August 13, 2018 / 3:44 AM / 2 days ago

トルコリラ急落と新興国リスク:識者はこうみる

[東京 13日 ロイター] - トルコリラは早朝に7.24リラまで売られ、過去最安値を更新。一方、南アフリカランドは対ドルで7%超下落し、2年ぶりの安値を付けている。市場関係者の見方は以下の通り。

<SMBC日興証券 新興国担当シニアエコノミスト 平山広太氏>

トルコリラが通貨危機に直面している。年初来の対ドル下落率は40%超と、今年4 月に通貨危機に見舞われて国際通貨基金(IMF)に救援を仰がざるを得なくなったアルゼンチンペソより状況は深刻である。

通貨危機は将来を著しく不確実な状況に突き落とす。外貨建て対外債務残高が膨張して債務超過に陥るトルコ企業(金融機関を含む)が続出すれば、資金を貸し付けている国際金融機関の業績悪化懸念が広がり、グローバルな金融不安を引き起こす可能性も否定できない。

トルコが通貨危機から脱するには、中銀が厳しい金融引き締めを実施する必要がある。ただ、金融政策が信認を多少取り戻したところで、劣悪な対外バランスから生じる通貨安圧力は消えない。この圧力に対抗すべき海外からの資金流入もままならないとすれば、リラの地合いが劇的に好転すると期待するのは行き過ぎだ。

資本規制は劇的な効果をもたらすが、あくまでも一時的なものに過ぎない。海外からトルコへの資金流入を著しく細める公算が大きく、劣悪な対外バランスを支えることは不可能となり、通貨価値は急落するだろう。

対外バランスの抜本的対処を怠った状態で資本規制を実施すれば、結局それ以前よりひどい状況に落ち込むことも覚悟しなければならない。

ロシアや中国がトルコに救いの手を差し伸べる可能性もないとは言い切れない。トルコの対外債務残高は3月末時点で4667億ドル、通貨当局の準備資産は1103億ドルである。準備資産で補いきれない対外債務残高は約3500億ドルだが、例えばロシアと中国が通貨スワップ協定を締結して合計1000億ドル程度の信用枠を提供すれば、当面の対外債務支払いに関する不確実性は大幅に減じる。

もちろん、北大西洋条約機構(NATO)を離脱してロシアや中国の側に加わる選択を米国が容認するとは考え難い。それでもトルコの決意が固い場合、軍事的な緊張が出現する事態も念頭に置くべきだろう。

<野村証券 クオンツ・ストラテジスト 高田 将成氏>

7月下旬から8月にかけてボラティリティーが低下。リスクパリティやCTA(商品投資顧問業者)などが、ファンダメンタルズとは関係なく、ボラの低さに賭ける形で株買いをグローバルに積み上げていた。

足元で、VIX指数.VIXなどは今年2月に比べて、それほど上昇しているわけではないが、何かのきっかけでポジションが巻き戻されやすい状況にあった。8月にはボラティリティーが上昇すると待ち構えていたヘッジファンドもいたようだ。

今年2月と比べると、ポジションがそれほど膨らんでいるわけではなく、リスクオフは限定的となる可能性が大きい。しかし、警戒しなくてはならないのは第2波だ。足元でブラックスワン指数と呼ばれるスキュー.SKEWXが上昇するなど、8月下旬にはショックの第2波が発生しやすい季節性がある。

次のショック発生源がトルコかどうかわからないが、いったん安心感が広がった後で、再びショックがあると、ダウンサイドリスクに備えたポジションがはじける形でリスクオフの動きが大きくなる可能性には警戒が必要だ。

<大和証券 シニアストラテジスト 石黒英之氏>

リーマン・ショック以降、新興国はドル建て債務を積み上げてきた。ドル高・新興国通貨安となると、ドル建て債務が雪だるま式に膨らむ。ファンダメンタルズからいえば新興国は悪い状況ではないが、『アキレス腱』を投機筋に突かれている印象だ。

市場の反応も過剰だ。トルコ向け債権を最も多く抱えているとされるスペインであっても、総与信額に占めるトルコの割合は4%台にすぎない。トルコリラ安で市場が不安定化し、欧州の金融システムにつながるというのは、行き過ぎた見方といえる。

もっとも、通貨安が進行しても利上げをしない状況を、トルコのエルドアン大統領は作り上げており、ある意味でトルコは「狙われやすい国」となっている。トルコ当局の政策を催促する相場になりつつあるとみることもできる。

今年はヘッジファンドのパフォーマンスが非常に悪い。ヘッジファンドからみれば今の局面はパフォーマンスを挽回する大きなチャンス。マーケットの動きも需給主導の側面が大きい。

市場沈静化に向けた措置など、トルコ当局が行動計画を示せば、いったんは巻き戻しが起きやすい。ただ計画が実効性を持たない計画だと受け止められれば、再び仕掛けられる形となるだろう。

<トウキョウフォレックス上田ハーロー 営業推進室長 阪井勇蔵氏>

外為市場では、日経平均の2万2000円割れや、南アランドが珍しくアジア時間に急落したことをきっかけに、クロス円主導の円高が進み、ドル/円は1カ月半ぶりの安値圏まで下落した。

朝方の取引では、トルコのアルバイラク財務相が市場の懸念緩和に向けた行動計画を策定したことや、銀行監督当局が国内銀行のスワップ取引を制限すると発表したことで、トルコリラが、過去最安値からいったんは反発したものの、再び売り込まれた。

通貨危機に陥る局面に差し掛かっているリラをはじめ、新興国通貨波乱の根本的な要因は「トランプリスク」であり、現在の混乱が一過性ではすまない可能性があるとみている。

欧州の玄関口でもあるトルコとの政治通商面での対立や、トランプ大統領の就任以来激しさを増す米国とイランとの対立など、トランプ氏は経済面のみならず、政治・安全保障面で不確実性を高めている。

トランプリスクにさらされた金融市場では、全般にリスク回避が広がり、中国の次はトルコ、そして南アフリカと、資本流出や金融収縮が数珠繋ぎで起こりやすい。さらに、こうした動きはAI(人工知能)取引によって誇張され、激しさを伴うものになりやすい。

*内容を追加しました。

 8月13日、トルコリラは早朝に7.24リラまで売られ、過去最安値を更新。一方、南アフリカランドは対ドルで7%超下落し、2年ぶりの安値を付けている。写真はトルコリラ紙幣。イスタンブールで昨年10月撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below