for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

焦点:中国監視船は「第2の海軍」か、規模拡大で近隣国の脅威に

[北京/香港 6日 ロイター] -フィリピン漁船に対する妨害活動、日本の巡視船とのにらみ合い──。規模の拡大が続く中国の海洋監視船はアジアの係争海域で、その存在感を日増しに強めている。

3月6日、中国が東・南シナ海で領有権を主張する島や岩礁周辺などに展開する海洋監視船は、その存在感を日増しに強めている。写真は2012年10月、東シナ海を航行する中国の海洋監視船。海上保安庁提供(2014年 ロイター)

監視船は最近再編された中国の海洋警備・取り締まりを行う「中国海警局」の船舶で、東・南シナ海で領有権を主張する島や岩礁周辺などに展開。軍艦が持つ武器は配備されていないことから、衝突によって制御不能になる事態に陥るリスクは低いものの、領有権主張の強力なメッセージとなっている。

海警局が所属するのは、軍ではなく国家海洋局だ。ただ、米海軍関係者や専門家らは、海警局は人民解放軍(PLA)と連携して活動しているとの見方を示している。また、専門家からは、海警局の活動は、中国の国防費の実態を把握するのを困難にしている一例だとの声も聞こえる。

中国政府は5日、2014年の国防予算は12.2%増の1315億ドルと発表。ただ、予算外での支出も多いとみられ、専門家は実際の規模は2000億ドル近くと見込んでいる。中国の国防費は米国(米国防総省の2014年度基本予算は5268億ドル)に次ぐ世界2位の規模だが、軍の退役艦を含む監視船の予算や、海洋警備全体にかかる予算は明らかになっていない。

李克強首相は、5日開幕した中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、国境・領海・領空防衛の強化を強調したが、監視船の増強計画やその活動などに関する発言はなかった。

米ヘリテージ財団のディーン・チェン氏は、「予算拡大や重要度の高まりを受け、(中国の)海洋監視部隊は過去数年、新たな艦船を次々に配備している」と指摘。「その規模は大きく、敵対国にとっては脅威になり得る」と述べた。

<放水事件>

中国が領有権の主張を強める中、同国は東シナ海では尖閣諸島(中国名:釣魚島)をめぐり日本と対立。石油・天然ガス資源が豊富とされる南シナ海では、約9割の海域の領有権を主張し、ベトナムやフィリピンなどと対立している。

領有権を主張する海域を守る活動は、海警局の監視船が先頭に立って行い、中国海軍は中国近海ではなく遠隔地での活動に焦点を当てている。中国メディアによると、監視船は放水砲などを備えているという。

監視船の活動をめぐっては、対立国から反発の声が上がっており、フィリピン政府は、同国の漁船が1月17日、南シナ海で監視船から放水を受けたと抗議。これに対し、中国側は「挑発的な」行動に必要な対応を取る権利があるとして抗議を受け入れなかった。

アジアの海軍関係者の1人は、「われわれが目にしている状況は、中国海軍が活動領域を広げている一方、監視船が係争海域の活動に専念していることだ」と指摘。「監視船が中国の領有権主張の象徴となっており、監視船の動きを厳重に見張っている」と語った。

<装備増強>

中国政府は昨年の全人代で、海洋関連4機関の統合を決定。海監総隊(海監)や漁業監視団、海上警備部隊などの艦船が、国家海洋局の元に発足した海警局に再編された。

中国の海洋権益の保護などに当たる国家海洋局は比較的新しい組織で、日本の防衛省防衛研究所の研究では、同局の組織形態や権限関係は複雑で不透明な点が多いとされている。

英国際戦略研究所(IISS)の報告では、海警局は計370隻を保有。人民日報が所有するタブロイド紙、グローバル・タイムズは、海監船隊だけで200隻以上あるとし、航空機も9機配備されており、8400人が所属していると伝えている。新華社によると、今夏までに監視船36隻を新たに導入するという。

監視船の多くは、中国海軍の退役艦で、2012年に中国メディアは、海軍の駆逐艦2隻が海洋局に引き渡されたと報道。また先月には中国紙が、中国は世界最大の1万トン級の監視船を建造していると報じた。同紙は就役する時期については触れなかった。

国家海洋局は先月、5000トン級の監視船をベトナムと台湾も領有権を主張する南シナ海の西沙(パラセル)諸島の永興島に常駐させる方針を発表した。

東・南シナ海での監視船の活動について、米太平洋艦隊の情報戦部門を統括するジェームズ・ファネル海軍大佐は先月、「敵対的だ。近隣国に嫌がらせをしている」と批判。「中国軍の幹部から、海軍と海警局は連携していないとの話を多く耳にする。しかし、それは全くのうそだ。政府からの指示を受け、慎重に連携がとられている」と語った。

(Megha Rajagopalan記者 Greg Torode記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up