March 26, 2018 / 11:34 PM / 8 months ago

コラム:トランプ氏、「お目付け役」排除で高まる予測不可能性

[23日 ロイター] - マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の後任にジョン・ボルトン元国連大使を充てるというトランプ米大統領が切ったカードは、反対派を警戒させ反感を買いつつ、同時に自身の政治基盤を喜ばせる上で、これ以上ないと言えるものだった。

 3月23日、マクマスター米大統領補佐官の後任にジョン・ボルトン元国連大使を充てるというトランプ米大統領(写真)が切ったカードは、反対派を警戒させ反感を買いつつ、同時に自身の政治基盤を喜ばせる上で、これ以上ないと言えるものだった。ワシントンで22日撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

11月の中間選挙は、この動きの背後にある政治的論拠の1つかもしれない。しかし、ティラーソン国務長官を解任し、その後任にポンペオ中央情報局(CIA)長官を充てる人事変更とともに、ボルトン氏の大統領補佐官就任は、大統領周辺の意思決定におけるダイナミクスを劇的に変化させることになるだろう。

トランプ大統領が、政権幹部からやってはいけないことを指図されることにいら立つようになっていたことは明らかだ。そのような人物を、自身の直感に従うような人たちにすげ替えている。

こうした人事変更は思いつきとは言いがたい。ボルトン氏をホワイトハウス入りさせることにより、トランプ氏は、自身とほぼ同じくらい風変わりで因習にとらわれないキャリアを築いてきた同調者を得ることになる。ジョージ・W・ブッシュ政権時代に米国連大使を務めたボルトン氏は、トランプ氏同様、イラン核合意など複数の外交問題を軽視している。また、米国は敵対国に対する軍事力の行使をためらうべきではないとの立場を強硬に主張し続けている。

そのようなボルトン氏の政権入りは、トランプ政権が新たな段階に入ったことを意味している可能性がある。トランプ氏がツイッターを通してマクマスター氏の解任を表明した同じ日、トランプ氏の個人弁護団を率いるジョン・ダウド氏が辞任した。ダウド氏は、2016年米大統領選へのロシア介入疑惑に関するモラー特別検察官の捜査への対応を巡り、トランプ氏に異を唱えていた。

マクマスター氏の解任、そして高まるケリー米大統領首席補佐官の辞任観測は、7カ月間続いた元将軍トリオによる支配の終焉(しゅうえん)を意味するかもしれない。マクマスター氏とケリー氏、そしてマティス国防長官の3人は、トランプ大統領に対する最も強力な「歯止め」と見られていた。

また、トランプ氏は、首席補佐官の役職を廃止し、それを4つの役職に分けることを、あるいは、一部の話によれば、大統領自身がその役割を自ら担うことを検討中との報道もある。ちょうどモラー特別検察官のロシア疑惑捜査がメディアの見出しに踊ることが増えるなか、そうなれば、かなり意図的な形で政権の予測不可能性が一段と高まり、ニュースを主導する事態になるだろう。

ある意味、マクマスター、ティラーソン、ケリーの3氏は、物議を醸していた新政権に重みと信頼性をもたらすために起用された。だが彼らの後任者は、トランプ氏の聞きたいことを発言してきたために起用されたのかもしれず、同氏の庇護(ひご)を求めて競わなくてはならないだろう。

トランプ政権の不思議なダイナミクスの1つに、高官の考えやメッセージと大統領自身のそれとの乖離(かいり)が挙げられる。特に、ツイッター上でそれは顕著だ。FOXニュースの強硬派コメンテーターであるボルトン氏の起用により、トランプ氏は、自身がよく視聴しているケーブルテレビを通じて知ったコメンテーターの1人を、大統領執務室のあるホワイトハウス西棟に迎え入れることになる。

だからといって、トランプ氏がボルトン氏のアドバイスを聞き入れることを必ずしも意味しない。大統領補佐官のポジションは名声とアクセス権を享受できるだろうが、その影響力はまさに大統領次第である。

トランプ氏が、新保守主義を標榜するボルトン氏よりも理論家ではないことは明らかだ。「トランプ主義」の形成について語るのは時期尚早であり、単純化しすぎと言えるだろう。

とはいえ、大統領が1期目の残りの期間をどう進めようとしているかのもっと広範な指針は見えつつある。それは、孤立主義で、保護主義的な政策であり、その中で、トランプ氏は、軍事力も含め、米国のあらゆる権力と影響力を自身が望むときにいつでも行使できるような自由を求めている。

とりわけそれは、貿易において顕著である。鉄鋼・アルミの輸入品に関税を課すというトランプ氏の計画は、中国との貿易戦争のリスクを高め、今月初めにはコーン国家経済会議(NEC)委員長の辞任を招いた。

ボルトン氏や先のブッシュ政権と比べ、トランプ氏が軍隊を大量投入した政権交代や「国造り」には興味がないことは知られている。だが、ボルトン、トランプ両氏は、限定的な先制攻撃や秘密工作、または米国の経済的、外交的、軍事的パワーのあからさまな積極行使への情熱を共有する可能性はある。

そこに真の予測不可能性が潜んでいるかもしれない。ボルトン氏が、トランプ氏を説得して米朝首脳会談をやめさせようとする可能性は低いとみられる。トランプ氏は、それを取りやめるには、ソーシャルメディアや他の声明を通してあまりに強くコミットし過ぎている。

とはいえ、もし会談がトランプ大統領の思うようにいかない場合(それが何を意味しようとも)、対イラクでそうだったように、ボルトン氏が軍事対応を迫る急先鋒になることはほぼ確実だろう。

北朝鮮に要求をのませるには、米国政府は中国を巻き込む必要があると考えている。だがそうした会談が失敗に終わった場合、すでに貿易戦争で打撃を受けている米中関係は、さらに悪化することになるかもしれない。

プーチン大統領率いるロシアとの関係は一段と予測が困難だ。ボルトン氏のような新保守主義は常に、ロシアの指導者に対して畏れと称賛、冷戦時代の疑念が入り混じった感情を抱いている。北朝鮮に対するように、ロシアとも「グランドバーゲン(大型合意)」が可能と考える人たちは確かにいるだろう。

だが繰り返すが、それは実現確実な結果ではない。新たな対立が起きれば、政権内に慎重な声がいる場合よりもずっと早くエスカレートしやすいかもしれない。

トランプ政権がタカ派に向かっていることは疑いようがない。しかしそのことよりもっと重要なのは、政権が自らをますます誇張し、性急に決断するようになることかもしれない。イラク戦争から15年が経過した今、劇的な判断ミスが起きるお膳立てが整ったようである。

 3月23日、マクマスター米大統領補佐官の後任にジョン・ボルトン元国連大使(写真)を充てるというトランプ米大統領が切ったカードは、反対派を警戒させ反感を買いつつ、同時に自身の政治基盤を喜ばせる上で、これ以上ないと言えるものだった。NY氏で2016年12月撮影(2018年 ロイター/Mike Segar)

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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