November 9, 2016 / 8:51 AM / 3 years ago

予想外の「トランプ大統領」誕生へ:識者はこうみる

[東京 9日 ロイター] - 直前の予想を覆して米大統領選挙で勝利を収める見通しとなった共和党のドナルド・トランプ候補。開票で優勢を伝える「トランプショック」によって、東京市場では9日、株安・円高が急進行した。

今後の相場の行方について市場関係者の見方をまとめた。

<SMBC日興証券 金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>

事前予想を覆してのトランプ候補の勝利は、世論調査の支持率に表れない同氏のファンの投票行動が影響したのではないか。背景には米国の格差の拡大、構造的な問題がありそうだ。トランプ氏の政策がすべて実現するとは思われないものの、大統領は外交・安全保障政策に絶対権限を持っているため、この分野のリスクについては注意するべきだろう。

金融市場はリスクオフの流れになったが、米国内においては、大型景気対策を掲げるトランプ氏の政策が見直される可能性もあり、米株式市場で買い戻しが入ることも考えられる。一方、日本、中国、韓国などアジアでは様子見姿勢が強まるのではないか。

日本のマーケットに与える影響としては、しばらくリスク回避となりそうだ。もっとも円債市場では、日銀のイールドカーブ・コントロールが意識され大きな動きになることはなさそうだ。やはり、為替と株式相場の動きへの注意が必要だろう。

<三井住友銀行 チーフストラテジスト 宇野大介氏>

ドル105円半ば、日経平均1万7500円に近接した今朝の相場は、英国民投票の結果が判明した6月24日の東京市場の早朝の動きに酷似していた。

今月は欧米ファンドの決算月でもあるため「トランプ・ショック」は24日の感謝祭あたりまで続き、相場が一方向に展開しやすい環境になりそうだが、トランプ氏がブレインやスタッフを固める過程では、現実路線に舵を切る姿が見えてくることが予想され、急激なドル売りや株売りは次第に勢いを失うだろう。

ただ、ドルや株価の反発の余地は限定的とみられ、年内ドルは95―100円、日経平均は14500―15500円を中心とする推移になるとのイメージを持っている。

今後については、トランプ氏が大統領の肩書きを得たあと、その見解が変わる部分と、変わらない部分を見極める必要がある。

トランプ氏は、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営について、バブル破裂を回避すべく利上げを先延ばしていると批判してきたが、背景には、オバマ民主党政権下でミニバブルを破裂させ、綺麗な状態で経済を引き継ぎたいとの本心があったと考えられる。

大統領就任後は、利上げによって余計なノイズを発生させたくないとの立場に切り替わると予想され、FRBに利上げを催促するようなスタンスからは一定の距離を置くことになるだろう。

金融市場参加者が予想していた12月の米利上げについては、米経済の弱さからも、今回の金融市場の混乱に鑑みても、その可能性は極めて低いとみている。

一方で、移民規制、通商政策において、米国民を守るというトランプ氏の姿勢は、強まりこそすれ弱まることはないだろう。

したがって、中国や日本の通貨安指向に対しては、当然の如く、批判的であり、安倍政権・日銀にとっては、相応の円高を覚悟すべき事態を予想する。

NATO(北大西洋条約機構)並びに日米同盟において、米軍事力に他国がタダ乗りすることを改めさせたいという見解も変わらないだろう。

経済対策については、法人税率の引き下げを企図しており、外国企業を米国に招き、米企業にとっても「飴」となる政策だ。その分の財政悪化については、防衛費削減がその原資となる見解だ。

 11月9日、直前の予想を覆して米大統領選挙で勝利を収める見通しとなった共和党のドナルド・トランプ候補。開票で優勢を伝える「トランプショック」によって、東京市場では、株安・円高が急進行した。写真はニューヨークで勝利演説するトランプ氏(2016年 ロイター/Carlo Allegri)

<ミョウジョウ・アセット・マネジメント CEO 菊池真氏>

市場が想定していなかったトランプ大統領の誕生を受けて、海外短期筋による売りが優勢となり、日経平均は大幅安となった。目先的にはいったん買い戻しなどで短期リバウンド局面が想定されるが、暴言に近いトランプ氏の政策の実現性を見極めなければならず、中長期の投資家は米政策に対する不透明感を理由にリスクオフの株売りを加速させる可能性が高い。

為替は円買いポジションが積み上がっているため、1ドル100円割れの水準で利益確定売りが出そうだが、海外勢による株売りが続けば、日本株は年内にかけて下値を拡げるだろう。日経平均は今年の下値めどである1万5000円水準を下回り、最大で1万4000円程度までの下げを想定している。

