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焦点:米政権が海洋保護見直し、エネルギー業界はありがた迷惑
2017年9月30日 / 02:51 / 2ヶ月前

焦点:米政権が海洋保護見直し、エネルギー業界はありがた迷惑

Valerie Volcovici and Nichola Groom

 9月28日、米国のトランプ政権は、エネルギー開発を推進するため、サンゴ礁や哺乳類の生息地となっている海洋生物保護区11カ所の縮小または廃止を検討している。写真は、ハワイ沖のローズ環礁。27日提供写真(2017年 ロイター Ian Shive/U.S. Fish and Wildlife Service/Handout via REUTERS)

[ワシントン/ロサンゼルス 28日 ロイター] - 米国のトランプ政権は、エネルギー開発を推進するため、サンゴ礁や哺乳類の生息地となっている海洋生物保護区11カ所の縮小または廃止を検討している。

トランプ大統領が4月に署名した大統領令によれば、計4億2500万エーカーに及ぶ保護区の見直しは、石油やガスの掘削地域を新たに開拓し、「米国の家庭やビジネスのエネルギー需要を優先する」戦略の一環だという。

だが、エネルギー業界の代表者らに取材したところ、そうした取り組みが的外れに終わる可能性が高いことが分かった。石油会社よりも、トランプ大統領が非難してきた風力発電業者に有益となる可能性が高いと彼らは言う。そしてどちらの業界も、保護区の開発には関心を寄せていない。オフショア開発は高コストな上、陸上での開発機会が比較的豊富にあり、保護された場所を開発すれば社会的な非難を浴びかねないからだ。

ホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。

商務省は来月、太平洋と五大湖、大西洋にあるこれらの保護区について提言を行う予定。同省に寄せられた一般からのパブリックコメントの大半は、現在ある保護区の保存を支持している。

こうした保護区にどのくらい石油が埋蔵されているかは定かではないが、内務省海洋エネルギー管理局(BOEM)の推定では、太平洋領海外大陸棚には100億バレルの石油が眠っており、米国が必要とするエネルギーの約2年分に相当する。その一部は、カリフォルニア州沖の海洋保護区と重なっている可能性があるという。

しかし業界は、同地域での開発にほとんど興味を示していない。

「会員企業で現在、この機会を求めている会社はない」と、米西部州の石油協会会長を務めるキャサリン・リヘイス・ボイド氏は、今回の見直しの対象に含まれているカリフォルニア州沖の4つの保護区について明かす。

この協会にはエクソンモービル(XOM.N)、BP(BP.L)、シェブロン(CVX.N)、コノコフィリップス(COP.N)のような総合エネルギー大手企業が加盟している。

これら企業もコメント要請に回答しなかった。

見直し対象とされている他の保護区には、五大湖のサンダーベイ国立海洋保護区や、大西洋のノースイースト・キャニオン・シーマウント海洋国立モニュメント、ハワイ沖や米国領サモア、北マリアナ諸島が含まれている。

ロイターが入手したオフショア掘削の政府リース契約に関するデータは、石油業界がかつてほど資金を投じてオフショア石油開発に投資していないことを示している。新しい掘削技術により、陸上の石油開発がしやすくなったこともその一因となっている。

 9月28日、米国のトランプ政権は、エネルギー開発を推進するため、サンゴ礁や哺乳類の生息地となっている海洋生物保護区11カ所の縮小または廃止を検討している。ハワイ沖の太平洋離島海洋国立モニュメントで撮影。27日提供(2017年 ロイター/Laura M. Beauregard/U.S. Fish and Wildlife Service/Handout via REUTERS)

米国の石油・ガス生産量は陸上での開発ブームのため急増している。米エネルギー情報局(EIA)によると、2016年の生産量は日量885万バレルに達し、10年前の509万バレルから増加している。

「健全なエネルギー経済を維持するのに、海洋や沿岸部の全てで石油を採掘する必要がないことは明らかだ」と、下院の天然資源委員会に属する民主党議員らは7月、保護区の見直しに反対する書簡のなかでこう述べている。

<ありがた迷惑>

米石油協会(API)や米海洋開発産業協会(NOIA)のような業界団体は、保護区の見直しに支持を表明した。だがそれは、見直しが、石油業界に対する連邦政府の支持を強く示すものであることが主な理由だ。

「安全性や環境保護と、責任あるオフショア開発の推進とのあいだで適切なバランスを見いだすことは可能だ」と、独立系石油協会(IPPA)の広報担当者、ニール・カービー氏は語った。

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トランプ氏は、石油業や鉱業を不必要に妨げている環境に関する法律を撤回させ、米国の化石燃料生産を増やすことを公約に掲げて米大統領選を闘った。同氏はこれまでのところ、二酸化炭素排出制限の縮小や連邦政府によるリース契約の制限解除、許認可要件の緩和に向けて動いている。

内務省も8月、これとは別に、広大な保護区を含む全米27カ所の国定記念物に関する似たような見直しを終了したばかり。

内務省は見直し結果としての提言をまだ発表していないが、ワシントン・ポスト紙が入手した資料によると、同省は、エネルギー資源が眠っていたり、水産業や林業のような産業がより広範なアクセスを望んでいる一部国定記念物について、保護対象区域を縮小することを提言する方向だという。

<問題なき解決策>

風力発電業界の代表者らは、カリフォルニア州の海洋保護区に風力タービンを建設すれば1600万世帯以上に電力を供給できるとする一方で、より開発コストが低く、論争にならないような場所での成長を模索する方が望ましいとしている。

カリフォルニア州沖は水深が深いため、コストが高く、まだ実証されていない浮体式風力発電技術が必要になる。同海域での開発はまた、カリフォルニア州の面倒な規制や世論の反対に直面する可能性がある。

「米国風力協会は、どのような(海洋保護の)指定区域の見直しも支持しない」と、同協会広報のエバン・ボーン氏は説明。「保護区は一般的に、洋上風力発電開発の障害にはなっていない」と同氏は語った。

風力発電は天候に左右され頼りにならないと、トランプ大統領は批判し続けている。自身が所有するスコットランドのゴルフコースの視界に入る建設プロジェクトを巡って争ったことのある同大統領は、風力タービンを目障りだと呼んでいる。

リベラル系シンクタンク「アメリカ進歩センター」の海洋政策ディレクターであるミシェル・コナサン氏は、保護区の見直しについて、石油業界と風力発電業界の需要がないことを考えると、主に象徴的な価値しかないようだとの見方を示し、「経済に何か劇的な変化が起きない限り、実際に(保護区の指定が)変わることはないだろう」と語った。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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