October 18, 2019 / 12:49 AM / a month ago

コラム:英・EUの土壇場合意で混乱伴う離脱は当面回避

[ロンドン 17日 ロイター BREAKINGVIEWS] - ジョンソン英首相が欧州連合(EU)と合意した新たなブレグジット(英のEU離脱)の条件は、お世辞にも素晴らしい内容とは言えないが、もっと悪い結果は避けられる。ジョンソン氏は17日、EU首脳会議が始める直前にようやく離脱案の合意にこぎ着けた。英議会の承認を得るのは難しそうだ。それでも少なくとも、ジョンソン氏がさんざんちらつかせてきた混乱を伴う「合意なき離脱」は、当面なくなった。

 10月17日、ジョンソン英首相が欧州連合(EU)と合意した新たなブレグジット(英のEU離脱)の条件は、お世辞にも素晴らしい内容とは言えないが、もっと悪い結果は避けられる。写真は各国首脳らと言葉を交わすジョンソン英首相(2019年 ロイター/Piroschka van de Wouw)

ジョンソン氏の陣営は、非常にリスクが大きかった交渉に勝利したと離脱案を称賛した。しかし実際には、バラ色からは程遠い。確かにメイ前首相が昨年EUとまとめた離脱案を仕切り直して、アイルランド国境問題で英国をEUの関税同盟に縛り付ける形になっていた「安全策」の削除には成功した。EU側は離脱協定の交渉再開、安全策撤廃のどちらも繰り返し拒否していたのだ。

これらを達成する上で、英国は幅広い譲歩を強いられた。北アイルランドは事実上、工業製品と農産品の分野でEU単一市場にとどまる。またアイルランドとの厳格な国境管理を防ぐため、英政府は北アイルランドの港湾や空港でEUの関税制度実行を監督する。ジョンソン氏は以前、そうした行為は必要ないと主張していた。

それでもジョンソン氏はEU側の交渉担当者や、鍵を握っていたアイルランド首相を説得させる必要から妥協を余儀なくされ、逆に英議会の承認獲得が困難になっている。北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は17日、新離脱案を支持できないと表明した。つまりジョンソン氏は、野党・労働党の中から支持者を得ない限り、同案の可決は見込めない。

ところが離脱案の別の部分が、野党側には受け入れ難い要素となっている。従来の離脱案で英国はEUの労働市場に関する規則や環境基準を損なわないと約束していたが、今回そうした姿勢は弱まった。この変化によって将来の自由貿易協定締結に向けた協議は難航する見通しで、英国のEU市場へのアクセスが制限され、ブレグジットの経済的コストが高まることになる。民間シンクタンクの試算では、こうした悲観的なシナリオに基づくと、今後10年で英国の1人当たり国内総生産(GDP)は、EUに残留した場合に比べて2.5%も低下してしまう。

英議会が19日に予定される審議で新離脱案を否決すると、ジョンソン氏はブレグジットの延期をEUに申請することが法律で義務付けられている。申請すれば、EU各国が承認するのはほぼ間違いない。そこで恐らくジョンソン氏は、総選挙に打って出て過半数確保を目指すだろう。もう1つの可能性として、議会が国民投票で賛成を得るという条件付きで新離脱案を認める展開が挙げられる。

いずれにしても英国が10月末にEUを離脱する公算は依然として乏しい。最も控えめに言っても、ジョンソン氏が7月の就任からやるぞやるぞと言い続けてきた合意なき離脱は、目立った脅威ではなくなった。

●背景となるニュース

*英国とEUは17日、ブレグジットを巡る新たな条件で合意に達した。

*合意内容に基づくと、北アイルランドは英国の関税区域にとどまるが、英本土から北アイルランドに入ってきた貿易品がEU市場に向かう「リスク」があるとみなされれば、EUの関税が適用される。

*ジョンソン氏にとって、議会で新離脱案の承認を得るのは非常に難しい。閣外協力している北アイルランドの地域政党、DUPが支持できないと表明しているからだ。英政府は19日に新離脱案が議会で採決されることを希望している。

*新離脱案では、北アイルランド議会に4年ごとにEUの規制体系にとどまるべきかどうか判断する権利が与えられている。有効投票の過半数が反対すれば、EUの規制適用を取りやめることができる。

*北アイルランドは、一部のEU規則に引き続き従う取り決めで、特に農産品と工業製品がその影響を受ける。

*英国は北アイルランドで付加価値税を徴収する責任があるが、不正防止のためにアイルランドに適用される税率を免除したり、引き下げる可能性が認められている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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