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焦点:EU離脱後の治安協力どうなる、襲撃事件で英国が懸念
2017年3月24日 / 07:35 / 8ヶ月後

焦点:EU離脱後の治安協力どうなる、襲撃事件で英国が懸念

[ブリュッセル 23日 ロイター] - 英ロンドン襲撃事件が22日に発生する数時間前、欧州警察機関(ユーロポール)長官は、大勢の過激思想を抱く人物が英国と欧州に常に脅威を与えていると警告していた。

 3月23日、英ロンドン襲撃事件が22日に発生する数時間前、欧州警察機関(ユーロポール)長官は、大勢の過激思想を抱く人物が英国と欧州に常に脅威を与えていると警告していた。写真は事件の翌日、現場にたむけられた白い花(2017年 ロイター/Stefan Wermuth)

「こうした(脅威の)一部は今後も成功する可能性がある」と、英国出身のロブ・ウェインライト長官は、昨年の同日2016年3月22日に発生し、32人が犠牲となったブリュッセル同時攻撃の犠牲者を追悼するためブログにこう記していた。

──関連記事:ロンドン襲撃事件、ロイター記者が見た現場状況

ブリュッセルでの事件以降、4人が死亡し数十人が負傷した今回の事件までの1年間、欧州の治安当局者によると、潜在的脅威に関する情報共有は10倍に増えたという。

ロンドン襲撃事件

ロンドン襲撃事件

治安を強化するため、データベースの整備や身分詐称の取り締まり、不審者通報の義務化など、これまで以上の努力が行われている。

英国はユーロポールのデータを最もよく使う上位3国の1つである。だが欧州連合(EU)を離脱するため、同国がこのような協力体制から閉め出され、過去2年間にわたり欧州全体で300人を殺害したイスラム過激派に対し、ますますぜい弱になるリスクが浮上している。

ロンドン襲撃事件の容疑者は英国生まれであり、同国はEUの域内を国境審査なしで自由に往来できる「シェンゲン協定」に参加していない。それでも英国政府は、イスラム教徒に対する懸念と情報を他のEU加盟国と共有している。彼らはたいてい、インターネットで得た情報から急進化し、中東や北アフリカやアフガニスタンでジハード(聖戦士)と共に訓練や実際に戦闘を行い、自国に戻ってくる。

英国の治安当局者は昨年、ユーロポールと、ある加盟国で指名手配された容疑者を逮捕する義務をすべてのEU加盟国が負う「欧州逮捕状」を含む協定から離脱することの危険性を議会に警告していた。

<5000人を送還>

メイ首相が内相だった1年前、情報共有において英国が米国と緊密な関係にあることは、「(EU域外で)残留した場合と同じくらい安全であることを必ずしも意味するものではない」と語った。

首相となったメイ氏は現在、欧州逮捕状によって過去5年間で5000人以上を英国は強制送還することができたと述べている。

ユーロポールを離れることで、英国が他のEU加盟国27カ国の政府それぞれとの関係に頼らざるを得なくなると、元当局者は指摘する。

英国はユーロポール以外に、シェンゲン協定の情報共有プロトコルと、航空機の搭乗者に関するデータをEU治安当局間で交換する取り決めも結んでいる。

英国が正式に離脱手続きを開始するまで、EUの外交官たちは今後における同国の防衛・治安面での協力について協議することを拒否しているが、ある英国の外交官によると、同国は「特別な関係」を模索する可能性が高いという。

メイ首相は2年間に及ぶEU離脱手続きを29日に開始するとみられるが、治安と防衛の分野においてEUと緊密な関係を維持したいと語っている。EUも同様の意思を表明しているが、緊張が漂っているのは明白だ。

メイ首相は1月、英国の諜報能力は「欧州で唯一無二」であり、同国の軍隊と対テロ対策のリソースが、より良い離脱協定を確保する後押しとなるはずだと述べている。

しかしEUのバルニエ主席交渉官は否定的である。「治安と経済的・商業的利益を天秤にかけることはない」と、ブリュッセルで22日語った。

<協力の限界>

英国はすでにEU加盟国のフランスとドイツと、治安に関する2国間協定を結んでいる。そのほか、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドと諜報に関する協定「ファイブ・アイズ」を交わしている。

一方、ユーロポールと非EU加盟国のロシア、トルコ、ウクライナとの協力合意には交渉に数年を費やし、共有可能なデータに制限が設けられている。

EU内の協定では指紋やDNAデータの送信は数分で済むが、英国がEUを離脱するなら、それは数カ月かかる可能性があると、シンクタンクのグローバル・リスク・インサイツは指摘する。

EU内の情報共有は完璧というには今なおほど遠いと、批判的な見方をする人もいる。フランスとドイツが大規模で十分な要員が配置されている情報機関を持つ一方、ベルギーの諜報機関での長年にわたる怠慢が、同国ブリュッセルの空港と地下鉄駅で昨年起きた爆破事件によって浮き彫りとなった。

昨年12月、ドイツ首都ベルリンのクリスマスマーケットにトラックで突入し12人を殺害したアニス・アムリ容疑者は、監視対象でありながら、各国で14の偽名を使い分けて捜査網をくぐり抜けた。

しかし近年発生した一連の攻撃を受け、EUは昨年12月、加盟国に対し潜在的脅威をもたらす人物について警告を発することを義務づけてそうした穴を埋めようとしたり、指紋などの生体認証データを共有するデータベースを構築する計画を打ち出したりしている。

欧州議会の自由・司法・内務委員会で委員長を務める英国人のクロード・モラエス氏は、英国にとって大きな賭けだと話す。「われわれは、何を失いつつあるのかについてもっと真剣に議論する必要がある」

(Robin Emmott記者、Alissa de Carbonnel記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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