July 24, 2019 / 1:32 AM / in 3 months

焦点:英経済に赤信号、ジョンソン次期首相の前途多難

[ロンドン 23日 ロイター] - 英国の次期首相に決まったジョンソン氏は、景気に赤信号がともる中で政権を受け継ぐことになり、欧州連合(EU)との離脱交渉で弱い立場に立たされそうだ。

7月23日、英国の次期首相に決まったジョンソン氏(写真)は、景気に赤信号がともる中で政権を受け継ぐことになり、欧州連合(EU)との離脱交渉で弱い立場に立たされそうだ。ロンドンで撮影(2019年 ロイター/Toby Melville)

英経済は、EU離脱を選んだ2016年の国民投票後に不況に陥るとの予想を覆して順調に推移してきたが、現在は離脱を巡る不透明感と世界経済の鈍化を背景に減速し、景気後退(リセッション)入りする可能性さえ指摘されている。

ジョンソン氏の首相就任から約2週間後、8月9日に発表される第2・四半期の国内総生産(GDP)は、12年以来で初めてのマイナス成長となる恐れがある。

景気の落ち込みは一時的な要因による部分が大きいだろう。当初のEU離脱期限だった3月末を前に、企業は今年初めに仕事を前倒しで実施し、自動車メーカーなどは離脱による混乱を避けるため4月初めに工場を閉鎖した。

とはいえ、企業の購買担当者調査によると、第2・四半期の終わりにかけて多くの産業で経済活動はさらに減速している。

英予算責任局(OBR)は先週「6月の企業調査は特に弱い内容で、成長ペースが今後も弱いままで推移しそうなことを示した。これにより、経済が本格的なリセッションに陥るリスクが高まった」と警告を発した。

英国の失業率は1975年以来の最低水準まで下がり、賃金も上昇したが、その労働市場にも陰りが見える。

イングランド銀行(BOE、英中央銀行)のカーニー総裁は今月、「今年上半期を見渡すと、私見では、英国の基調的な成長率は現在、潜在成長率を下回り、家計支出の底堅さに大きく依存している」と述べた。

シティのエコノミスト、クリスチャン・シュルツ氏は今月の顧客向けノートで、景気が悪化すれば有権者の間でEU離脱への懸念が高まり、議会は「合意なき離脱」に抵抗する決意を強めるかもしれないと指摘。「その結果、次期首相がEUに譲歩を迫る際のてこが弱まるだろう」と予想した。

<合意なき離脱>

英国が10月に「移行期間」について合意しないままEUを離脱すれば、事態はさらに急速に悪化しそうだ。

OBRは、合意なき離脱になれば来年の英経済は2%のマイナス成長に陥ると予想。国境で混乱が起きれば、さらに大幅なマイナスになる可能性もあるとみている。

3大格付け会社は1兆8000億ポンド(2兆2000万ドル)に上る英国の債務を懸念しており、合意なき離脱の場合にはさらに格付けを引き下げる可能性を示している。

ジョンソン氏は、持ち前の強気さで明るい方に目を向けており、10年近くに及ぶ緊縮政策を経た英政府は財政支出を拡大し、減税を行う余地があると強調する。

同氏は、EUと合意に至らない確率を「100万分の1」としながらも、必要とあれば合意なしでの離脱も辞さないと述べている。

EU離脱派は、合意なき離脱のショックから英経済は素早く立ち直ると主張する。

ジョンソン氏の元経済顧問であるジェラード・ライオンズ氏はフィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で、2016年の国民投票以降、英国経済はしなやかさを見せつけたとし、「合意なき離脱は避けるのが理想的で、経済にショックを与えそうだが、英国は対処できる」と論じた。不透明感が取り除かれることが重要で、低賃金問題に対処する必要もあるという。

しかし大半のエコノミストは、慎重に築き上げられた製造業のサプライチェーンが打撃を受ければ、素早い設備投資の回復は見込めないと主張している。

<景気対策の選択肢>

景気の足取りがおぼつかないため、景気対策の選択肢に注目が集まりつつある。

キャピタル・エコノミクスのアナリストらは、BOEによる利下げと減税、財政支出拡大を組み合わせれば、迅速な景気回復に結び付く可能性があるとの見方を示した。

しかし政策金利は現在、過去最低をわずかに上回る水準にとどまっており、利下げ余地は限られるとBOE幹部らは強調する。

また多くのエコノミストは、BOEが債券買い入れを再開しても、効果は限られるとみる。

となれば、ジョンソン氏が財政支出をどれだけ緩められるかが焦点となる。保守党政権は10年近くにわたり、緊縮財政を旗印としてきた。

ジョンソン氏は保守党党首選で、数百億ポンド規模の財政支出と減税を約束した。しかし、合意なき離脱の場合、OBRの推計では英財政に約300億ポンド規模の衝撃が及ぶ見通しとあって、ジョンソン氏と彼が選ぶ財務相は慎重に事を運ぶ必要がある。300億ポンドは現在の財政赤字額の倍だ。

ジョンソン氏が約束する所得税減税が、英経済にどれほどの恩恵をもたらすかについても疑問がある。英経済は慢性的な生産性の低さという、より困難な構造問題への対処が叫ばれているからだ。

(William Schomberg記者)

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