[ブリュッセル 31日 ロイター] - ウクライナは31日、欧州連合(EU)がロシア産石油の輸入停止で合意したことについて、ロシア経済の崩壊を加速させると同時に、戦争資金を枯渇させられるとして支持を示した。
EUは30日の首脳会議で、ロシア産原油について今年末までに90%の輸入を停止することで合意。ロシアのウクライナ侵攻に対して、これまでで最も厳しい制裁となった。
ドイツのショルツ首相は「ロシアに戦争を終わらせ、部隊を撤退させ、ウクライナと合理的かつ公正な和平で合意するよう促す」ことが制裁の明確な目的だと述べた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は禁輸措置について、ロシアは数百億ユーロを失うことになると指摘。その上で、EUの制裁第6弾が実施され次第、「すぐに第7弾の準備に取りかかる」とし、「最終的に自由主義世界とテロリストの国の間に意味のある経済関係があってはならない」と述べた。
フランスのマクロン大統領は追加制裁についていかなる可能性も排除できないという認識を示した。
複数の国が制裁第7弾への着手を望む一方、ロシア産ガスの禁輸に反対する声も上がっている。
オーストリアのネハンマー首相は、EUの需要の3分の1を占めるロシア産ガスを制裁対象に含めることはできないと発言。「ロシア産石油は穴埋めが比較的容易だが、ガスは全く異なる」と述べた。
EU各国は今週中に制裁の正式承認を目指しており、承認後6カ月以内に海上輸送によるロシア産原油の輸入を停止、8カ月以内に石油精製品の輸入を停止する。
今回の合意は禁輸に抵抗していたハンガリーに除外を認めたことで実現した。内陸に位置する同国とスロバキア、チェコはパイプラインでロシア産原油を輸入しており、禁輸の対象外となった10%分を占める。
ブルガリアも2024年末までの適用除外で合意したと明らかにした。製油所がロシア産原油にしか対応できない設計になっているためという。
フォンデアライエン欧州委員長は、EU企業がロシア産石油を運ぶ船舶に保険や再保険を提供することも禁止されると述べた。
ロシアのアナリストらは、禁輸が段階的に実施されるためロシアはアジアで新たな顧客を獲得する時間があると指摘する。
シナラ・インベストメント・バンクのアナリストは「EUが発表した措置は脅威のように見えるが、ロシア石油部門に大きな打撃となるような影響は目先も6カ月後も想定していない」と述べた。
EU首脳らは欧州委に対し、エネルギー価格高騰への対応策検討も要請した。海外のパートナーと検討すべき「一時的な輸入価格上限」などが含まれるという。
また、代替可能エネルギーの導入加速や省エネの改善、エネルギーインフラへの投資拡大を通じてロシア産化石燃料の輸入を数年以内に停止する欧州委の計画を支持した。
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