妥結すれば大いに評価するだろうが、それが何らかの形で実現した場合、結果的に欧州連合(EU)が貧乏くじを引くのではないかとの懸念が投資家の間で広がりつつある。

 1月30日、世界の金融市場は米中貿易協議が妥結すれば大いに評価するだろうが、それが何らかの形で実現した場合、結果的にEUが貧乏くじを引くのではないかとの懸念が投資家の間で広がりつつある。写真はEU旗と米国旗。ブリュッセルで2017年2月撮影(2019年 ロイター/Francois Lenoir )

米中合意による欧州の輸出株上昇を見込んで、輸出大国であるドイツのクセトラDAX指数や、各国の高級ブランドメーカーなどを物色しようと思っている投資家は恐らく考え直すべきだ、とアナリストは忠告する。

なぜなら欧州にはさまざまな種類の災いがやってくる恐れがあるからだ。

ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミストで、ブリューゲルの研究員を務めるアリシア・ガルシア・エレロ氏は、中国がトランプ政権をなだめるために欧州からの輸入品の大部分を米国に乗り換えるとすれば、米中合意は欧州に大きな痛手をもたらすと警鐘を鳴らす1人。

その影響は非常に大きい。リフィニティブの企業データを分析すると、欧州の上場企業が今年中国から得られる収入総額の見通しは4560億ユーロ(5210億ドル)に上り、特に高級ブランドと自動車の比率が高い。

INTL FCストーンのグローバル・マクロ・ストラテジスト、ビンセント・デリュアード氏は、逆に米中協議が決裂した場合は、安価な中国製品が欧州に大量に流れ込んでくる恐れがあると予想する。

「米中の休戦が3月第1週に終わってしまえば、欧州が一番損をする。中国は必ず、欧州大陸に割安な製品を輸出するだろう」という。

中国の2017年の輸出額は欧州向けが3740億ユーロ、米国向けが5050億ドルだった。

デリュアード氏はもう1つの悲観シナリオを持つ。トランプ大統領が中国と合意するとともに欧州の自動車に関税を課すことになれば、同氏は同時に2つの勝利を手にしたと胸を張れる半面、欧州は二重に打撃を受けてしまうという展開だ。

実際、米中貿易協議が妥結されれば、すぐにも米国とEUの対立が起きてもおかしくないと心配する投資家は少なくない。

<欧州株に暗雲>

EUの対米黒字の多くはドイツが生み出している。しかし米国が欧州製品に関税を課すとすれば、アイルランドやイタリア、フランスなどが大きな被害を受ける。

これらの国の輸出製品の幅広さからは、悪影響の広がり具合が良く分かる。経済複雑性アトラスとハーバード大学国際発展センターの図表によると、2016年のフランスの輸出品はワインからガスタービン、医薬品まで多岐にわたっている。

トランプ氏の戦略を研究する人々は、同氏が北米自由貿易協定(NAFTA)刷新、米国の対中貿易赤字削減の次に取り組む課題はEUとの懸案解決になるとみる。BNPパリバのチーフエコノミスト、William De Vijlder氏は「次はわれわれの番だ」と述べ、EUと米国の貿易交渉という問題は最近まで視界から消えていたが、間もなく再浮上してもおかしくないと警戒する。

ロンバー・オディエのストラテジスト、シャルル・サンアルノー氏は、今後EUと米国の緊張が続く期間が長引き、欧州市場を神経質にさせる可能性があるのは明らかだとの見方を示した。

サンアルノー氏は、昨年11月にトランプ氏がフランス産ワインがたやすく米国に入ってきているのに、米国産ワインはフランス市場へのアクセスが制限されていて「不公正で変える必要がある」とツイッターに投稿した経緯に触れ、NAFTA再交渉に際してカナダ産ミルクにトランプ氏が言及したことを思い起こさせると説明した。

欧州株は既に米中対立のとばっちりで苦境にあるが、サンアルノー氏によるとEUと米国の貿易摩擦が現実化すれば、また暗い1年になりかねない。「欧州株は今年もアンダーパフォームする可能性がある」という。

もちろん米中協議に大きな進展があれば、欧州株も少なくとも短期的には上昇するだろう。BNPパリバのDe Vijlder氏は、世界経済にとってトランプ氏が生み出したこの不確実性が払しょくされる意味合いは大きいと話す。

ただし昨年、米中対立が原因で米国株に対してともにアンダーパフォームした欧州株と新興国株を比べても、世界の投資家の間では欧州株の人気がずっと低かった。

EPFRのデータに基づくと、新興国株ファンドは15週連続の資金流入を記録したのと対照的に、欧州株ファンドは過去46週のうち45週で資金が流出した。

<先手必勝>

欧州株の主要ベンチマークに関して、多くの外国人投資家は「投資できない」とみなしている。英国のEU離脱を巡る懸念、フランスとイタリアの政情不安、5月の欧州議会選に加え、特にユーロ圏の成長が減速している点が理由だ。

アバディーン・インベストメンツの戦略責任者アンドリュー・ミリガン氏は「どの顧客との会話でも、政治リスクプレミアムや政治的不透明感が話題に上るのは相当はっきりしている」と述べた。

コメルツ銀行のチーフエコノミスト、ヨルグ・クレーマー氏は、米国との摩擦はとりわけドイツの自動車産業をひどく傷つける恐れがあり、欧州委員会はうまく先手を打ってくれると期待している。

クレーマー氏はロイターに「欧州はトランプ氏の出鼻をくじく必要がある」と強調し、緊張緩和に向けて現在10%となっている米国車の関税率をゼロにすることを提唱している。

(Julien Ponthus、Ritvik Carvalho記者)

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