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コラム

コラム:米FRBは雇用優先、物価は大幅にオーバーシュートへ

[ロンドン 18日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は、雇用がコロナ禍前の水準に戻るまで低金利・債券買い入れ政策を通じて景気を刺激し続ける決意だ。その間、コモディティー価格は大幅に上昇する可能性が高い。

 5月18日、米連邦準備理事会(FRB)は、雇用がコロナ禍前の水準に戻るまで低金利・債券買い入れ政策を通じて景気を刺激し続ける決意だ。その間、コモディティー価格は大幅に上昇する可能性が高い。写真は2019年3月撮影(2021年 ロイター/Leah Millis)

コロナ禍と、それに先立つ2018─19年の米国と中国および諸外国との貿易摩擦によって、生産と雇用は長期トレンドを大幅に下回った。これに対し、物価は長期トレンドをさほど大きく下回っていない。

FRBが、生産と雇用のスラック(緩み、ギャップ)が完全に消えるまで景気を刺激し続ける決意であれば、トレンド水準に比べた物価の大幅なオーバーシュート(過熱)を受け入れざるを得ないだろう。

FRB高官らは、足もとの物価上昇が一過性であり、企業と家計の期待、および価格・賃金設定行動に深く浸透することはないと踏んでいる。

この読みが正しいなら、実質賃金は一時的に下落するだろう。そうしたことが起こらない場合には、インフレが定着して将来的に金融・財政政策をより強く引き締める必要が生じるだろう。

<完全雇用>

コロナ禍、ロックダウン(都市封鎖)、貿易戦争、通常の景気循環によって生じたスラックを計量化することは、科学というよりアートに近い。

この計算を行うには、過去に生産能力がフル稼働して完全雇用だった時点を特定し、潜在成長率を特定し、その上で今後の生産、雇用、物価を予想する必要がある。

全米経済研究所(NBER)の委員会は、直近の景気循環の山を、新型コロナウイルス感染第1波が襲う直前の2020年2月と推定している。製造業の生産がピークを迎えたのは、それより1年以上前の2018年12月だ。

従って2018年12月から2020年2月の間のいずれかの時点が、完全雇用および生産能力のフル稼働と一致する可能性が高い。この間の失業率は3%前後、設備稼働率は75─78%だった。

<一様ではないギャップ>

2018年12月までの5年間に、製造業生産は年平均1.2%、非農業部門就業者数は年1.8%前後、それぞれ増加していた。

貿易戦争の結果として、2019年12月までに生産は既に以前のトレンドを2%下回っていた。新型コロナ感染第1波とロックダウンの渦中だった2020年4月にはその差が22%まで拡大した。

その後、財政・金融刺激策と経済の大部分の再開によって生産は回復し、現在は2014―18年のトレンドとの差がわずか5%に縮まっている。

非農業部門就業者数は現在、2014─18年のトレンドを7%下回っている。

つまり生産と雇用は現在、新型コロナ大流行前のトレンド(おそらく潜在成長率並み)を約5―7%下回っていることになる。この数字は、FRBが埋めようとしているギャップを示す最善の尺度だ。

これに対し、物価への下押し圧力は小幅にとどまっている。現在のコア個人消費支出(PCE)価格指数は、2018年12月の数値に物価上昇率目標の2%を当てはめて計算した水準を、1%未満下回るに過ぎない。このトレンドからの下方かい離は、7月から10月の間に埋まる公算が大きい。

しかし生産と雇用のトレンドに対する下方かい離を埋めるには、ずっと長い期間を要するだろう。その期間は新型コロナ関連の制限措置緩和と、景気拡大スピードによって決まってくる。

<二者択一>

FRBのジレンマは、ひとつの政策手段しか持ち合わせないことだ(実際には、短期金利とポートフォリオ調整という、互いに関連する手段の組み合わせだが)。

オランダの経済学者、ヤン・ティンバーゲン氏が示した「ティンバーゲンの定理」の通り、1つの政策手段で対応できるのは1つの政策目標だけだ。

つまりFRBは雇用・生産のギャップに目標を絞って長期的に刺激策を続けるか、物価のギャップに目標を据えて刺激策をはるかに短期間で終わらせるかの、二者択一を迫られている。

FRBの対外的な説明は、この点について混乱を招くものが多い。高官らは、物価上昇率は長い間目標を下回っていたので、その差を埋める必要があると言うが、目標水準は明示しない。そして物価がトレンドを大幅に下回っていることを示す証拠は少ない。

対照的に、FRBの行動からは、生産・雇用のギャップを埋めることに専念していることが分かる。その間、物価のオーバーシュートはある程度容認する構えのようだ。

現実には、FRBには選択の余地がない。政策手段は限られている一方、経済の部分ごとにギャップの度合いは異なるからだ。

しかし今年から来年にかけて刺激策が長引けば、製造業のサプライチェーンは少なくとも1年から1年半の間、ずっとフル稼働状態が続くだろう。

FRBは完全雇用への回復を目指すため、今回の景気回復サイクルでは、原材料、運輸、工業製品の価格が通常よりも早く長期トレンド水準を上回るだろう。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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