[エルサレム 29日 ロイター] - 英食品・日用品大手ユニリーバは29日、傘下の米アイスクリームブランド、ベン・アンド・ジェリーズのイスラエル事業をライセンス契約関係にあった現地企業に売却したと発表した。金額は明らかにしなかった。
ベン・アンド・ジェリーズは昨年、パレスチナのヨルダン川西岸などイスラエル占領地での販売は自社の価値観にそぐわないとして同占領地での販売停止を発表。ライセンス先企業は34年間の契約関係を違法に断ち切ったとして、ベン・アンド・ジェリーズを訴えた。イスラエル政府は、販売ボイコットは「道義的に間違っている」と非難し、親会社ユニリーバが重大な結果に直面することになると批判していた。ユニリーバは当時はベン・アンド・ジェリーズの自主的な決定を擁護したものの、イスラエルとの関係の重要性も強調し、2022年末までには解決策を出すとしていた。
今回のユニリーバの声明は当該製品がイスラエルとヨルダン川西岸の全域で販売されると表明。イスラエル外務省は「大きな勝利だ」とコメントした。ベン・アンド・ジェリーズの代理人はユニリーバの発表には同意しないとした上で、同社がイスラエルから利益を上げることはもうないと述べた。
パレスチナ問題を巡っては、イスラエルに国際法順守の圧力をかけようとする販売や投資のボイコット運動が世界的に続いているが、同国は運動が反ユダヤ主義的だと反発している。ベン・アンド・ジェリーズの昨年のボイコットに対しては、米ニューヨーク州やテキサス州など少なくとも6州の州年金責任者が同社決定に抗議してユニリーバの株や社債を売却したり投資を制限。米ユダヤ系団体幹部によると、同団体理事会議長で、株式取得を通じ来月にユニリーバの取締役会に入る米富裕実業家が、今回の売却決定協議に関与した。
2000年のユニリーバとベン・アンド・ジェリーズの買収契約では社会的責務についての決定権はベン社にある。しかしユニリーバは今回、財務や運営上の決定権はユニリーバにあると主張。イスラエルボイコット運動自体は支持しないとの姿勢も改めて表明した。
ベン・アンド・ジェリーズの共同創業者は2人ともユダヤ系。2人とも今は経営を離れているが、黒人の人権問題や「LGBTQ+」の権利問題など社会正義問題への関与で知られている。
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