October 9, 2019 / 5:02 AM / 5 days ago

コラム:米中分断におびえる市場、問われる緩衝役・安倍首相の手腕

[東京 9日 ロイター] - 米国務省が8日、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧などを理由に中国当局者へのビザ発給を制限すると発表し、同日の米株式市場は大幅安となった。これは単なる米中通商協議への懸念だけでなく、「米中分断」の兆しに対するマーケットのおびえではないか。分断が本格化すれば、日本企業の苦悩は深くなるだろう。

 10月9日、米国務省が8日、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧などを理由に中国当局者へのビザ発給を制限すると発表し、同日の米株式市場は大幅安となった。写真は安倍首相。9月にニューヨークで撮影(2019年 ロイター/Jonathan Ernst)

こうした中で、米中首脳とそれぞれコンタクトが取れる安倍晋三首相が、米中の緩衝役となって「第三の道」を探る外交的手腕を発揮する場面ではないかと指摘したい。甘利明・自民党税調会長は、最先端分野を除く半導体などでの日中連携が可能になると発言している。

8日の米国務省の対応は、米商務省が7日に発表した杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)(002415.SZ)などを事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」に追加することに続く動き。理由は中国政府によるウイグル族などへの弾圧に関与していることで、米国が「人権尊重」を対中外交カードとして切ってきたことが明白になった。

また、トランプ米大統領は7日、抗議行動が激化している香港問題に関し「何か悪いことが起きれば、交渉にとって非常に悪いことになると思う。政治的に非常に厳しいことになると思う」と述べ、情勢次第では通商協議の阻害要因となる恐れがあるとの見方を示した。

ロイターを含めた複数のメディアは、米株式市場での中国企業の上場を廃止を検討していると報道。ブルームバーグは米公務員年金基金による中国市場への投資制限の可能性を探っていると伝えている。

米当局者は現在、検討していないとコメントしたが、マーケットでは、米国が対中政策に関し、通商・貿易問題だけでなく、幅広い分野に「戦線」を拡大し、戦略的な対立を辞さない姿勢に傾いていると受け止められている。

8日にダウ.DJIが300ドルを超す下落となったのも、10日から始まる米中の閣僚級による通商交渉が決着しないとみただけでなく、米中の分断が深刻化すれば、米中だけでなく、グローバルな経済に深刻な影響を及ぼすのではないか、という懸念が出たからだと考える。

<注目される対ファーウェイ禁輸措置の行方>

中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)HWT.ULの第5世代移動通信システム(5G)技術が典型的なケースだが、コストを最優先にした「最適」なサプライチェーンの構築が、米中分断による「高い壁」で遮られ、非効率なネットワークの形成を強いられる可能性が出てくる。

その意味で、米商務省が8月に公表したファーウェイに対する米製品の輸出禁止措置の猶予期間を90日延期するとした対応が、当面の焦点になるのではないか。

90日延期して、輸出禁止猶予の期限は11月19日となった。この期限が再延長されず、禁輸措置が発動された場合、米中分断の現実が、その一端をあらわにすることになる。今月10、11日の閣僚協議の結果にもよるが、その時点で米中関係が急速に融和的環境になっている可能性は低いと予想する。

<米中対立と日本の苦悩>

米中対立が激しさを増せば、貿易相手国の1番目と2番目の対立となる日本の影響は、市場が想定している以上に大きくなるリスクがある。

特に懸念されるのは、香港問題に中国が本格介入し、米国が対中投資を大幅に制限するようになった場合、日本にも同調を求めるケースだ。日本政府は、対応に苦慮すると予想される。

そのようなリスクシナリオに陥る前に、日本が取るべき政策のスタンスについて、どうやら政府・与党内で議論が水面下に進んでいるようだ。

自民党の甘利税調会長は9月25日のロイターとの単独インタビューで、最先端技術分野とそうでない分野を切り分け、最先端分野以外では、中国との連携が可能であるとの見解を示した。

甘利氏は、日本としても「米国に懸念を与えないという意味で、中国とはハイテクでない分野での事業協力が中心になる」と表明。最先端分野以外の半導体の請負生産や、中国との環境対応車での技術協力などが検討対象になると述べた。

こうした腹案をもとに、安倍首相の外交手腕が今こそ、問われるのではないか。完全な分断ではなく、「壁」を迂回した一定のルートを確保するルール作りなどで日本が主導権を発揮すれば、対中ビジネスのウエートが高まるなか、米国の軍事的プレゼンスの恩恵も受けたい東南アジア諸国連合(ASEAN)のいくつかの国々も、賛同することになるだろう。

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