[ロンドン 25日 ロイター] - トルコリラは今年初め以降、対ドルで既に20%下落している。しかし金融市場の各種指標からすると、国内政治情勢や膨大な赤字、2桁の物価上昇率などに悩まされているリラはさらなる値下がりが見込まれる。
このため当局は、23日の300ベーシスポイント(bp)の緊急利上げ以外の追加的対応を迫られる可能性がある。
以下に現在のリラ安の歴史的な位置づけや、今後予想される事態などをまとめた。
◎値下がりの度合い
これまでリラが最も大きく落ち込んだのは、2008─09年の世界金融危機が一番深刻化した約6週間で、下落率は36%に達した。今回の下げ局面は、事実上の始まりだった昨年9月からの下落率が31%だ。
今年末まで軟調が続いた場合、年間ベースでは6年連続の下げとなる。またリラは既に、実質実効レートで見て主要新興国通貨で最も過小評価されている。
リラの実質実効レートの過去最安値は2001年10月に記録。ルネッサンス・キャピタルによると、これを現在の水準に直すと1ドル=5.16リラに相当する。23日の緊急利上げ前には一時5リラに迫る水準までリラ安が進んでおり、ルネッサンス・キャピタルのチーフエコノミスト、チャールズ・ロバートソン氏は「トルコが成長と銀行の危機に見舞われれば、(5.16リラ)に達してもおかしくないとわれわれは考えている」と述べた。
◎先安観
先物やオプション、デリバティブの市場は、リラの先行きについてなお警戒信号を発し続けている。
ボラティリティのオプションを利用してリラの変動をヘッジするコストは25日、緊急利上げ前につけた9年ぶりの高水準に戻った。これは、上下両方向とはいえ大幅な値動きにつながる材料だ。
中期的な相場見通しを占う1年物リスクリバーサルは、昨年1月以降で最高の水準に接近。3カ月物リスクリバーサルも同様の緊迫感を示し、1年物フォワードレートは、足元のドル/リラのスポット相場に対して15%のプレミアムが乗せられている。
◎再利上げ
トルコの金利市場が発信しているシグナルを、正確に読み取るのは難しい。それでもこの先中央銀行は23日のような規模ではなくても、少なくともあと1回利上げするという構図が浮かび上がる。
3カ月先スタートのスワップ金利は17.15%と、中銀が23日に引き上げた上限政策金利の後期流動性窓口金利を若干上回っている。スタンダード・ライフ・アバディーンのキーラン・カーティス氏は「市場は今後3カ月でさらに50bpの利上げがあると見込んでいるようだ」と話した。
実現すれば市場は好感するだろうが、まだ織り込まれていないように見える措置は、3種類の政策金利の一本化だ。ずっと前から一本化の取り組みは話題になっており、成功すれば中銀の市場コントロールがずっと容易になる。
◎ドル調達コスト
リラ安は、トルコの金融機関のドル調達状況にまで影響が及んでいる。ドル調達コストの目安となるクロスカレンシー・ベーシス・スワップの1年物は21日の週に過去最高に跳ね上がった。5月初め以降で300bp強も上昇し、急いでドル資金を確保する動きが広がった様子が分かる。
トルコの金融機関がドル調達に支払うプレミアムが増大するとともに、リラの下げ圧力は強まることになる。
(Karin Strohecker、Marc Jones記者)
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」