December 20, 2012 / 4:52 AM / 7 years ago

日銀が追加緩和を決定:識者はこうみる

[東京 20日 ロイター] 日銀は19、20日に開いた金融政策決定会合で、資産買い入れ基金を10兆円増額する追加緩和策を全員一致で決定。基金の規模は2013年末に101兆円となる見通しで、100兆円の大台を突破する。

11月20日、日銀は、資産買い入れ基金を10兆円増額する追加緩和策を全員一致で決定。写真は11月、都内で撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は0─0.1%程度に据え置く。また、今年2月に導入した物価上昇率1%を目指す「中長期的な物価安定の目途」について、次回会合で点検を行うことを決めた。市場関係者のコメントは以下の通り。

●1月に物価目標の結論、具体的な行動を示す必要

<大和証券 シニアエコノミスト 野口麻衣子氏>

白川方明日銀総裁は、景気の下振れリスクを強調。2%の物価目標については1月会合で結論を出すと述べた。1月の会合は、物価目標の達成に向けて具体的な行動を示す必要があり、政治からの意向を踏まえながら、もう一段の緩和策が打ち出される可能性があるとみている。

日銀は9月、10月、12月と4カ月で3回の緩和に踏み切った。何もしないという選択肢が許されない状況に追い込まれている日銀は、苦しい立場にある印象だ。

石田浩二委員が付利金利撤廃の議論を提案したことについて、日銀総裁は金利水準の一段の低下を促し、為替に働きかける観点があったと説明している。付利撤廃は効果が限定的との見方もあるが、会合で議論がしっかりと出てきたことで、市場ではいつあっても不思議ではないという意識を持たざるを得ない。

会見内容は十分に想定されたことで、円債相場への影響はあまりないだろう。

●インフレターゲット導入に道筋ついている印象

<セントラル短資 執行役員総合企画部長 金武審祐氏>

安倍晋三自民党総裁が日銀に対して示した要求は、衆院選終盤で、インフレターゲット2%を導入し、それに向けての無制限の資金供給、さらにアコード(政府・日銀間の政策協定)を結びたいという3点にほぼ絞られていた。

今回の日銀会合で、この3点の方向性を示した印象を持つ。無制限の資金供給に対しては、基金の増額、新貸出制度を決めた。また、今後1年あまりで50兆円強の大規模な資金供給を行うとしており、マーケットをかなり意識している。インフレターゲット導入に関しては、1月会合で検討するということは、道筋がついている感じがする。さらにアコードも日銀は政府と緊密に連携をとっていく姿勢を出している。

国民の支持を受け衆院選で圧勝した安倍自民党に配慮した感じは受ける。

●受け身の印象、「次元の違う政策」必要

<みずほ証券 FXストラテジスト 鈴木健吾氏>

特に目立った発言はなかった。今回の決定内容はほぼ市場予想通りの結果で、白川方明総裁の発言内容も市場の想定からそれほど外れてない。

白川総裁は金融緩和の必要性は認識しているものの、デフレと円高克服に向けて新しい手段をどんどんアグレッシブに試していくというより、新政権からの要望や米連邦準備理事会(FRB)との釣り合いを意識するような、どちらかというと受け身の印象を受ける。

安倍自民党総裁が言う「次元が違う政策」に対する市場の期待は非常に強い。緩和についてはある程度評価できるものの、次元の違うところを自ら模索して突っ込んでいくことが必要だ。

●緩和強化は不可避、ドル84円が新支持線

<ブラウン・ブラザーズ・ハリマン シニア通貨ストラテジスト 村田雅志氏>

今回の日銀会合では「中長期的な物価安定の目途」1%を引き上げることはなかったが、次回の会合で「検討を行う」とされ、新政権が主張する大胆な金融緩和について日銀は現時点で否定していない。このため、ドル/円は乱高下したが、底堅く推移している。

声明文では次回会合で物価目標を引き上げる可能性を否定していないが、白川方明総裁がどうコメントするか注目している。ただ、声明文では「中長期的な物価安定の目途」について、「原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととしている」と記され、「安倍自民党総裁が首相になるから物価目標の引き上げを検討するのではない」との思いがにじむ。

ただ、どんなにロジックを駆使しても、日銀は今後も緩和を強めざるを得ないだろうという見方がマーケットの大勢を占める。緩和期待は続くだろう。ドル/円は乱高下したが、84円割れの時間帯は短かった。84円ちょうどが新たなサポートラインになりつつある状況が確認できた。

