[ブリュッセル 11日 ロイター] - ブリュッセルで今週開かれる北大西洋条約機構(NATO)国防相会合を前に、複数の防衛企業幹部からは、欧州で平和が長年続いたため、業界はEU加盟国の防衛費削減にいや応なく対応してきたと窮状を訴える声が相次いだ。ロシアのウクライナ侵攻で一気に需要が急増。今は各社とも増産に奔走しており、欧州連合(EU)に対して加盟国の兵器共同購入の調整支援を求める声が改めて上がった。
NATO側ではストルテンベルグ事務総長が記者会見で、NATOが兵器の増産や在庫補充の方法を巡り業界や加盟国との対話を始めていると表明。国防相会合では在庫拡充に向けた何らかの決定が出るとの見通しを示した。侵攻されたウクライナへの支援で各国が手元の兵器在庫を供与に向ける判断は間違っていなかったが、今や加盟国が自国の軍事能力そのものを確実にし、ウクライナに対しても侵攻の「長期化」に備えて支援を続けるには、兵器増産が必要との考えだ。
ストルテンベルグ氏は、国防相会合では新たな生産能力への投資に必要な長期的な需要をメーカー側に示す野心的な目標を決め、共同購入も検討されるとの見通しを示した。
フランス防衛機器メーカー、ネクスターのニコラス・シャムシー最高経営責任者(CEO)によると、業界はEUの劇的な需要増に対応しなければならないのに生産能力が「平時」想定のままという問題点がある。同氏は欧州の砲撃能力への需要が特に大きいと指摘した。ネクスターは戦闘車両を設計・製造し、現在はフランス政府とドイツ企業ベグマン・グルッペネクスターが折半出資するKNDSの傘下だ。
欧州エアバスと米BAEシステムズとイタリアのレオナルドの合弁ミサイル製造MBDAを率いるエリック・ベレンジャー氏は、ロシアのウクライナ侵攻以来、「もっと多く、もっと迅速にどんどん納品してくれと要請されている。そうした要請がいっぺんに来ている」と語った。
ネクスターのシャムシー氏はEU各国首脳に対し、この「戦時」下で加盟各国がばらばらに調達目標を追求するのは避けてほしいと注文。「全く逆だ。この難局はEUレベルで対処されねばならない」と訴え、より効率的でより良い協調を通じた軍事能力の増強を求めた。
業界幹部らは人手不足解消が喫緊の課題だとも指摘した。シャムシー氏はEUが「人材プール」の枠組み作りを支援することを要請。早期退職者の呼び戻しのほか、他社や軍民両用企業からの専門家採用も示唆した。
私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」