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アングル:ウクライナ中小企業、ロ軍の攻撃による停電で大打撃

[キーウ 18日 ロイター] - オレクシー・レフツキーさんは、このところウクライナの企業を悩ませている問題について、お手上げという表情で語ってくれた。

11月18日、オレクシー・レフツキーさんは、このところウクライナの企業を悩ませている問題について、お手上げという表情で語ってくれた。写真は10月、ロシアの攻撃後に停電に見舞われたキーウのスーパーで撮影(2022年 ロイター/Gleb Garanich)

「コロナ禍で2年、そして今度は戦争で1年だ。次はエイリアン襲来かな」とぼやくレブツキーさんは、キーウの洒落たコワーキングスペースでテクノロジー担当主任を務めている。ロシアによる空爆が続くようなら、じきに自家発電に頼らざるを得なくなるという。

コロナ禍と、続いて2月に始まったロシアによる侵攻による経済ひっ迫に喘ぎつつ、ウクライナ企業は日常生活の一部となった広域停電に対応しようと必死になっている。

前線での敗北を重ねたロシア軍は、発電所や変電所などの重要インフラに対するミサイル攻撃に一段と力を入れるようになっている。電力事業者は、電力グリッドの安定性を維持し、修理を完了するために、停電を実施せざるを得ない。

当局者は、15日の一連の攻撃は9カ月にわたる戦争の中で最大規模だったと話す。ロシア側は、ウクライナに対する攻撃は軍事とエネルギー関連のインフラを標的としたものだと主張している。

ウクライナ企業のなかでも、侵攻前には同国経済の約60%を担い、税収の約40%を占めていた中小企業にとって、頻繁な停電は、収益を失い将来の見通しを立てられなくなることを意味する。

キーウのシンクタンク、ラズムコフ・センターで経済社会プログラムの主任専門家を務めるカテリナ・マルケビッチ氏は、10月半ばにロシアによるインフラ攻撃が始まって以来、中小企業の活動は「大幅に低下」していると述べている。

多くの中小企業は発電機などの周辺機器への多額の投資を迫られ、また顧客を失わないために大幅な譲歩を強いられているという。

余裕資金がない企業、あるいは戦火で荒廃したウクライナ経済の中で好条件の融資を受けられない企業は、営業を停止するか、あるいは完全廃業に追い込まれてしまうと、マルケビッチ氏は言う。

ウクライナのスビリデンコ経済相は先週、記者団に対し、重要インフラに対するロシアの攻撃により、今年のウクライナ経済のマイナス成長は、これまで予想されていた35%よりも大きくなる可能性があると述べた。

<「仕事にならない」>

レフツキーさんによれば、勤務先のコワーキングスペース「コーペラティフ」では、電力供給とインターネット回線はそれぞれ2系統用意しており、大半の停電に影響されないという事実を広告でうたったところ、新規の利用者が集まるようになったという。

とはいえ、新規利用者が流入しても、2系統の発電機のどちらかを長期間にわたって運転しておく必要が生じれば、コストを相殺するのは最終的に難しくなるだろう、とレフツキーさんは言う。

もう1つの収益源であるイベント会場としての利用も、頻繁に空襲警報が鳴り響く中ではますます難しくなっている。

ウクライナ国会の財務税制委員会の委員長は、全国規模の警報が1営業日続くごとに2億ドル(約280億円)以上の経済損失が生まれていると語った。

レフツキー氏はロフト付きのコワーキングスペースで、「まあ、何とか生き延びてはいる」と語る。「だが、これでは仕事にならない」

大企業の中には、不確実な状況にうまく適応する態勢を取れているように見えるところもある。

だが、中小企業の場合はプレッシャーがさらに強くなる。特にサービス業は、固定客の支持や大家の好意といった要因に依存することも多い厳しい状況だ。

<耐え忍ぶ>

キーウの先端的なカフェ2店の共同オーナーで、さらにもう1店も経営しているサシュコ・ボロフスキーさんは、自分のビジネスはそうした2つの要因に助けられていると話す。さらに、スタッフを少数に絞っていることによる身軽さもプラスだという。

突然の停電や計画停電が発生すると、従業員は普段とは別の役割を担う。レジ係は受付に回って来店客を丁重に断り、調理人もサンドイッチ作りなど「冷たい作業」に取りかかる。

ロシアの空爆による停電発生直後の状況について、ボロフスキーさんは、ロシアへの憎しみや恐怖といった感情が続くのは最初の数分だ」と話す。「すぐにそうした思いを振り払い、前向きに考え始める」

だが停電の間、ボロフスキーさんの店の収益は大幅に少なくなる。経営会議は毎週開いてはいるが、6週間を越える資金繰りについては先が読めなくなくなっている。

専門家の中には、ウクライナのエネルギー供給網を安定させるには長期的な取組みが必要になる、と警告する声がある。

キーウのエネルギー産業研究センターで所長を務めるオレクサンドル・ハルチェンコ氏は、大半の顧客向けにエネルギー供給の途絶を最小限、あるいはゼロに抑えられるまでに復旧を進めるには、最長で6週間はかかるとの推測を示した。

ハルチェンコ所長は16日の会見で、「ただし、これ以上の攻撃がないというのが前提だ」と述べた。ところがその翌日、ロシアはエネルギー関連施設と国防産業の工場に新たな攻撃を加えた。

一方、前線に近い都市の企業の場合は、顧客となるべき人々が避難してしまったために、さらに深刻な影響を受けている。

ハルキウの民間経営者協会のオレクサンドル・チュマク代表は、100万人を超えていたハルキウの人口は、現在では約60万人まで急減してしまったと推測している。

「これによって、一部の企業は存続不可能になっている」とチュマク代表は言う。

さらに、ハルキウから避難した企業の12%は同市に戻らないことをすでに決めており、さらに21%は、安全が確保され、十分な資金を確保できた場合にのみ同市に戻るとしているという。

<「状況を受け入れる」>

ただ、ボロフスキー、レフツキーの両氏とも、多くのウクライナ人がすでにさまざまな困難に慣れっこになっており、自分も同僚たちもパニックに陥ってはいないと話す。ウクライナ軍の善戦も、国民の間で目的意識を維持するうえでプラスになっている。

ウクライナの市場調査会社グラデュスが行った調査では、企業の65%が、遅くとも2023年末までには実際の戦闘は終了すると考えていると回答した。この調査は11月初めに実施され、ウクライナ国内の大企業から小企業まで203社から回答を得ている。

ボロフスキーさんは今のところ、今後被る可能性のある経済的な損失よりも、自分や周りの人々のメンタルヘルスの方を気にしていると言う。

「この瞬間自分でコントロールできるのは、ビジネスの今後がどうなるかではなく、自分のメンタルヘルスの部分だ」とボロフスキーさんは言う。「この状況を受け入れることで、気持ちは楽になった」

(翻訳:エァクレーレン)

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