[リビウ(ウクライナ)/アンタルヤ(トルコ) 10日 ロイター] - ウクライナとロシアは10日、トルコで外相会談を開いたが、事態打開に向けた進展は得られなかった。ウクライナ各地では、ロシア軍の空爆や砲撃が続く中、数十万人の民間人が閉じ込められたままとなっている。
ロシアの軍事侵攻が3週目に入る中、前日に産科病院が攻撃を受けた南部の港湾都市マリウポリの当局者は、10日もロシア軍が同市を空爆したと述べた。
国際社会からの非難と孤立が強まるロシアのプーチン大統領は、ロシアは西側の経済制裁がもたらす困難を克服しながら一層強大な国家になると表明した。
政府の会議で、ロシアがウクライナで行っている特別軍事作戦に代わる選択肢はなかったと強調。「疑問や問題、困難があっても、われわれは過去に克服してきたし、今回も克服する」と述べた。
一方、英政府は10日、ロシア石油大手・ロスネフチのイーゴリ・セチン最高経営責任者(CEO)ら7人のオリガルヒ(新興財閥)幹部の資産を凍結したと発表。サッカーのイングランド・プレミアリーグ、チェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチ氏も制裁の対象となった。
また、米金融大手ゴールドマン・サックスはロシア事業を閉鎖すると発表。西側の制裁措置で事業環境が厳しくなる中、米大手金融機関として初めて撤退を表明した。
<外相会談は進展なく>
ウクライナのクレバ外相とロシアのラブロフ外相は10日、トルコのアンタルヤで会談した。両外相の会談は、ロシアのウクライナ侵攻以来初の2国間ハイレベル協議。
クレバ氏は会談後の記者会見で、マリウポリなどへの支援物資の配布や人道回廊を通じた民間人退避のための一時停戦について、ラブロフ氏は約束しなかったと述べた。
ラブロフ氏は、作戦は計画通り進んでいるとし、ウクライナがロシアに脅威をもたらしていると改めて主張。停戦はこの日の外相会談の議題として予定されていなかったと述べた。
一方、「特定の」問題について協議するため、ウクライナのゼレンスキー大統領と会うことをプーチン大統領は拒否しないとの認識も示した。
ラブロフ氏はさらに、西側諸国がウクライナに武器を供与し衝突をあおっていると非難。核戦争に発展する可能性があるかとの問いには「核戦争が始まるとは信じたくないし、信じていない」と述べた。
ロシア軍はウクライナ南部で前進する一方、北部や東部では都市の制圧に至っていない。
英国は10日、キエフ北西部のロシア軍の車列はここ1週間でほとんど前進しておらず、苦戦を強いられているとの見方を示した。
米中央情報局(CIA)のバーンズ長官は、プーチン大統領はウクライナでの「持続可能」な終局を描けていないようだとし、近いうちに戦闘終結の方法を見い出そうとする可能性があると分析した。
ゼレンスキー大統領の首席経済顧問は、ロシア軍がウクライナでこれまでに少なくとも1000億ドル相当のインフラや建物など物理的資産を破壊したと明らかにした。
軍事侵攻を受けて国内事業者の半数が完全に閉鎖し、残りの半数は縮小態勢で業務を行っているとした。
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