<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

もとより大統領が誰になろうとも、米連邦準備理事会(FRB)の正常化プロセスをめぐる環境が厳しいことには2017年も変わりなく、米金利先高観への期待がはく落する結果、過去2年半のドル高相場の本格的な調整(ドル安)が訪れると予想してきた。トランプ大統領誕生によって、このシナリオが加速した格好だ。そもそも民主・共和両党の候補がこぞって左傾化し、保護主義色を強めた今回の大統領選挙の勝者がドル高を容認するという想定自体に無理があり、たとえクリントン氏が勝利しても2017年のドル安/円高の公算が大きかった。

トランプ氏は選挙戦の最中で明示的にドル高を忌避する発言を繰り返し、そればかりかその原因である利上げ路線を推進してきたイエレンFRB議長を更迭する意思まで言及した経緯もある。基軸通貨国である米国の大統領が為替の方向感に言及すること自体、異例だが、おそらくトランプ氏ならばそれもあり得る。

米国の通貨・金融政策の意向が絶対的な影響力を持つ変動為替相場制というルールにおいて、そのようなトランプ氏の姿勢は未曽有の脅威と考えざるを得ない。言い換えれば、為替予想は各種ファンダメンタルズを分析するのではなく、トランプ氏の顔色をうかがうゲームになりかねないだろう。この点は「大統領候補」が「現職大統領」に替わったことでトランプ氏が少しでも「大人の対応」に傾斜することを願うしかない。

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏>

ドル/円相場の見通しを円高方向へ修正せざるを得ない。クリントン氏が勝利すれば来年上期にも底入れするとみていたが、少なくとも来年の秋口から年末あたりまではドル安/円高基調が続きそうだ。見通しの中心を96円付近とし、想定されるレンジの下限としては90円割れも検討したい。

市場は「トランプ大統領」の誕生を予想しておらず、グローバルになかなかリスクオンモードに戻れない。株価が不安定化した中では米連邦準備理事会(FRB)も動きづらく、これまで前提としていた米国の緩やかな利上げによるドル高シナリオをいったん白紙にして見直さざるを得ない。

最も懸念しているのは、FRBとホワイトハウスの間の溝が広がることだ。トランプ氏はイエレンFRB議長の再任を認めない、FRBの権限を削るなどと発言しており、両者が冷戦状態となるおそれもある。仮にFRBが12月に利上げをしたとしても、市場が素直にドル高要因と認知してあげられなくなる可能性がある。

<大和証券 チーフエコノミスト 永井靖敏氏>

共和党のトランプ氏の勝利を受け、東京市場は急激な円高・株安・債券高が進行した。トランプ氏の政策運営に対する不透明感が意識されたことで、予想されたリスクオフの動きだ。

マクロ経済の観点からみると、米大統領の交代で、直ぐに経済政策運営が大きく変わるものでもない。トランプ氏が突飛な政策・法律を打ち出しても、それを実行するには議会の承認が必要なためだ。例えば、トランプ氏は保護貿易的な政策に言及しているが、自由貿易を標榜する共和党の政策と矛盾することを踏まえると、議会の承認を得られにくいだろう。

市場が警戒するのは、リスクオフの動きが長引いた場合だ。1ドル90円に接近するような円高局面があるかもしれない。米連邦準備理事会(FRB)による12月追加利上げが見送られた場合、日銀の追加緩和を求める声も高まるだろう。

<岡三証券シニアストラテジスト 小川佳紀氏>

金融市場はトランプ氏の米大統領就任を完全には織り込んではいない。目先は波乱含みとなることが見込まれ、日本株はもう一段の下げも考えなければならない。投資家は不透明感を最も嫌う。12月の米利上げの可能性はなくなったとみているが、来年いつ利上げができるのか、米金融政策の不透明感が強まっている。

トランプ氏自身がドル安を志向しており、1ドル100円割れは時間の問題だろう。ただ閣僚人事次第では、過度な警戒が後退する可能性もある。

 11月9日、米大統領選挙は、共和党のトランプ候補が予想を覆して勝利を収める見通しとなった。トランプ候補は支持者を前に演説、民主党のクリントン候補から祝福の電話を受けたことを明らかにし、勝利宣言した。写真は都内の為替ディーリングルーム、9日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

バリュエーション面でみると、ブレグジット直後もそうだったが、日経平均のPER(株価収益率)で13倍台が下落時の水準として意識されやすい。足元のEPS(1株利益)を当てはめた場合、為替の動向にもよるが、日経平均の下値1万5500円近辺が下値のめどとなるとみている。

*情報を更新しました。

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