January 25, 2019 / 4:00 AM / in 3 months

コラム:トランプ貿易戦争、「ピュロスの勝利」に陥る恐れ

[ワシントン 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - トランプ米大統領は、中国との貿易戦争において「ピュロスの勝利」(犠牲が大き過ぎて割に合わない勝利)に陥る危険性がある。

 1月23日、トランプ米大統領(写真)は、中国との貿易戦争において「ピュロスの勝利」(犠牲が大き過ぎて割に合わない勝利)に陥る危険性がある。ワシントンで24日撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

市場の動揺により、トランプ氏は相手方の表面的な譲歩でも受け入れざるを得ない可能性もある。一方で関税の応酬がもたらしたダメージは、ずっと続いてもおかしくない。

トランプ氏はここ数週間、対中通商協議について楽観的な姿勢を打ち出し続け、19日には中国との合意は可能だと語った。こうした発言は、同氏の政策が原因で不安にさいなまれている投資家を落ち着かせる効果があった。それでもS&P総合500種とダウ工業株30種平均は、過去1年間で7%下がった状態だ。

ホワイトハウスの対中強硬派は神経をとがらせている。その1人であるライトハイザー通商代表部(USTR)代表は月末に中国の劉鶴副首相と会談し、大幅な構造改革を要求し続ける構えだ。ところが肝心のトランプ氏は、中国が向こう6年で1兆ドル強相当の米国製品を買うと約束していることで満足し、「勝利宣言」する事態もあり得る。そうななると中国の不当な補助金や技術の強制移転という問題は片付かないままとなる。

半面、これまでの関税導入で生じた波紋は広がり続けそうだ。中国は昨年12月、習近平国家主席がトランプ氏と当面の追加関税凍結で合意した後、ある程度米国の農産物購入を再開した。

ただし中国は今や、輸入する大豆の大部分をブラジルとアルゼンチンから調達している。かつてメーン州のロブスター養殖業者は中国を2番目に大きな輸出先としていたが、取引の大半はカナダの同業者に奪われた。イーストコースト・シーフード・グループは中国向け出荷の急激な落ち込みを受け、先週にコネティカット州の加工施設を閉鎖した。

中国側も痛みを受けるだろう。貿易戦争に対応する形で各企業が行った生産やサプライチェーンのさまざまな変更は、今後そのまま定着する公算が大きい。スティーブ・マデン(SHOO.O)はハンドバッグの85%を中国で製造しているが、今後一部をカンボジアなどに移転し、中国での製造比率を60%まで下げる。

部品調達先が中国だけだったインディアナ州に拠点を置く芝刈り機メーカー、アメリカン・ローン・モウアーのマイク・カーシー社長はBREAKINGVIEWSに対して、関税によって仕入れの分散化を検討するようになったと話した。同社長をはじめとする多くのビジネスマンにとって、米中貿易戦争が終結したとしても、その影響は長く残っていく。

●背景となるニュース

・米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は22日、米中通商予備協議が中止されたとした英紙フィナンシャル・タイムズの報道を否定した。カドロー氏は、週内に予定された会合はないと指摘した。中国の劉鶴副首相は30日、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とワシントンで会談する。

・中国は2024年末までに総額1兆ドル相当の米国製品を購入すると提案したと、ブルームバーグが18日伝えた。これは2017年の中国の購入額と比較すると約28%の増加となる。

・トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は昨年12月、通商協議期間中の追加的な関税導入を凍結することで合意した。協議がまとまらなければ、3月1日に米国は約2500億ドルの中国製品に対する関税率を10%から25%に引き上げる。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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