March 6, 2018 / 8:15 AM / 7 months ago

アングル:トランプ氏の「異常」関税、専門家が見る5つの論点

Tom Miles

 3月5日、米国に輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すトランプ米大統領(写真)の計画は、世界的な反発を呼んでいる。ワシントンで2月撮影(2018年 ロイター/Jim Bourg)

[ジュネーブ 5日 ロイター] - 米国に輸入される鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課すトランプ米大統領の計画は、世界的な反発を呼んでいる。

では、こうした特定の関税を課すことが、なぜ貿易専門家の間で論争の的となっているのだろうか。

●全ての国が対象に

特定の国々から「投げ売り」あるいは不当に助成された輸入品に対して米国が頻繁に課す報復関税とは異なり、トランプ氏の鉄鋼・アルミへの関税は全ての国に適用される。

これらは「セーフガード」的な関税であり、ある特定の産業に深刻な損害を及ぼしかねない突発的な輸入の急増を阻止するための緊急輸入制限措置である。これに対し、米国の鉄鋼・アルミ業界はそのような脅威に直面していないとの批判もある。

トランプ氏が提案する関税は広範囲に及ぶ鉄鋼・アルミ製品を対象としており、強硬な姿勢がうかがえる。

●法的な異議申し立ては困難

緊急輸入制限は世界貿易機関(WTO)協定で認められている合法的な措置。だが、それに対するチェック機能は弱い。

同措置を講じる際は、主要な供給国に対して補償も提供する想定だった。それは元々、輸入制限措置を講じる国が、経済的影響のバランスを取るため他の製品の関税を引き下げることを意味していた。昨今では 多くの関税はすでに低いため、これには以前ほどの実効性がない。

したがって、影響を受ける国は、米国からの輸入品に関税を課したり、他の措置を講じたりすることによって補償を獲得しなくてはならない。だが、3年間はそうすることが許されていない。

もしWTOに提訴した場合、補償を受ける権利を失いかねず、何年にも及ぶ法廷闘争が始まるだけかもしれない。仕返しのため認められていない措置に出るなら、報復合戦に突入する恐れもある。

●「国家安全保障」で正当化

トランプ氏の関税は、1962年の米通商拡大法232条に基づいており、同条項は「国家安全保障」を理由に輸入制限を認めている。

法律事務所ホワイト・アンド・ケースの調査によると、ニクソン、フォード両大統領はそれぞれ1971年と75年に同法232条を発動し、外国産石油に関税を課した。同条項は1995年にWTOが発足して以来、発動されていなかった。1999年と2001年に米国政府は検討したものの、発動には至らなかった。

WTOは国家安全保障が理由であれば規則の適用除外を認めているが、貿易紛争の防衛策としてそれが使われたことは一度もない。カタールとアラブ首長国連邦(UAE)の間で現在係争中の案件でそれは生じる可能性があるが、同案件は、カタールが積極的に進めようとしない限り実際には棚ざらしの状態にある。

国家安全保障を理由とする米国の主張は、WTOの規則を脅かす可能性がある。他国が米国に追随し、自国の主張を正当化してWTOの規則から除外されようとするためにそれを利用するかもしれないからだ。

だがトランプ大統領は5日、米国の国家安全保障を理由とする関税の正当化を台無しにしたようだ。メキシコとカナダが北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉で「公平な」合意に達するなら、関税適用対象から「除外」するとツイートした。(編集注:カナダとメキシコを関税の対象外とすることが8日正式に発表された)

●コラテラルダメージ

こうした関税には鉄鋼・アルミを製造する米国メーカーを支援する狙いがあるようだが、小型トラックからスープ缶に至るまで、あらゆるメーカーの利益を減少させるだけでなく、価格上昇を招く可能性がある。

また、トランプ氏の究極のライバルである中国よりも、カナダのような米同盟国に損害を与える可能性もある。貿易を専門とする多くのエコノミストは、同氏の貿易に対するゼロサム的で「重商主義」的な考え方は見当違いであり、貿易赤字が常に悪いと考えるのは誤りだと指摘する。

●世界の貿易システムに影響するか

WTOはすでに麻痺(まひ)寸前に陥っている。米国は新たな裁判官の任命を拒否。裁判官の数は通常の7人から4人に減少している。

セーフガード的関税を発端とする貿易戦争は、世界の貿易システムに新たな傷口を開くことになるだろう。約四半世紀に及ぶ秩序を解体し、世界貿易の調停者として、保護主義の監視役として機能してきたWTOの役割を後退させることになるからだ。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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