[ロンドン 9日 ロイター] - 英国のデービス欧州連合(EU)離脱担当相が辞任したことが、8日遅くに明らかになった。メイ首相は6日の閣僚会議で、離脱を巡る自らの方針を巡り合意を取り付けたが、デービス氏はこれに「消極的」な自身の姿勢を辞任の理由に挙げた。
デービス氏の辞任は首相にとって打撃であり、与党・保守党が離脱を巡って大きく分裂していることが浮き彫りとなった。メイ首相の新たな提案はEUとの通商関係を重視する穏健な内容で、これに反発していた保守党内の離脱強硬派はデービス氏の辞任を称賛した。
政府筋によると、スティーブ・ベーカーEU離脱担当副大臣も辞任した。保守党筋によると、デービス、ベーカー両氏と協力してきた別の閣僚も追随する可能性があるという。
数時間に及んだ閣僚会議で首相は、「モノの自由貿易圏」の創設をEU側に求め、貿易面での緊密なつながりを維持することを提案。デービス氏など最も声高な離脱賛成派に対し、提案を支持するよう説得したとみられていた。
デービス氏はメイ首相に宛てた辞表で、首相の提案について「全体の方向性は英国の交渉における立場を弱めるもので、窮地に陥る可能性もある」と強調。メイ氏がEUとの「共通ルール」の維持を提案に盛り込んだことに触れ、「英経済の大部分をEUが掌握することを認め、国内法の支配権がわれわれに戻ることはなくなる」と指摘した。
その上で「国益のためには、EU離脱担当省のトップにはあなたの方針に強く賛同する人が就くべきで、消極的な徴集兵では役に立たない」とした。
メイ首相はこれに対し、6日の閣僚会議で合意した方針に関するデービス氏の分析には同意できないと返信し、これまでの働きに謝意を示した。
一方、EUとの決別を訴える閣内の強硬派の1人であるゴーブ環境相は8日、メイ首相の提案は完璧ではないが、英国がEUから権限を取り戻すことにはなるとの見解を示していた。
これに対し、デービス氏は提案に一貫して消極姿勢で、閣僚会議を前にメイ首相に書簡を送り、自由貿易を求める一方で、関税に関して英国の決定権を拡大するという案は「実現不可能」だと訴えた。
保守党内の離脱支持派は、閣僚会議での合意は、EUとの決別を約束してきたメイ首相による裏切り行為で、名ばかりのブレグジット(EU離脱)になると批判。
党内が分裂したままとなれば、メイ首相がEU離脱に関する取り決めでEU側と合意できたとしても、英議会の承認を得られない可能性がある。
*内容を追加しました。