August 22, 2018 / 2:27 AM / a month ago

コラム:トルコ危機、胸に刻むべき「新興国ドミノ」

[ロンドン 20日 ロイター] - トルコは、現在新興国市場全体に広がっている混乱の震源地になっている。ただしこれは問題の原因ではなく、単に現象を表しているにすぎない。

 8月20日、トルコは、現在新興国市場全体に広がっている混乱の震源地になっている。ただしこれは問題の原因ではなく、単に現象を表しているにすぎない。写真はイスタンブールで撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)

投資家としては、トルコが直面する危機は他の新興国にも容易かつ素早く波及しかねないのだと肝に銘じておく方が、万事うまく行動できるだろう。

新興国に対する市場心理がこれ以上ないほど弱気に傾いている状況で、高水準のドル建て債務と大幅な経常赤字、海外資金への依存が引き金となって投資家が一斉に資金を引き揚げているのだと想像するのはそれほど難しくない。

自分たちの年金資金を新興国市場で運用する個人投資家にとっては、現実の厳しさを突きつけられる形になる。彼らは10%かそれ以上のリターンを好ましく思っていたかもしれない。しかし今さら当たり前のことを言うようだが、新興国市場の利回りがこれほど高いのはそれなりの理由あるのだ。

では平均的な投資家は一体どの程度、数え方によっては数十にもなる新興国(そこに年金資金が投じられている)が持つ脆弱性を認識しているのか。またリスクに関して十分警告をもらっているのだろうか。

シティが動向を追ってきた478種類の新興国社債のうち、年初来でスプレッドが縮小したのはたった2種類で、残りは全て拡大した。シティの新興国ソブリン債指数の中で、プラスのリターンを確保しているのはモンゴルとベリーズしかない。

シティは17日のノートで「これらの債券を多くの投資家がオーバーウエートにしていたとは聞いていない」と述べた。

一部のアナリストは、トルコからの危機の伝染は限定的になるはずだと主張する。世界の合計国内総生産(GDP)に占めるトルコの割合はわずか1%。欧州連合(EU)の銀行のトルコに対するエクスポージャー(貸出債権)は、EUのGDPの1%より少ない。米銀の同エクスポージャーは180億ドルで、総資産の0.1%にとどまる。

さらに新興国全体に目を向ければ、以前より外貨準備は増え、為替レートは柔軟性が高まり、銀行のレバレッジ比率は低下しているほか、物価上昇率はかつてないほど低い。つまりこれらの国の経済と財政の足腰はより頑健になっていることが分かる。

オックスフォード・エコノミクスによると、新興国市場の中でソブリン危機の「無視できない」リスクを抱えている割合は現在約33%と、2008年の65%や「テーパータントラム」があった13年の72%を下回っている。

とはいえ新興国の経済と金融市場は存続や発展を目指す上でなお大きくドルに依存しており、世界的なドルの流動性は、米連邦準備理事会(FRB)の利上げとバランスシート圧縮に伴って縮小を続けている。だから他のドミノが倒れてもおかしくない。

<急増するドル建て債務>

国際決済銀行(BIS)は先月公表したワーキングペーパーで、新興国全体でドル建て債務が最近急増している実態と、それが新興国市場にもたらす危険に光を当てた。

新興国の発行体によるドル建て起債は急拡大し、昨年末時点で年間17%の増加ペースを記録。特に中国やブラジル、チリ、トルコといった国で伸びている。

これらの国のドル建て起債規模は過去最高で、2000年代初め以降の増加には目を見張るものがある。BISのワーキングペーパーで取り上げた12の新興国のうち、現在ドル建て起債が過去最高に達していないのはロシアだけだ。

銀行への依存を減らして国際金融資本市場での資金調達を増やすことは、借り手を米長期金利やドルの高騰、または市場のボラティリティ増大に対してより脆弱な立場に置いてしまう。

BISは「しっぺ返しをもたらすきっかけとなりそうな要素はいくつかあるが、重要な点はリスク評価が突然変化することにある」と指摘した。

新興国に対する投資家の市場心理を左右する大きな材料はドルだ、とBISはみている。ドルが弱くなればリスク許容度が高まり、ドル高局面はその反対になる。

BISが指摘するように、新興国の非金融部門の借り手向けドル建て与信額は08年以降でほぼ倍増し、3兆7000億ドルになった。そしてドルは、特に新興国通貨に対して強くなり続けている。

「長期投資家は金融市場の安定に影響力を行使し、損失を吸収する役割を持つと考えられてきた。しかしわれわれは、そうした投資家の損失引き受け意欲が限られたもので、彼らが売りの波に合流する場合もあると時々気づかされる」という。

売りは既に始まっている。MSCIの新興国株指数は先週、1月の高値から20%下がって弱気相場に突入した。MSCI新興国通貨指数はこの1年で最も低水準となり、4月以降約10%下落した。

トルコに関する投資家のリスク評価は突然一変し、その波紋の拡大が感じられつつある。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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8月20日、トルコは、現在新興国市場全体に広がっている混乱の震源地になっている。ただしこれは問題の原因ではなく、単に現象を表しているにすぎない。写真はトルコリラ紙幣。2014年撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)

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