August 24, 2018 / 5:32 AM / in 3 months

コラム:トランプ関税が米国農家を直撃、世界の「蚊帳の外」に

[23日 ロイター] - 米国は中国に160億ドル(約1.8兆円)相当の追加関税を発動した。トランプ米大統領の政策によって国際貿易の相関図は既に変化しつつあり、米国農家はいずれ、蚊帳の外に置かれかねない情勢だ。

 8月23日、トランプ米大統領の関税政策によって国際貿易の相関図は既に変化しつつあり、米国農家はいずれ、蚊帳の外に置かれかねない情勢だ。写真は2009年、アラバマ州で撮影(2018年 ロイター/Carlos Barria)

トランプ氏の関税政策に反対する超党派の団体「自由貿易を求める農家の会」が全米の農家を対象に行った調査で、農家は口々に長期的な影響への懸念を訴えた。

米国農家は短期的には事業を続けられるかもしれない。しかし今は輸出相手との関係を営々と築き上げてきた市場が、ブラジル、カナダ、アルゼンチン、ロシアなどの競合国に奪われるのではないかと恐れている。

どんな支援策を講じても、これらの市場は戻ってこない。しかも仮に明日、貿易戦争が終わったとしても、重要な輸出相手との関係には、既に傷が入ってしまっているのだ。

もちろん貿易戦争は他の産業にも影響を及ぼすが、農業は真っ先に懲罰的な関税の対象になるため、農家の苦境を理解しておくことは重要だ。

トランプ氏はあまりにもしばしば、有権者を苦しめる政策の複雑さを単純化する。今日の世界貿易は、関税だけでどうなるものではない。サプライヤー、規制当局、検査局、海運ルート、バリューチェーンなどが複雑に絡み合っている。関係、コスト、信頼の上に物事が成り立っている。

何より重要なことに、競争は激しく、拡大している。その上、関税なら発動も撤回もすぐにできるが、貿易関係の構築には数十年を要する。その関係が危険にさらされているのだ。

トランプ氏の貿易戦争がもたらした混乱につけいる形で、アルゼンチンからウクライナまで、競争相手は米国農家が支配していた市場に積極的に進出している。

ブラジルの大豆農家はこの機をとらえ、大豆の生産を増やして中国に売ろうとしている。この取り組みは既に功を奏し、ロイターによるとブラジルの中国に対する大豆輸出は今年上半期に前年同期比6%増えた。7月には前年同月比46%も急増している。

トランプ氏の貿易戦争は文字通り、世界貿易の光景を変えつつあるのだ。

ブラジルだけではない。米国との関係が悪化したメキシコは、米国以外の小麦の輸入元を探している。その穴を埋めようとしているのが、米国産よりも低価格を提示できるアルゼンチン、ロシア、ウクライナの小麦農家だ。ロシアは2016年に米国を抜いて世界最大の小麦輸出国となった。

一方で米国の小麦輸出は今年上半期、世界全体で21%も落ち込んだ。

トランプ氏の貿易政策が不透明なため、中国、インド、イタリア、スペインの代表は、発注や関係構築を目的に毎年開かれる米国農家との会合をキャンセルせざるを得なかった。

輸出に向けて海上輸送される米農産物が減れば、米国とアジアの輸入元との間で最大限まで効率化が進められてきたサプライチェーンも変容するだろう。

ばら積み輸送船の運営業者は既に、新たな航路に便乗して商機を広げようと、貨物船の再配置を進めている。これもまた、米国が保護主義政策を強めて国際貿易の光景が変化していることの証左だ。

国際競争は米国を待ってなどくれない。そしてトランプ政権が環太平洋連携協定(TPP)を離脱したように、米国が指導的役割を放棄すれば、競争相手は勢いづき、米国の農家や製造業者が不利を被るだけだ。

農家が困窮し、借金を返済できず、翌年の作付けコストも賄えなくなれば、金融機関や不動産会社、将来の穀物生産へと余波が及ぶ。

週を追うごとに米国農家にとっての門戸は閉ざされ、競争相手の機会は広がる。閉ざされた機会を取り戻せるかどうかは不明だ。

 8月23日、トランプ米大統領の関税政策によって国際貿易の相関図は既に変化しつつあり、米国農家はいずれ、蚊帳の外に置かれかねない情勢だ。写真は7月、イリノイ州の農場(2018年 ロイター/Joshua Lott)

トランプ氏は失敗した政策を放棄し、今すぐ世界貿易におけるリーダーシップを取り戻すのが賢明だろう。米国が蚊帳の外から世界貿易を覗きこむ立場に追い込まれる前に。

*筆者はオバマ前米政権下で米通商代表部=USTRの公共問題担当副補佐官を務め、現在はワシントン国際貿易協会(WITA)のメンバー。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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