February 28, 2014 / 5:37 AM / 6 years ago

コラム:TPP「漂流」ならアベノミクス信認低下も

田巻 一彦

2月28日、環太平洋連携協定(TPP)の枠組み自体が漂流すれば、アベノミクスへの信認低下も。写真は昨年3月、TPP交渉参加国を示した地図の隣で記者会見する安倍晋三首相(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 28日] -環太平洋連携協定(TPP)交渉が難航している。4月に予定されているオバマ米大統領の訪日までに日米間で大枠の合意が形成されない場合、TPPの枠組み自体が漂流しかねないリスクが高まる。

TPPの効力発効により、国内の岩盤規制に風穴が開くというルートで期待されていた規制緩和も望み薄となる。その結果、アベノミクス全体の信認が落ち、安倍晋三首相のリーダーシップに対し、海外勢を含めたマーケットの見方が厳しくなる可能性も出てくる。TPP交渉の帰すうは、2014年の展開を占う上で大きな分岐点になりそうだ。

<合意メド見えないTPP>

シンガポールで今月25日まで開催されていた12カ国による閣僚会合は大筋合意できず、最終合意のメドも示せないまま閉幕した。

最も大きな障害は、関税分野における各国の意見の隔たりの大きさだ。中でも日米両国間の意見対立の深刻さが、TPP全体の合意が「困難」との観測を生む要因になっている。

このままTPP交渉が漂流するのではないか──。そのような思惑が、通商交渉で受け身に回りがちだった中国の立場を強める効果をもたらしているという意見も、通商交渉の現場から漏れているという。

<FTAで大変化したメキシコ>

関税障壁が取り払われると、経済の様子が劇的に変わるという実例がある。メキシコだ。北米自由貿易協定(NAFTA)を含め44カ国と自由貿易協定(FTA)を締結し、それに目を付けた海外からの直接投資を呼び込んでいる。

その結果、メキシコの輸出額は2012年に03年比2.25倍となり、貿易赤字は03年の57億ドルから12年に4600万ドルへと急減している。

日本からの直接投資も、自動車を中心に12年に前年比プラス92.3%の17.5億ドルと急増している。

TPPには同様の「効果」が期待できる。製造業を中心に日本の産業にとって、劇的な変化が起きると予想される。TPPがアベノミクスにとって、大きな起爆剤になることは間違いない。

というよりも、もし、6月の新しい成長戦略取りまとめまでにTPPが合意していないとすると、日本の産業の競争力を強化するという点で、軸になる存在がなくなる。

<大きいTPPルートの規制緩和効果>

TPPの仕組みに詳しいある外資系金融機関の関係者は「安倍政権は、これまで岩盤規制に踏み込めずに来たが、TPPができ上がれば、その効果で自動的に規制が緩和される分野が大幅に広がると期待されてきた」と話す。

しかし、TPPが宙に浮けば「国内の規制緩和は、進まないだろうというメッセージを海外勢に発信することになる」とみている。

別の外資系金融機関の関係者は「6月の追加の成長戦略への期待度は、初めから低い。そこに日本が決断できずにTPPの漂流化が明確になれば、アベノミクスや安倍首相への残された期待感もはく落してしまうだろう」と懸念を示す。

<日米関係にも陰を差すTPP>

安倍首相は27日の衆院予算委で、TPP交渉のデッドラインに関連し「あらかじめ期限を切ることは、自らの手を縛り、逆に足元を見られる危険性がある」と述べ、一部で浮上している4月のオバマ訪米前の決着論をけん制した。

だが、現実問題として、オバマ大統領の訪日前にTPP問題の障害となっている日米間の関税をめぐる対立が氷解していなければ、首脳会談で確認し合う「成果」がなく、米側の訪日への熱意を弱めることになるだろう。

安倍政権が最も重視する二国間関係と言ってきた「日米関係」が、オバマ訪日前にぎくしゃくしていることを印象づけるのは、日本の外交にとって大きなマイナスとなる。

4月には消費増税も実施され、日本経済がそのマイナスの影響を吸収できるのか、内外の市場関係者から注目されている。同時期に日米関係が動揺し、安倍首相の指導力に陰りが見えることになれば、それは安倍政権にとって大きな打撃になってしまう。

今年4月を順調に乗り切れるかどうかが、長期政権の可能性を左右することになるだろう。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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