●「物価安定の目途」見直しなど1月会合に期待感残す

<岡三証券 債券シニア・ストラテジスト 鈴木誠氏>

資産買い入れ基金の10兆円増額は予想の範囲内だ。日銀は足元の円安・株高という歓迎すべきマーケットの流れを断ちきらないように配慮したとみられる。インフレターゲットについては、すぐに決められるものではなく、組閣など政治の方向性を見極めたうえで検討するのだろう。市場にとっては1月の決定会合に向けて期待感を残した格好となり、目先的なスピード調整はあるだろうが、出尽くし感は広がらないとみている。

●時期的には意外感、円安・株高の勢い落さぬ方が良いとの判断も

<三井住友海上あいおい生命 経理財務部部長 堀川真一氏>

具体的な追加緩和は安倍政権発足後の1月になるとの観測もあったただけに、時期的には意外感があった。内容そのものに関しては、資産買入等の基金しかないと考えられていたうえ、金額も10兆円程度と予想の範囲内と言える。

今回、あえて追加緩和に踏み切ったのは、円安・株高の勢いを落さないようにした方が良いという判断も働いたのではないか。今回緩和を見送れば、政治的な圧力が強まりかねない。早めに動いた方が得策と、日銀が考えたとしてもおかしくない。

●来年前半の国債買入鈍化、月々のフロー重視せず

<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 債券ストラテジスト 稲留克俊氏>

日銀が金融政策決定会合で決定した資産買入等基金の10兆円拡大は予想通り。予想と違ったのは、長期国債買入を増額した5兆円の積み上げを13年6月末と13年12月末に2.5兆円ずつ分散したことだ。この結果、来年前半の買入ペースが鈍化する一方、年後半に買入が膨らむことになる。日銀は月々の国債フローを重視していないのだろう。国債需給の観点から言えば、いびつでマーケットの認識とずれがある。

また、日銀は「物価安定の目途」見直しに着手することを決めたが、具体的な内容に触れていない。白川方明総裁の会見など日銀サイドからの情報発信を待ちたい。

今回の緩和は事前予想を大きく外れた内容でなかったため、債券市場は落ち着いて反応した。今後の影響も限られるだろう。

●インフレ目標導入などへの期待感が継続

<マネックス証券 チーフ・エコノミスト 村上 尚己氏 >

基金の10兆円増加は、ほぼ市場予想通りだ。12月日銀短観が悪かったことで、景気悪化に対応したということなのだろう。「物価安定の目途」の見直しに着手するとしており、インフレ目標の導入などはこれから議論するということになるだろうから、材料出尽くし感が広がらず、期待感は継続するだろう。来年就任する新執行部の顔触れとお手並みを拝見するということになりそうだ。

●予想通りだが、海外勢のポジション調整売り誘発

<野村証券 金融市場調査部 チーフ為替ストラテジスト 池田雄之輔氏>

長期国債と国庫短期証券の買い入れ枠をそれぞれ5兆円ずつ増額する措置はほぼ市場の予想通りだった。為替市場ではいったんドル買い/円売りが進行したが、その直後には海外勢を中心とする、ポジション調整のドル売り/円買いが活発化し、いったん84円割れの水準までドルが弱含んだ。

今年中の日銀の追加緩和については材料出尽くし感があるうえ、きょう予定される白川日銀総裁の記者会見は、内容次第ではドル安/円高リスクがあるとみる短期筋が多かったようだ。会見前に早めに円売りポジションを手じまい、今年のブックを閉じる海外勢の動きが目立っていた。

●1月会合で本気度が試される

<SMBC日興証券 債券ストラテジスト 岩下真理氏>

基金による長短国債買い増しの割り振りについては、来年1─6月に実施ということで、来年上期の買い入れペースの鈍化を補てんするような形の増額となった。

ただ、今回緩和に踏み切ったために、今回で終われるのかということになる。やはりゼロ回答はできず、理解度を示すという意味で基金の増額決定を最終的には政治的な判断でしたもようだ。1月日銀会合では、物価部分のことだけで済まされないことがある程度予想されるので、そのときに本気度が試される。9月、10月と2回連続で緩和したことが異例と言われたが、この流れだと、来月も緩和を実施する可能性があり得る印象を持った。

円債相場への影響は、理解度を示す形で緩和を決定したので、失望売りにはならなかったが、いったんの材料出尽くしにはなりそうだ。

*コメントをさらに追加して再送します。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below