Reuters logo
焦点:トランプ大統領のアジア歴訪で喜んだ国、戸惑った国
2017年11月15日 / 08:16 / 8日後

焦点:トランプ大統領のアジア歴訪で喜んだ国、戸惑った国

[マニラ 14日 ロイター] - 米大統領としてこの四半世紀以上で最も長いアジア歴訪を終えたトランプ氏は14日、フィリピン首都マニラを大統領専用機で後にした。この訪問で、アジアの指導者少なくとも2人は、満足感にひたる十分な理由がある。

 11月14日、米大統領としてこの四半世紀以上で最も長いアジア歴訪を終えたトランプ氏(写真)は、フィリピン首都マニラを大統領専用機で後にしたが、今回の訪問を、アジア各国はどのように受け止めたのか。北京で9日撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議が開催されたフィリピンで、トランプ氏は、ドゥテルテ比大統領と「偉大な関係」にあると語った。わずか1年前、ドゥテルテ氏は、自身が推し進める麻薬撲滅運動を非難する当時のオバマ米大統領を汚い言葉でののしっていた。

トランプ大統領はまた、カンボジアの独裁的指導者フン・セン首相と握手を交わし、親指を立てるしぐさを見せた。同首相はトランプ大統領について、自国利益を最優先するよう各国に説く同志だと称賛した。

「あなたは私にとって偉大な人だ」と、フン・セン首相は東南アジア諸国の指導者が出席する会合でトランプ大統領にこう語りかけた。

そして、同大統領の「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」政策について言及した。「他国の独立と主権という点において、自身の新しい政策に従って行動すれば、米国は多くの友人を得ることになり、あなたは大いに尊敬され愛される、とお伝えしたい」

しかし、他のアジア指導者にとっては、トランプ氏の独自路線は、程度の差こそあれ、多国間主義や民主主義、そして人権の主唱者だった歴代の米国大統領とは一線を画すものであり、少なからず戸惑いを覚えたに違いない。

日本、韓国、中国、ベトナム、フィリピンの各首都を訪問するなかで、トランプ大統領は、国連制裁を無視して核兵器開発を強行する北朝鮮への圧力を強化するため、一致団結して取り組むよう呼びかけた。

しかし一方で、同大統領は、ベトナムで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の場で、アジアと米国の貿易不均衡を是正することが「アメリカ・ファースト」政策の根幹であり、米労働者を守ることにつながると明言した。

トランプ大統領のこうした見方は、多国間貿易協定を支持するというコンセンサスを覆すものだ。現在、アジア地域でこうした協定の擁護者は中国である。ベトナムではAPEC首脳会議に合わせて、環太平洋連携協定(TPP)に参加する11カ国は、新協定に関する閣僚間の大筋合意内容を正式に発表した。トランプ大統領は、米国民の仕事を守るためとしてTPP不参加を表明している。

ASEAN主要加盟国のある閣僚は、トランプ大統領が推進する2国間協定について、アジアはあまり乗り気ではないとロイターに語った。

「シンガポールのリー首相が指摘したように、米国にとって2国間協定がそれほど魅力的な理由は、まさに米国と1対1の協定を誰も結びたがらない理由にあると言える。2国間では米国にいじめられかねないからね」と、この閣僚は匿名で語った。

「誰がそのようなものに署名したいと思うだろうか」

<取引の極意>

トランプ大統領は帰国前、記者団に対し、「少なくとも3000億ドル(約34兆円)、あるいはその3倍」規模の契約を結んだと胸を張った。

米産業界はトランプ大統領の中国訪問で約2500億ドルの商談をまとめたが、その多くは法的拘束力がない。米産業界がずっと不満を訴えてきた中国市場へのアクセスや先端技術共有の緩和については、進展が見られなかった。

国内での支持率が低迷し、米大統領選における「ロシア疑惑」捜査が足かせとなっているトランプ大統領にとって、こうした契約の数々は重要な手土産となる。

 11月14日、米大統領としてこの四半世紀以上で最も長いアジア歴訪を終えたトランプ氏(左)は、フィリピン首都マニラを大統領専用機で後にしたが、今回の訪問を、アジア各国はどのように受け止めたのか。写真右は安倍首相。川越市で5日撮影(2017年 ロイター/Jonathan Ernst)

