May 22, 2019 / 3:33 AM / 4 months ago

アングル:リラ安に苦しむトルコ、流れを「反転」させる一手は

[ロンドン 21日 ロイター] - トルコは、過去2年間で40%超も値下がりした通貨リラの下支えに苦戦し、リラ安が止まらずに市場からの信頼が失われ、対外支払い問題が深刻化するリスクに直面している。外貨準備が少ない中で、こうした流れを反転させるために同国が打ち出せる手段は何があるのか、投資家の間でも探る動きが続く。

5月21日、トルコは、過去2年間で40%超も値下がりした通貨リラの下支えに苦戦し、リラ安が止まらずに市場からの信頼が失われ、対外支払い問題が深刻化するリスクに直面している。写真はリラ紙幣。イスタンブールで2018年8月撮影(2019年 ロイター/Murad Sezer)

もしトルコが全面的な危機に陥って国際金融資本市場から締め出されることになれば、他の方法で400億─900億ドルの資金を確保しないと、何らかの形でデフォルト(債務不履行)が起きる、とアナリストはみている。

外国投資家が想定したいくつかの今後のシナリオを以下に示す。

<市場で時間稼ぎ>

トルコの借り入れコストは跳ね上がっているとはいえ、まだ国際金融資本市場から出て行く必要があるほどの水準にはなっていない。債務の対国内総生産(GDP)比は年末までに約35%に上がる見込みだが、主要新興国の中ではまだ比較的低く、ある程度キャッシュを確保したり、目減りした外貨準備を補充できる。

政府は既に昨年10月以降、外貨建てで6回起債しており、総額は94億ドルに達した。今年については当初予定借入額80億ドルの8割が調達済みだ。

ただもっと資金が必要になるかもしれず、経済が非常に緊迫している局面での起債はコストが高くなり、将来の過重な返済負担が生じかねない。1月に発行した10年債(20億ドル)の利回りも7.68%と、1年前の2倍近くの水準だった。同債の足元の利回りは8%を上回っている。

債券資本市場バンカーやファンドマネジャーは、トルコが今から新たに起債する場合、40─60ベーシスポイント(bp)のプレミアムを乗せなければならないと見込む。

一方で返済コストは財政を一段と圧迫している。ムーディーズの試算では、トルコ政府の名目ベースの利払い費用は昨年30.4%、今年第1・四半期に約50%も増加した。リラ安と返済額自体が増えたことが原因だ。2017年に5.9%だった利払い費の歳入に占める割合は、8.2%前後まで高まると予想されている。

また市場での借り入れは対外赤字を幾分穴埋めしてくれるものの、トルコへのプレッシャーが高まれば、状況悪化に歯止めをかけるには力不足だろう。

<IMF>

トルコは国際通貨基金(IMF)に支援を求めることができるが、エルドアン大統領はIMFとの取り決めに応じるのを強く拒否している。

過去50年間を見れば、トルコはさまざまな規模で20回近く、IMFから金融支援を受け、それと引き換えに引き締め政策を義務付けられてきた。直近では08年にIMFのプログラムを終了し、苦い記憶として残る。

それでもIMFほど強力で、信頼できるチェック機能を有し、外国投資家に関与しても大丈夫だと安心感を与えてくれる存在はほとんど見当たらない。

ムーディーズのソブリン・リスク・マネジングディレクター、イブ・レメイ氏は、エルドアン氏がIMFを避けようとすれば、経済立て直しは簡単にはいかないし、立て直せないと警告する。

ウニクレディトは今年後半にIMFとの合意がまとまると予想し、ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者も、IMFが救済に乗り出す確率は高まってきているとの見方を示した。

<友好国からの援助>

ペルシャ湾岸諸国のうちトルコと最も緊密なのはカタールだ。昨年夏のトルコ通貨危機後に、カタールはリラ支援のための30億ドルの通貨スワップを含めた総額150億ドルの経済支援をすると表明してくれた。

ところが複数の関係者の話では、実際にはトルコとカタールの協議は進展しておらず、トルコが最近になって再び資金面の問題が出てきてから、カタールは支援を一切公式に発表していない。

他の湾岸諸国からの援助はおぼつかない。17年にサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)がカタールへの制裁を開始した際、トルコはカタール側についたからだ。

一部では、トルコの危機が貿易や銀行を経由して伝播するのを避けたい欧州連合(EU)諸国が個別に、あるいはEUとして手を差し伸べるのではないかとの観測が浮上している。もっともギリシャ支援のように欧州が大々的に関与する際にはIMFのプログラムと連動しているし、欧州がトルコに大規模な金融支援をする政治的な機運も乏しい。

そうなると残るはロシアと中国で、両国とも「新開発銀行(BRICS銀行)」のメンバーだ。しかし同行には授権資本が1000億ドルしかなく、あくまで融資はインフラ整備が目的で、危機支援ではない。

<資本規制>

どんな国でも資本規制は導入したくないが、危機の際には導入例が多い。さらにトルコは、国内銀行が3月に外銀とのリラ取引を突然一時停止した時点で、資本規制に片足を突っ込んだ形になっている。ドルの送金にも制限を設けており、金融市場は追加的な措置が出てくることを織り込んでいるもようだ。トルコの銀行の株価純資産倍率(PBR)は、ギリシャが経済危機で資本規制を導入した局面における同国の銀行のPBR並みに低くなっている。トルコの国債と銀行債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドは、何度もデフォルトをしてきたアルゼンチンに迫るほど拡大しつつある。

資本規制はコストも伴う。大がかりな規制を導入すれば、外国からの投資が止まり、政府は歳出削減を迫られ、景気後退が一段とひどくなる恐れが出てくる。

<中銀の対応>

トルコは、2014年の金融危機を物価目標厳格化によって和らげることに成功したロシアの先例を踏襲することもできる。

トルコの中央銀行が同じように動こうとするなら、政策運営を引き締め方向に転じなければならない。ただしこれは、借り入れコスト引き下げを要求し続けているエルドアン氏から金融政策の主導権を奪う必要があり、険しい道だと証明されている。

ピクテ・アセット・マネジメントのシニアエコノミスト、ニコライ・マルコフ氏は「今の危機に対処する唯一の方法は、利上げでインフレと闘う決意を示し、物価上昇率を目標圏内に鈍化させて、リラ安を抑えることだ」と指摘した。

中銀は物価が予想外に高騰すれば利上げを排除しないと表明しているが、21日にはスワップ金利を引き下げ、行動と発言に矛盾が見られる。

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