[ニューヨーク 12日 ロイター] - 外国人投資家は昨年、ドル建て資産のヘッジ支出を増やさざるを得なかったが、それでも米社債に資金を流入し続けている。
しっかりしたリターンや、年内は堅調な米国の経済成長が期待できることが、多くの外国人にとって高くつくドルのヘッジ費用を巡る懸念よりも大きな存在になっているからだ。
米連邦準備理事会(FRB)が今年初めに突然、金融政策の運営姿勢を引き締めから中立に転換し、社債市況がはっきり持ち直したため、外国人が気兼ねなく買える環境が生まれた面もある。
バンク・オブ・アメリカの社債指数に基づくと、米投資適格債の年初来の総リターンはプラス5.6%と昨年全体のマイナス2.2%から好転。高利回り債の総リターンもマイナス2.3%からプラス8.3%に改善している。
「金利見通しが以前よりずっと落ち着き、社債を含めた確定利付き商品が相当なリターンを稼ぐ状況をもたらした」と話すのは、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの高格付けクレジット戦略責任者のハンス・ミケルソン氏だ。
こうした外国人の米社債に対する強烈な需要が衰える気配は見えない。
2カ月遅れで公表される米財務省のデータを見ると、今年1─2月の外国人による米社債の買い越し額は113億ドルで、昨年11─12月は約150億ドルの売り越しだった。EPFRグローバルのデータでは、1─4月の米投資適格債ファンドは外国人からの資金流入が流出を上回った。対照的に昨年6─12月は流出の方が大きかった。
FRBが金融政策の軌道修正を打ち出して以来、米国債利回りは低下傾向にあり、社債のリスクプレミアムも縮小している。
<高利回りの誘惑>
FRBの政策見通しが変わったとはいえ、短期金融市場ではドル調達コストが上昇しているため、外国人にとってヘッジ費用は依然として高いが、米社債購入の妨げにはなっていない。
BNPパリバ・アセット・マネジメントの確定利付き商品マルチ戦略ポートフォリオマネジャー、ロバート・ブラウンズ氏は「米国は世界経済における輝ける星であり、非常に力強い成長が見られ、昨年を通じて強固な財政面の支援があった。これによって投資家が米国でもっと多くの資金を運用しようという気持ちを持つようになった」と述べた。
同時に外国人投資家は、割高なヘッジ費用を負担するよりむしろ為替ヘッジをしない道を選んでおり、ドルが値上がりしているためそうした作戦が功を奏している。
ロイターの計算によると、ユーロの3カ月物フォワードに基づく欧州投資家のドルヘッジ費用は約3.1%と、昨年11月のおよそ3.4%からやや下がったとは言え引き続き高水準だ。
アナリストによると、欧州の投資家にとって為替ヘッジ費用を差し引いたベースの米高利回り債のリターンはプラス3.1%で、欧州の高利回り債のリターンはプラス3.5%前後。BNPのブラウンズ氏は「米経済が強く、ドルは堅調に推移すると考えるなら、為替リスクはヘッジしないだろう」と解説する。
一方BNP幹部らによると、12カ月物フォワードを使った日本の投資家のヘッジ費用は、昨年11月の3.25%から足元で2.85%まで下がった。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのミケルソン氏は、FRBの中立スタンスを理由にヘッジ費用は低下基調になるとみている。「半年前に米社債を買っていたら、今年はずっと割高なヘッジを組むことが想定された。市場環境が良好に見えなかったからだ。今なら外国人投資家は、市場が利下げを織り込んでいるので、より低いヘッジ費用を見込んで差し支えないだろう」と語った。
そのため日本の投資家は今年外債投資を再開し始め、大半の資金を米国債を含む米国の確定利付き商品に振り向けつつある。特に日本の保険会社は新年度から相対的にリスクの高い社債に投資対象を広げ、外債投資でより高いリターンを得ることを目指している。
TDセキュリティーズの金利・ボラティリティ・ストラテジスト、ウェン・ルー氏は「誰もがヘッジ費用(の高さ)を知っているが、投資家に選択の余地はほとんどない。あらゆる資産クラスにまたがって利回りを求めることが、多くの投資家にとって必須のようになっている」と強調した。
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