「中国との何十億ドル規模の契約は、米国の貿易赤字を減らす助けにはならないかもしれない」と、日本の元外交官は匿名で語った。「だが、産業界の一行を連れて中国訪問したことで、土産を手に帰国することができたと国民に話すことは可能だ」

トランプ大統領の歴訪による重要な成果はほとんどなかったものの、中国からの高まる主張を不安視するアジア諸国は、トランプ政権が今でも同地域にコミットしている証しとして、今回の訪問を歓迎したかもしれない。

「アジア諸国が求めていたのは、米国が少なくとも名目上、アジアに引き続きコミットしていることを明確に示すため、(トランプ氏が)ただ地域を訪れることだった」との見方を、マレーシア戦略国際問題研究所のシャリマン・ロックマン上席研究員は示した。

韓国の政府高官は、同国訪問の際にトランプ氏が予想外の行動や発言を行うことを心配していたが、大統領はかなり思慮深かったと話した。「韓国は米国とのパートナー関係において安心することができた」

アジア歴訪の最初の訪問国である日本でも大統領の評判は良かった。米大統領選で勝利を決めてまもなく、安倍晋三首相がトランプタワーを訪問し、高価なゴルフクラブをプレゼントするなど、当初からトランプ氏の機嫌をうかがっていた。

 11月14日、米大統領としてこの四半世紀以上で最も長いアジア歴訪を終えたトランプ氏(左)は、フィリピン首都マニラを大統領専用機で後にしたが、今回の訪問を、アジア各国はどのように受け止めたのか。写真右は、中国の習近平国家主席。北京で9日撮影(2017年 ロイター/Damir Sagolj)

「最も重要な成果は、同一の戦略を共有しているというほぼ同じメッセージを、われわれは世界に向けて発信できるということだ」と日本のある政府当局者は語った。

<豪華な歓迎>

アジア諸国のリーダーにとって、トランプ大統領の思いつきによる言動や自由奔放なツイートや誇張に対応するのは大変だったに違いない。だが、彼らが学んだことの1つは、豪華な歓迎に対しトランプ大統領がよく反応するという点かもしれない。

「中国を訪問した人でこれほどの歓迎を受けた人はいない、と彼らは言うが、私もそう思う」。トランプ大統領は北京訪問後、記者団にこう語った。北京では習近平国家主席自ら、紫禁城を案内した。

アジア歴訪の成果をはかる1つの基準として、トランプ氏は歓待を挙げ、「恐らく誰もこれまで受けたことがないと思う」と述べた。

中国におけるトランプ大統領の友好的な態度は主に、習主席が北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長に対して一段と圧力をかけることを期待する米国の思惑に起因するものだと、外交官らは口をそろえる。

アジア歴訪中におけるトランプ氏の北朝鮮に関する発言は、外交的手段の活用から軍事介入の警告までと幅広い。「われわれを見くびるな。われわれを試そうとするな」と、同氏は韓国国会で行った演説で北朝鮮に呼びかけた。

数日後、北朝鮮はこの演説を「老いぼれによる向こう見ずな発言」と一蹴。これに対し、トランプ氏は「なぜ金正恩氏は私のことを『老いぼれ』と呼んで侮辱するのか。私は一度も彼のことを『チビでデブ』と呼んだことがないのに」とツイートした。さらには外交による解決の兆しを見せ、「まあともかく、私は彼の友人になろうと、とても努力している。いつかそうなるかも!」と記している。

トランプ大統領は北朝鮮戦略をもたずにアジアを訪問し帰国したと、オバマ政権で米国連大使を務めたデービッド・プレスマン氏は言う。

「チビデブ発言は核戦略ではない」と同氏は指摘。北朝鮮に対する米国政府のアプローチは「気まぐれで無知な大統領の思いつきとエゴ、そして芝居じみた打算が源となっている」と付け加えた。

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below