August 20, 2018 / 11:20 PM / in 3 months

トランプ米大統領、FRB利上げ路線を牽制:識者はこうみる

[21日 ロイター] - トランプ米大統領は20日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が利上げを継続する方針であることについて「気に入らない」とロイターとのインタビューで語った。

 8月20日、トランプ米大統領はロイターのインタビューに応じ、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が利上げを継続する方針であることについて「気に入らない」と述べた。ホワイトハウスで20日、ロイターのインタビューに答えるトランプ氏(2018年 ロイター/Leah Millis)

FRBがもっと緩和的であるべきだとし、「(パウエル議長による)利上げは気に入らない」と大統領は語った。FRBの独立性は経済安定に重要と考えられているため、米大統領がFRBを批判することはまれだ。

──インタビュー:トランプ大統領、米FRBの利上げ「気に入らない」

大統領がFRBの利上げ路線を改めて批判し、米中通商協議での進展に懐疑的な見方を示したことを受け、ドルは一時109.77円と約2カ月ぶりの安値まで下落した。

市場関係者の見方は以下の通り。

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

今回のトランプ大統領の発言について、ヘッドラインだけを見ると、FRBの利上げ路線への批判と中国、欧州の為替操作に不快感を示した7月19、20日の繰り返しに見える。

当時の米連邦公開市場委員会(FOMC)は8月1日の声明文で「力強い」ペースで拡大する経済を強調し、逆にタカ派色を強めたかのようだった。

しかし、その後は米中通商関係の泥沼化が進み、米国は中国の報復措置によって痛みを受ける米農家に財政措置を手当てせざるを得なくなった。米国自身にも貿易戦争の副作用が現れるなか、オハイオ州の補選では共和党候補者が僅差でしか勝利できなかった。

こうした経緯を踏まえれば、今回の利上げけん制は重みが増しており、パウエル議長への「恨み節」のようにも聞こえる。

7月と8月の発言に共通しているのは、為替操作に対する不満の矛先が中国と欧州のみで、日本には向いていないことだ。

7月発言のあと、日銀は質的・量的緩和の柔軟化を行っており、それを既に含みおきした上でトランプ氏は日本を名指ししなかった可能性があるとみていた。

今回も日本が除外されたところをみると、出口戦略と思しきオペレーションのギアを日銀が一段上げる準備が整っているのかもしれない。

総合的に考えると、FRBが政治的な意向を汲むだけでなく、通商戦争による世界経済へのダメージを考慮しタカ派トーンを後退させていく可能性がある一方で、日銀の緩和の微調整は前進すれこそ後退はないため、ドル高修正の時期が早まるとみている。

さらに、11月6日の中間選挙で勝利が危うくなれば、逆算して9月の日米通商協議において日本が為替操作国として新たに名指しされる蓋然性が高まると見ておくべきだろう。

<バークレイズ証券 シニア為替・債券ストラテジスト 門田真一郎氏>

トランプ米大統領による米連邦準備理事会(FRB)への批判は、これまでと内容はほぼ同じでありサプライズはない。ポジションの巻き戻しの材料に使われただけだろう。

焦点は、パウエルFRB議長が今後どうするかだ。政治的圧力に屈するのか、利上げ路線を継続するのか。ここで利上げを止めれば、FRBの独立性に懸念が生じるため、利上げを継続すると考えるのが普通だが、これほどあからさまにFRBを批判する大統領もこれまでいなかった。まずはジャクソンホールでのパウエル議長の講演に注目が集まりそうだ。

もっとも、利上げを継続するとしても、市場はほぼ織り込み済みだ。ドル/円は利上げよりも、米経済の減速などに反応しやすくなるとみている。

<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

破天荒な政治家とも言えるトランプ米大統領による米連邦準備理事会(FRB)の利上げ路線へのあからさまな批判が伝わり、ドル安と米長期金利低下がもたらされた。

トランプ氏による利上げけん制発言の直接的なリスクは、独立性を守りたいFRBが景気の強さを強調し、かえって利上げに意固地になり金融政策が硬直化することだ。

9月の米公開市場委員会(FOMC)で利上げしなければならなくなった印象が強い。また、今後も引き締めしすぎるリスクを抱えることになったとみている。

米国が金融政策を引き締めすぎれば、米景気が早々とリセッションに陥る蓋然性を高め、その結果、金融市場では利下げが視野に入り、ドル安につながるだろう。

トランプ氏はパウエル議長を指名した段階で、この人物なら金融政策を政治都合に合わせてくれると見積もっていたのかもしれない。しかし、中間選挙での再選のリスクもちらつくなか、その見積もりは結果的に誤算となり、それが最近の利上げけん制発言につながっているとみている。

<ジャニー・モンゴメリー・スコットの首席フィクストインカムストラテジスト、ガイ・ルバス氏>

現職の大統領がFRBについて、これまで講じた措置だけでなく、今後取り得る行動について公の場でコメントするのはあまり通常では考えられないことだ。パウエルFRB議長やその他のFRB当局者らが大統領の発言によって大きく姿勢を変えることはないと思うが、FRB理事会の空席を狙うことに関心がある候補者には強いメッセージを送っている。つまり、緩和的金融政策を好むか、そうでなければ別の仕事を探せということだ。

<米サントラスト・アドバイザリー・サービシスの市場ストラテジスト、キース・ラーナー氏>

金利による経済への影響に対し(トランプ大統領が)引き続き懸念を示したというのがニュースだ。大統領は米連邦準備理事会(FRB)について少ししゃべっている。FRBは独立性を保つだろう。マーケットは、政権が金利に対してどう言ったかより、FRBの議事要旨に注目するだろう。

<テンパスのシニア為替トレーダー、ファン・ペレス氏>

ユーロ圏の国内総生産(GDP)やインフレなど経済統計の改善がユーロを支援する中で、安全資産としてのドルの役割は弱まっている可能性がある。これに加え、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しを巡るトランプ氏の発言は、介入による意図的な通貨切り下げという、米国が非難している行為そのもののように見える。

経済のモメンタムが他の通貨の回復を支える一方で、ネガティブな発言がドルを圧迫する中、ドルは今後、困難な局面にさらされるだろう。

<B・ライリーFBRのマネジングディレクター兼首席グローバルストラテジスト マーク・グラント氏>

まず第一に、トランプ大統領と連邦議会は双方とも、たとえば減税や雇用関連の法案を通過させることにより、経済成長を支援している。利用可能なほぼすべての土台において、彼らは成功しつつある。

米連邦準備理事会(FRB)は「正常」な金融政策へ戻ることを目指して利上げを志向し続けている。私は、米国内外の中央銀行による介入により、ほぼ10年にわたり「正常」な状態は存在しなかったと主張したい。私からすれば、一部の学術的理論に基づいて政策金利を引き上げることに、正当な理由などない。

利上げは経済成長を鈍化させる。そのため、大統領と議会が経済を拡大させようとしている半面、FRBはその正反対の方向に進んでいる状態だ。

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もう1つ言いたいのは、FRBは独立機関である一方、米国の中央銀行であり、大統領は、所属政党が何であれ、どの大統領にも、中銀が政策として何を実行しているかを問う権利があるということだ。

FRBは1913年の連邦準備法により設立された。計画的に作られた独立機関だが、米国政府の一部でもある。

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