September 12, 2019 / 2:06 AM / 5 days ago

焦点:米民主党大統領候補、通商問題と対中姿勢で抱えるジレンマ

[ワシントン 9日 ロイター] - トランプ米大統領が中国に仕掛けた貿易戦争が米国経済にもたらす悪影響が増大し続けている。このため2020年大統領選の野党・民主党候補指名を争う人々にとって、「米経済を再び偉大にした」というトランプ氏の再選に向けた最大のアピールを台無しにできる絶好の舞台が整っているように見える。

 9月9日、トランプ米大統領が中国に仕掛けた貿易戦争が米国経済にもたらす悪影響が増大し続けている。写真はデトロイトでの討論会で発言するバイデン氏。7月31日撮影(2019年 ロイター/Lucas Jackson)

ところが今のところ民主党側はあまり有効な攻撃ができていない。

候補指名を目指す20人のほとんどは、トランプ氏が中国と関税を掛け合うことで農家や消費者、企業が痛めつけられていると批判するものの、ではどんな別のやり方をするのかについて意見が統一されていない。

結果として国際金融市場が動揺し、米消費者が中国からの輸入品価格上昇に直面したり、農家が最大の輸出市場を失う事態になっているのに、各候補者から出てくるメッセージは付け焼刃的であったり、時には支離滅裂な内容にとどまっている。

現在指名争いで最も優勢なジョー・バイデン氏の副大統領時代に筆頭経済顧問を務めたジャレッド・バーンスタイン氏は「なかなか厄介な問題だ。難しいのはトランプ政権のかなり破滅的な一連の政策と距離を置きながらも、中国に弱腰ではないとの姿勢を見せなければならない点にある」と解説した。

トランプ氏の側近らは、同氏の中国に対する強硬な態度は支持基盤を離反させず、むしろ活気づかせると主張する。ただ貿易戦争での中国の報復措置により、与野党の支持が伯仲しているウィスコンシンやペンシルベニア、ミシガンなどの農家や製造業が2年にわたって痛手を受けており、トランプ氏にとって対中戦略が再選のより大きなリスクとなってきた様相だ。

一方民主党も議会ではずっと中国に批判的で、米国の経済と安全保障が脅かされているとの立場を取ってきた。そこで大統領選に出馬した面々は、強引なトランプ氏と同じ手法とみなされることを避けつつ、独自の対中強硬策を打ち出すことに苦労している。

対中通商政策はそのまま、民主党内の穏健派と急進派の相違も浮き彫りにする。例えば穏健派でインディアナ州サウスベンド市長のピート・ブティジェッジ氏やベト・オルーク元下院議員は、トランプ氏が導入した関税の完全撤廃に動こうとしている。逆に急進派のバーニー・サンダース上院議員は関税が中国を屈服させる有効な武器だと評価し、エリザベス・ウォーレン上院議員が示した通商政策はトランプ氏と同じぐらい保護主義的と受け止められている。

<お株を奪われる>

それでも民主党の大統領候補指名を目指す人々の大半は、そのイデオロギーが何であれ、中国問題に慎重な態度を崩していない。

何しろピュー・リサーチセンターが8月に実施した世論調査では、米国民で中国に負の感情を持っている割合は60%と、昨年の47%から上昇したのだ。トランプ氏の中国たたきに効果があるという証拠が出ている。

実際、16年の大統領選でトランプ氏が一気に台頭した原動力は、同氏が中国への敵意を示し、対決を約束したことだった。また米国内で工場の仕事がなくなり、地域経済が停滞するのを目にした多くの有権者の共感を呼んだのが、グローバル化や自由貿易に対する同氏の露骨な反感だ。

トランプ氏はそうすることで、グローバル化は米国の労働者を犠牲にして多国籍企業を太らせている、というサンダース氏やウォーレン氏らの進歩派がずっと掲げてきた主張を取り込んだ。

バーンスタイン氏も「トランプ氏はこの問題で全ての人の見解を自家薬籠中の物とした」と指摘した。

ケイトー研究所の通商政策専門家スコット・リンスカム氏は「国民が反中国のメッセージを待ち構えているのは間違いない。しかし(民主党側の出す)メッセージは巧みで戦略的でなければならない。さもないとトランプ氏に主導権を渡すことになる」と指摘。この面で民主党の候補指名レース参加者が差別化を図るのは簡単ではなく、サンダース氏やウォーレン氏の通商問題に関するメッセージは、トランプ氏と違うとは一般有権者にみなされないと付け加えた。

<適切な道>

バイデン氏は、適切な道を進もうとしている候補者の1人で、企業界ではトランプ政権前の状態を取り戻すという意味で恐らく一番期待できると考えられている。

もっともバイデン氏は今年初め、中国の経済的な脅威を否定する発言をしてトランプ氏やサンダース氏などから批判を浴びて以来、この問題では守勢に立たされてきた。

その後同氏は中国の反競争的な慣行を抑えるために同盟国を結集させると誓い、中国という顧客を失った米農家に同情を示して巻き返しているが、トランプ政権の関税を全て撤廃するかどうかは明言していない。バイデン氏陣営もロイターからの質問に答えず、広報担当者は「農業や製造業といった米国の基幹産業を決して犠牲にしない形で中国に厳しく、かつ巧妙に対応しつつある」とだけ述べた。

トランプ氏陣営は、かねてからバイデン氏は通商問題で弱味を持っているとの見方をしてきた。バイデン氏が上院議員時代に1994年の北米自由貿易協定に賛成票を投じ、中国との貿易正常化を支持したからだ。また副大統領としては環太平洋連携協定(TPP)も提唱した。TPPは中国の勢力拡大を抑える狙いの枠組みだが、民主党の急進派や労組は反対し、トランプ氏が大統領就任後に離脱を決めた。

ただジョージ・W・ブッシュ政権で政府高官を務めたトニー・フラット氏は、バイデン氏は世論調査で大半の米国民が自由貿易協定に好意的になっている状況を追い風にするべきだと強調する。ピュー・リサーチセンターが6月に行った調査では、国民の65%は他国との自由貿易協定に賛成した。

フラット氏によると、バイデン氏はトランプ氏、民主党急進派の双方と異なる路線を歩み、世界貿易を支持して国際的な安定を切望しそうな都市近郊の有権者に訴えかけることができる。「有権者の数で言えば、組合員よりも近郊居住者の方が多い。バイデン氏は天与の好機に恵まれている」という。

(James Oliphant記者)

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