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焦点:米の中国軍関連企業への投資禁止、先送りで投資家は困惑

[ニューヨーク/ロンドン 1日 ロイター] - バイデン米政権は、トランプ前大統領が政権末期に打ち出した中国軍関連企業への投資禁止命令の実行を先送りしている。このため米国の投資家は新たな行動に出るに出られず、中途半端な状態に置かれたまま、米国籍ないし米国拠点でない投資家ならば得られる収益機会をただ、指をくわえて見守っているしかない。

 2月1日、 バイデン米政権は、トランプ前大統領が政権末期に打ち出した中国軍関連企業への投資禁止命令の実行を先送りしている。写真は米中の国旗。北京で1月撮影(2021年 ロイター/Tingshu Wang)

トランプ氏が命令を出したのは昨年11月。その後に幾たびか修正や説明があり、いったいどの証券が影響を受けるのか頭を悩ませた米国の投資家は、禁止対象になると疑われた中国企業の株式や債券に売りを浴びせた。

また、これらの銘柄はじきに米国の証券取引所から上場を廃止され、主要国際指数から除外された。債券に関して投資家は、ブラックリストに掲載された企業と名前が似ている発行体の社債まで処分するという苦労も味わった。

こうした中でバイデン政権は1月27日、中国人民解放軍の企業に近い名前であるものの、そのものの名前ではない銘柄については、投資禁止の発効を同28日から5月27日に延期すると表明した。

投資家としては一息つけるが、根本的な問題の解決にはなっていない。アバディーン・スタンダード・インベストメンツのアジア太平洋社債責任者、ポール・ルカシェフスキ氏は、この問題で「新政権がどう対応するか明確になるまで、われわれは様子見モードに入った」と話す。

JPモルガンによると、米国拠点の投資家と米国市民に適用される投資禁止対象の証券は、総額約600億ドル相当に上る。

ルカシェフスキ氏は「中国債券市場は世界屈指の規模になっている。中国の社債スプレッドは、米国に比べて投資家に魅力がある。また、投資家は資金を振り向ける市場や地域を広げることで、分散化の恩恵を受けられる」と指摘。その点で米国の投資家は目下、「厳しい立場」に置かれていると語った。

中国化工集団(ケムチャイナ)、あるいは中国海洋石油(CNOOC)など多くの中国企業の社債は、先進国債券が軒並み超低金利にとどまる局面で、相対的に高い利回りを提供しているのは事実だ。そして、これらの一部は、トランプ氏が最初に命令を出した時点に比べ、価格や売買気配値スプレッドがある程度持ち直している。

足元で、ブラックリスト掲載企業の子会社などが発行した社債(2029─30年償還)の平均利回りは3.1%と、10年米国債利回りより200ベーシスポイント(bp)強も高い。

JPモルガンは、動きが取れる投資家にとって、こうした中国社債の持ち高を増やしたいタイミングかもしれないとの見方を示した。ファンダメンタルズ面の悪影響については、最小限ないし管理可能な程度にとどまると予想した。

現在ブラックリストにある44社のうち少なくとも10社、華為技術(ファーウェイ)や中芯国際集成電路製造(SMIC)、中国中化集団(シノケム)、中国航空工業集団(AICC)などは、子会社がドル建て債を発行している。

<制裁の矛先>

バイデン政権はまだ、中国軍関連企業の投資をどう扱うか基本方針を示していない。だが、トランプ氏の姿勢を抜本的に変えると予想する向きはほとんどいない。それでも一部の米国投資家は、せめて打撃を投資家に与えるのではなく、当該企業に及ぼす制裁を実行してほしいと切望している。

アライアンスバーンスタインの新興国市場債券責任者、シャマリア・カーン氏は「投資家の債券保有能力に制裁を科しても、その債券を発行した企業は無傷で、むしろ購入した投資家が痛手を受けてしまう。ある企業の今後の債券発行を制裁対象にすれば、投資家よりもその企業に効く。そこに微妙な差がある」と説明した。

ところが、実際に行われている投資制限は、対象企業に大きな影響を及ぼしている気配は感じられない。アナリストの分析では、対象企業のほとんどは、資金調達におけるドル建て債の比率が非常に小さいからだ。

さらに中国社債は1兆4000億ドル規模のアジア社債市場のほぼ半分のウエートを占めており、米高利回り債市場に匹敵する。そうした中国社債に対する需要は、全く衰えていないように見える。AICC子会社のAVICインターナショナル・ホールディングが最近、既発債に近いプライシングで発行した2億ドルの社債には、7億ドルを超える応募があった。

ウィズダムツリー・アセット・マネジメントのグローバル調査責任者、ジェレミー・シュワルツ氏は「国際投資家たちは、中国資産をより手に入れたがっている。一歩引いて大きな構図として見ると、中国人民元の保有を増やし、中国債券をポートフォリオに加えたいという世界的な意欲は大きい」と述べた。

(Rodrigo Campos記者、Karin Strohecker記者)

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